1月1日 9時3分

 気が付くと、私は布団の中だった。

 目の前には、見覚えのある天井。


 ここは私が借りている悠久の寝室だ。

 ゆっくり起き上がると、あっきーが横でスマホを触っている。


「起きたか」

 私をチラリと見ると、すぐにスマホの画面に目を落とす。


 よく見たら、それは私のスマホだ。


「ちょ、あっきー!」

 慌てて、あっきーの手からスマホを奪う。

 画面を確認すると、地図アプリが表示されていた。

 よく使っている地図アプリで、この近くが表示されている。

 画面上には見慣れない神社のマークが表示されていた。


「勘違いするな。運動会の参加者の居場所を見ていただけだ」

 眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言う。

「どこかの誰かが面倒な依頼を引き受けたから」

 スッと立ち上がると、足早に寝室から出ていった。

 襖を閉める音が、チクリと胸を刺す。


「起きましたか、進行役さん!」

 元気の良い声がスマホから聞こえる。

「あの失礼な男には渋々説明しましたが、この神社のマーク部分に参加者はいます。皆様移動されることもありますが、大きく移動されることはありません」

 声の主の言い方に棘がある。私が寝ている間に何かあったらしい。

 地図を確認すると、この近くには、2つ神社マークが表示されている。

「あと4つは?」

「離れてますから」

 嫌な予感がした。


 表示される範囲を広げる。2つ隣の県に神社マークが1つ、新幹線で行く必要がある距離に3つ。

 3つのうちの1つなんて、海を挟んでいる。


「無理だってこれは」

 始まってもないのに泣きたくなった。

「大丈夫です! 移動手段がありますから!」

 そう言うと、目の前に鏡が6つ現れた。

 神事に使われるような6つの鏡は、鈍い光を放ち、宙に浮いている。

「これに触れれば、一瞬で移動できますよ」

「なんでもありだ……」

 私は布団から出て、服を着替える。

 流石に室内用のジャージは失礼だと思う。


 着替え終わると、私は浮いている鏡の1つに触れた。

「では進行役さん。お仕事開始です!」

 目の前が真っ黒に染まった。

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