1月1日 8時26分

「皆様、新年おめでとうございます。今年もね、このゴリラと一緒に頑張って行くんですけども」

「ウホ」

「ほんとにゴリラになってどうすんだよ!」


 私はコタツに入りながらお雑煮を食べていた。

 テレビでは、お笑い芸人が漫才やショートコントを披露しており、それを見て私は大笑いしていた。


「これ面白いか?」

 同じようにコタツに入り、お雑煮を食べるあっきー。普段以上に冷めた目でテレビと私を見てくる。

 先程までお雑煮を作ってくれていたので、エプロンを付けたままだ。主夫って感じでとても良い。


「新年を満喫してるんだから水を差すなぁ」

「元旦から飲みすぎでは」

 あっきーはこたつに置いてある銚子を持ち上げる。

「そんなに減ってないな」

 不思議そうに首を傾げるあっきーに、コンビニのビニール袋を突きつける。

「これがあるからね!」

「ビニール袋から出して見せてくれ」

「ごめんごめん」


 目を凝らしてビニール袋を見るあっきー。

「酒入ったチョコか」

「そうでーす」

「酒弱いんだから控えろ」

 ため息をつくと箸を置き、コタツから出ていく。

 私はテレビに視線を戻した。


 その瞬間、スマホから着信音が鳴る。

 画面を覗き込むが、何も連絡が来ていない。


 私、そんなに酔った?


「進行役さん!」

 スマホから、急に男性の声が聞こえた。

 それは私が推しているアニメキャラの「ルヴァ・グラズ」の声に似ているけど、そんな言葉を話す場面なんてない。


「聞こえますか、進行役さん!」

 アニメ4話の戦闘シーン並に切羽詰まった、ルヴァくんに似た声。

「新年からルヴァくんのイケボを聞けるのは嬉しいけどさあ。スマホ壊れるのは嫌だなあ」

 苦笑しながら、スマホの電源を切る。


「話を聞いてください!」

 真っ黒の画面のまま、ルヴァくんの声は止まらなかった。

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