第4話 旅立ちの時

思いっきり振り抜いた拳はバスラの顔面にクリーンヒットしバスラは数十m先まで吹っ飛ばされた。バスラは白目を剥いたまま立ち上がることができない。



「ハァ・・・・ハァ・・・ハァ」



住民たちは目が点になっていた。それもそのはず。バスラを1人の少年がたったの一発でダウンさせたのだ。



「ハァ・・・ハァ・・・コレがライオンの力・・・?」



今まで人を殴った事なんかはないが明らかにパワーが数段上がってるのは分かった。



「レオ、ありがとう。色々聞きたいことはあるがまずはマルシェを助けよう」



戻ってきたヤンマはレオにお礼を言いすぐにマルシェの元に向かった。



「マルシェさん!大丈夫ですか?!マルシェさん!」


「おい!隣村のショウを呼んでこい!早く!」



ヤンマは周りの人に隣村の医者ショウを呼んでくるよう叫んだ。



「い・・いの・・・・・ヤン・・・・マ・・・」



マルシェが今にも消えそうな声でヤンマに答えた。



「何がいいんだ!早く手当しないと」



「も・・う・・たすか・・・らない・・・じ・・ぶん・で・・もわかる・・・わ」



「何言ってるだ!とにかくこれ以上喋るな!少しでも体力を残しておけ」


「そうですよ!マルシェさん。とにかく医者を待ちましょう」



「レオ・・・くん・・・も・あり・・がと・う・・でも・・・ほんと・・・に・・いい・・・の」


「マルシェさん!弱気になっちゃダメだ」



レオは必死にマルシェの意識がなくならないよう声をかけ続ける。



「そ・・んなこ・・・とより・・ギー・・ラ・・・・を・・こっ・・・ちに」



マルシェはギーラを近くに呼ぶようレオ達に頼んだ。



「マルシェ・・・・」



ヤンマは瀕死のマルシェを見て悟りギーラの元に向かった。



「ギーラ。お母さんのところに行けるか?」



優しく問いかけるヤンマにギーラも小さく頷く。その顔は涙でグチャグチャになっていた。ギーラはマルシェの元に向かった。



「ギ・・ーラ・・こっ・・・ちに・・おい・・で」



マルシェは近くに来たギーラを最後の力を振り絞って抱きしめた。



「いい・・か・い・・ギー・・ラは・・わた・・し・・の・じ・・・まんの・・むす・・こ・よ・・だか・・ら・・つよく・・・いきて・・」



そう言うとマルシェはギーラの顔に流れてる涙を手で拭き取った。



「なか・・ないの・・・わかっ・・・た?」


「うぅん」



ギーラは泣くのを必死に我慢しマルシェを強く抱きしめた。



「ヤン・・・マ・・・・・この・・・・こ・・のこと・・・お・・ねが・・いね」


「あぁ・・・・」


マルシェは最後の願いをヤンマに託した。



「ギーラ・・・・・・・・・・・あい・・してる」



その言葉を最後にマルシェは息を引き取った。



「マルシェさん・・・・」



レオはただ呆然と立ち尽くしていた。



「皆の者、本当にすまない。ワシのせいじゃ」



村長が頭を深く下げ謝ってくる。



「誰も村長のせいだなんて思っていませんよ。悪いのは100%アイツらだ」



ヤンマは謝ってくる村長をなだめ遠くの方で倒れているバスラの方を見た。いまだにバスラは動かず取り巻き達がバスラを担いで逃げようとしているところだった。



「アイツら・・許さねぇ!」



ヤンマはそう言うとバスラ達の方に向かおうとした。しかし村長に止められてしまった。



「ヤンマよ。今はやめておこう。これからのことをみんなと話さないといけない」


「でも村長!今やらないとあいつらまt」


「ワシの話を聞いてくれ。こう言うのには訳がある」



村長は食い気味にヤンマの言葉をかき消した。



「分かりました・・・」


「皆の者、本当にすまない。ギーラも本当にすまない・・・」


「そんちょうはわるくない。わるいのはヤンマのいうようにあいつらだ」



ギーラの顔にはまだ涙が残っていたが力強く村長に言った。



「マルシェの墓を作ろう。話はその後じゃ」



村長は皆にそう伝え住民たちはマルシェの墓を作り始めた。



「悪いがレオも手伝ってくれるかのう?それとその後の話にも是非参加してもらいたいのじゃが・・・」


「もちろんです。手伝います」



村長にそう言われレオも墓作りを手伝った。



そして数時間後マルシェの墓は出来上がりマルシェは埋葬された。デカく立派なお墓だった。



「もう夜も遅いがもう少しワシに付き合ってくれ。集会所に来てくれ」



村長は住民たちを集会所に集めた。



「今から話すのはとても大事なことじゃ。しっかりと聞いてくれ」



広い集会所に村長の声だけが響く。



「ここ数ヶ月、ワシは伝説の筆を探しに所々村を外していたじゃろ?じゃがそれは伝説の筆を探しに行ってただけじゃない。もう一つ目的があったのじゃ」


「目的?」



ヤンマが聞き返す。



「そうじゃ。実はの、このパーラ地区にある5つの村の村長と会談もしておったのじゃ」


「何のために?」



再びヤンマが聞く。



「その内容は、5つの村で協力してパーラ達を倒そうと言う内容じゃ。5つの村の全員が協力したら憎いパーラ達を倒せると思ったのじゃ」



村長の急な発言にみんな驚いている。



「それはいいアイデアですね。確かに我々だけだと厳しいですけど残りの4つの村と協力したら倒せるかも」



ヤンマは頷きながら村長に言った。続けてヤンマが話す。



「決行日はいつですか?今パーラの陣営はバスラがいない。やるなら今では?」



「そうしたいのじゃが1つ難題がある。このヘラク村含む4つの村はこの作戦に賛成じゃが1つ反対してる村がある」



村長は険しい顔で言う。



「だったら4つの村でやりましょう。早くしないと。今しかないですよ」



ヤンマはいち早く決行したいらしい。しかし村長は首を縦に振らない。



「それは無理じゃ。その村が参加してくれないと勝てる見込みがないのじゃ」



「まさか・・・・」



みんな顔を見合わせる。何かに勘づいてるようだ。レオ1人を除いては・・・



「そのまさかじゃ。反対してるのはスレス村じゃ」



「そんな・・・」



ヤンマは肩を落とした。



「あのー・・スレス村が参加しないのがそんなにダメなんですか?」



訳のわからないレオはたまらず村長に尋ねた。



「ダメなのじゃ。スレス村はこのパーラ地区の村の中でも最強の村なのじゃ。スレス村が参加してくれないと話にならないのじゃ」


「レオ。自分で言うのも何だが俺はこの村ナンバー1の強さだ。だが仮に俺がスレス村に行ったら5本の指にも入らない。それくらいあそこの村は群を抜いてる」



ヤンマはレオにスレス村の強さを教えた。



「ヤンマさんでもトップ5に入らないって・・」


「誰が反対してるんですか?ライナー村長ですか?」


「そうじゃ。ワシ含め他の村長もライナーを説得したのじゃが首を縦には振らなかった。理由を聞いても答えてくれずじゃ」


「なにかいい方法はないんですかね」


「そこで色々ワシも考えたのじゃが・・・・レオよ!スレス村に行ってライナーを説得してくれ」



「俺ですか!?」



予想だにしない村長の言葉に思わず大きな声が出てしまった。



「いやいや、村長達で説得できなかったのに俺にできるはずがないですよ」


「それがそうとも言えないかもしれない」


「ん?どう言うことですか?」


「ライナーも年上のジィさん達に何度も言われてうんざりしてるだろう。じゃがお前が言ったらもう少し話を聞いてくれるかもしれん」


「え?ちょっと待ってください。そのーライナー村長って何歳なんですか?」


「16じゃ」


「えーーーーー!同い年・・」


「そうじゃろ?ピッタリじゃ。頼むレオ。ライナーと話をしに行ってくれ」


「いや、話って言ってもまだ全然ココの事分かってないですし」


「それがまたいいかも知れん。とにかくスレス村はここから北に20kmほどの所にある。明日の朝出れば夜には着くだろう」


「いや、まだ行くって・・・」


「無理を言ってるのは分かってるがこの通りじゃ。村を救ってくれ。レオよ」



村長は深々と数十秒頭を下げ続けた。



「わ、分かりましたよ。ただ失敗しても文句は言わないでくださいね」


「おおう、ありがとうレオよ。そしたら早速明日の準備じゃな」



村長はそう言うと住民達を解散させた。



「ギーラよ。今日からヤンマの部屋で寝なさい」



村長はギーラの頭をポンと撫で優しくギーラに言った。ギーラも頷いた。



「よし、ギーラ。行こうか」



ヤンマはギーラの手を握り、集会所を出ようとしたところで振り返りレオに聞いた。



「そうだレオ、お前の能力って・・・」



「ライオンでした」



それを聞きヤンマは少し笑った。



「そうか・・・これも運命かもな」



ヤンマはそう言い残しギーラと一緒に部屋を出た。



「どういう事ですか?今の」



集会所に残されたのは村長とレオだけ。レオはヤンマの言葉が気になり村長に尋ねた。



「またそれは今度話そう。今日はもう遅い。明日に備えて早く寝るのじゃ。頼むぞレオ」



レオの背中を叩き村長も部屋を後にした。レオは気になったが明日に備え早く寝ることにした。



翌朝・・・・・・・・



「よし。忘れ物はないか?」


「はい。一通り持って行くものはこのリュックに入ってます」


「地図も渡したよな?」


「はい。もらいました」


「じゃあ、頼むぞ。どうかライナーを説得してくれ」


「期待はしないでください・・」


レオは苦笑いしながら村長にいいリュックをからい外に出た。

外にはヤンマとギーラが見送りのため外に出ていた。


「レオ。何かあったらこの笛を使え」



ヤンマはそう言うとレオに笛を投げた。



「特殊な笛だ。パーラ地区内だったらどこにいても聞こえる。その笛の音が聞こえたら俺が助けに行ってやる」


「ありがとうございます」


「レオくん、がんばって」


「ありがとう、ギーラ」


ギーラは手を前に突き出した。レオはそれに答えるように手を突き出しタッチをした。



(本当に強い子だ。ギーラは)



「じゃあ行ってきます」



レオは頭を軽く下げそう言ってヘラク村を後にした。


           

          続く






















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俺が王になるまでの物語 @R-A109

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