1月1日 8時45分

「では進行役さん、よろしくお願い致します!」

「え、いや――」

「進行役さんには参加者6名に集まるよう声をかけてもらい、3日に運動会を開き進行、そして動画撮影をお願いします」

 結構コキ使われる予定が出来ている。

 段々コイツに腹が立ってきた。


「そう言われても」

「進行役さん、3日までに開催しないと世界が滅亡します!」

「人間側の都合は加味して頂けないんですか」

 ずっとお雑煮を食べていたあっきーが、口を開いた。

 箸を置き、スマホを睨みつけながら放つ声には、怒りが含まれていた。


「今から参加者を訪ね、動画撮影の準備をし、運動会を開催する。私はこの建物に住んでいますが、近辺で運動会が開催されるような話は聞いていません。このような状態で明後日開催するのですか?」

 あっきーは早口で捲し立てる。

「神から作られた私たちでさえ、大きな催しをする際は手はずを整えます。神にそれができない訳ないですよね?」


「場所も出場者も決まっています。私から集合の連絡もしましたが、集まって下さらないのです。ですので、進行役さんにお願いを――」

「あなたが言って聞かないのに、数日前に声を掛けられた橋ヶ谷はしがやさんが言って、参加者は納得されるのですか?」

「あ、あっきー」

 段々姿も見えない声の主が可哀想になってきた。

「声掛けるくらいなら……」

「アキちゃん」

 険しい顔をしたまま、あっきーは私に耳打ちする。


「安請け合いするな」

 確かに一理ある。

「で、では、報酬を用意致します!」

 あっきーの声が聞こえていたのだろうか、その声には焦りがみえる。

「報酬?」

 あっきーの顔は険しいままだ。

「そうですね……」

 声の主はしばらく唸った。


「そうだ。進行役さんの好きな人をこの世界に連れてきます」


 急に、私の左手が誰かに握られる。

 左手の方を向くと、短い赤髪の男性が跪いていた。

 黒いトレンチコートを羽織った長身の男性は、当然のように私の左手に口付けをした。

 顔が熱くなる。


 不敵に笑う彼は、間違いなく私の推しだ。


「やります!」

 目の前が真っ白になりながらも、自分が叫んだこと、あっきーが私の推しに殴りかかろうとしたことだけは分かった。

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