藤井聡太vs大谷翔平vsイクイノックス

金澤流都

大穴(スポーツ王)の大勝利

「今年も始まりました、『明らかに異世界人100メートル走』! 今年の決勝進出者は藤井聡太竜王・名人、ドジャース大谷翔平選手、イクイノックスの3名です! 実況はわたくし花野、解説は地の文さんです! 地の文さん、この三者どう見ますか?」


 いやイクイノックスの優勝は確実でしょうよ……と思ったのだが、藤井聡太竜王・名人も駆けっこは無類の速さだと聞いているし、大谷翔平の足が速いのも有名だ。100メートルという距離では案外イクイノックスがトップスピードに達する前に勝負がつくかもしれない。しかしイクイノックスは脚質自在だというから、逃げ切って大勝利を収める可能性がある。


「三者スタートラインに並びました。藤井聡太竜王・名人はなんと着物に袴姿、大谷翔平選手はドジャースのユニフォーム。あれ? イクイノックスにはだれも乗っていませんね」


 そりゃあすごいジョッキーが乗ったら結果が変わりかねないので。


「確かにそれもその通りです。となるとイクイノックスの『走る』という本能が発揮されるかが最大の争点になりそうですか?」


 その通りだと思う。あとは藤井聡太竜王・名人がどれくらい速度ある走りができるか……というところか。またわりと安定していそうなのが大谷翔平選手である。


「スタートのピストル……の前にファンファーレです。まるっきし競馬じゃないですか。イクイノックス、鼻息を荒くしています」


 ウマだからね……。

 ファンファーレが終わり、スタートのピストルが鳴らされた。


「あーっと! イクイノックスが暴れています! 脇から羽生善治九段が現れてイクイノックスにニンジンを食べさせてなだめている! イクイノックス、少々遅れて無事に走り出しました! しかし大谷翔平選手を先頭に、人間が逃げ切りそうだ!」


 羽生善治九段はウサギを飼っているそうなので、同じく草食動物であるウマの扱いも……手慣れているわけがない。なんで羽生先生が突然出てくるのよ。


「おーっと! 今度はラーズ・ヌートバー選手が現れて大谷翔平を止めにかかる! イクイノックスはのどかに道端の草を食べ始めた! 一方の藤井聡太竜王・名人は、コース上に落ちていた詰将棋を考え始めた! 地の文さん、なんというか障害物競争のていをなし始めましたが」


 そのようである。なんだこのレース……。


「三者とも足止めを食らっているその横を、とんねるず石橋貴明がぐんぐん追い抜いていく! さすが初の日本人メジャーリーガー、タカ・タナカ!」


 いやそれ映画のやつ! フィクション! っていうかこれ、お正月恒例の「とんねるずのスポーツ王は俺だ!」なの!?


「とんねるず石橋貴明、無事ゴール! いやあ白熱した展開でしたね地の文さん!」


 なんだよこれ!!!!


「まさかの大穴の勝利に、ハズレ馬券が紙吹雪となっております!」


 しかも賭けてたんかい!!!!

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藤井聡太vs大谷翔平vsイクイノックス 金澤流都 @kanezya

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