第3話 能力解禁

「よーし!これで全員集まったか?」



大男はヘラク村の住民を列で並ばせている。



「いいか!今からお前らの中の1人を殺す。このバカジィジィのせいでな」



住民たちはザワザワしはじめる。



「このバカは俺様に食料がないと嘘をついた。だがどうだ、あそこの部屋に沢山料理があるじゃないか。コイツは俺様を騙そうとしたんだ」



大男はそういうとレオのある部屋を指差す。



「じゃから、あれで本当に最後だったのじゃ」


「お前は黙ってろ」



大男は村長を黙らせる。



「恨むならこいつを恨め。まぁ今回は1人殺したら許してやる」



住民達は分かっていた。こうなったら逃れようがない事に。コイツらは言ったことは必ず遂行する奴らだと。



「どうかこの子らは殺さないでくれ。責任なら私が取る。どうしてもと言うのなら私を殺ってくれ」


「お前を殺したらつまらないだろ」


「バスラ。俺を殺れ。俺はいつでも死ぬ準備はできている」



そう言ったのは列の先頭にいるヤンマだ。



「いい度胸してるじゃないか。流石この村のナンバー1ヤンマだな。だがな気安く俺様の名前を呼ぶな。名が汚れる」


「そんな事はどうだっていい。とにかく他の連中には手を出すな。お前も俺の首を持って帰ったらパーラに少しは褒めてもらえるんじゃないのか?」


「確かにこの村最強のお前を殺したとなれば俺の株も上がるかもな。でも今じゃない。とにかく、そこのジィジィもヤンマも今日は殺さない。さて誰にしようかなー?」



バスラはそういうとヤンマの横をすり抜け住民達を物色しはじめた。



「さてさてー、誰がいいかなー」



住民たちはただ黙ってバスラが自分の所を過ぎるのを待つしかなかった。



「よし!お前だ!こっちに来い」



そういうとバスラは1人の住民の手を掴み前に持っていった。



「お前に決まりだ!残念だったな。このバカのせいでお前の命は今日ここで終わる」



バスラに選ばれたのはマルシェだった。マルシェはただ何も言わず下を向いている。



「お願いじゃ!マルシェは辞めてくれ。そいつにはまだ幼い子供がいるんじゃ。父親もいない。ギーラにはもうマルシェしかおらんのじゃ。頼む。辞めてくれ」



村長は必死にバスラに訴えた。



「なんだ?だったらお前が他に選ぶか?この女の代わりに殺される奴を」


「じゃからワシを殺してくれ!」


「何度も言わせるな!テメェとヤンマは殺さないと言ってるだろ」



バスラを怒鳴るとマルシェの頬を掴み顔を無理やりあげさせた。



「ほぉーよく見るといい女じゃねぇか」


「バスラさん!殺す前にヤッちゃいましょうよ!こんな女なかなか拝める機会ないですよ!」



取り巻きがバスラに提案する。



「確かに、こんな上物ただで殺すのはもったいないな。よし!お前俺と一緒に向こうの部屋に来い」



バスラはマルシェにそういうとマルシェの腕を掴み強引に部屋に向かって歩いていった。



「ちょっ・・と・・・ やめてください!離して!」



マルシェは腕をふりほどこうとするもバスラの力には敵わない。どんどんと部屋に近づいていく。



「おーい!お前ら!俺の後好きにしていいからな!殺すのはその後だ。楽しむ準備しとけよ!」



バスラは取り巻き連中にそう言いながらマルシェの腕を変わらず引っ張り部屋に向かっていく。




一方レオは・・・・・・




(何を言ってるか全然分からない。ん?なんでマルシェさんが前に連れてこられたんだ?まさかマルシェさんを殺すって事なのか?)



最初同様距離がある為会話の内容までは聞き取れないでいた。



(なんだ?大男とマルシェさんがこっちに向かってくるぞ)



そう。バスラとマルシェが向かってる部屋はレオのいる部屋なのだ。



(どうする、隠れた方がいいか?でもなんかヤバそうだし。でも見つかったほうがやばいか?)



レオは迷っていた。しかし迷ってる暇も長くはない。どんどんと足早に部屋に2人が向かってくる。



(こうするしかないか)



レオは覚悟を決めた。



「よし!今から俺とお楽しみタイムだ。しっかりと満足させてやるからなー」



バスラはマルシェにそういうとレオの居る部屋を開けた。



「なんだ!?お前は!」



部屋を開けるとそこには堂々と立ってるレオがいた。レオは隠れず正々堂々と向き合うことに決めたのだ。



「マルシェさんに何をするんですか?」



レオはバスラに聞いた。



「俺がコイツと何をやろうがお前に関係ないだろ」


「関係ある。この村の人たちは名前も知らない僕を温かく迎え入れてくれた。この村の人たちに何かしようって言うのなら俺は許さない」



レオは自分の言った言葉に驚いた。嘘偽りのない本音が何の躊躇もなく言葉として出たからだ。



「随分と生意気な口を聞くガキだな」



バスラは指をポキポキならしながらレオに言う。



「とにかくマルシェさんを離せ」


「そうか。分かったよ」



バスラはそういうとマルシェを掴んでる手を離した。



「おい女。お前との楽しみは後だ」



バスラはそうマルシェに言うといきなりレオのお腹にパンチをいれた。



「うぅ・・・」



不意打ちのパンチに思わず声が漏れる。

 


「ガキ。大人の怖さを思い知らせてやる」



バスラがレオの胸ぐらを掴む。レオは宙に浮いた。物凄い力だ。レオは胸ぐらを掴まれたまま外に放り投げられた。



「おい!ジィジィ!来客者ってのはこの生意気なガキのことか?」



バスラは村長に聞いた。



「そうじゃ!その子にも手を出すな」



村長は数十メートル離れてるバスラに聞こえるよう答えた。



「随分と村長に気に入られてるんだな」



地面に横になってるレオに不気味な笑みを浮かべながらバスラは聞いてくる。続け様にバスラは話した。



「いいか、俺のアニマルアビリティは『カマキリ』だ」



そう言うとバスラは手先を鋭い鎌に変身させた。初めてこの世界の能力を目の当たりにして。レオは呆気に取られた。



「この鎌で今からお前の首をスパッと落としてやるからな」



バスラはそう言うと鎌をレオの首に当てた。生温かい感触がレオの首に当たる。レオは冷や汗が止まらなかった。



「ビビって声も出ないか」



図星だった。



「せっかくだからみんなの前で殺そう」



レオはバスラに引きずられるような形で住民たちの前に連れてこられた。



「いいか!お前ら!コレからコイツをここで殺す。俺に逆らったらどうなるかしっかりと目に焼き付けておけ」



バスラはそう言うとレオの首目掛けて鎌を振り切ろうとした。



(あぁ・・・ここでまた死ぬのか・・)



レオがそう思ったその時バスラの鎌が止まった。レオは驚いて鎌を見てみると蜘蛛糸のようなものが鎌に絡まっておりバスラは振り切れないでいた。レオはその出先を見た。すると驚きの人物からそれは出ていた。



「ギーラ・・・・」



それはマルシェの子供のギーラから出ていたのだ。



「レオくんをきずつけるな」


「おいガキ。なんの真似だ?さっさとこの糸を外せ」



バスラは怒りの表情でギーラを睨みつける。



「ぜったいにはずさない!」



ギーラは震える声でそう言った。



「その小ささでもう能力を使える事は褒めてやろう。だが俺に逆らった罪は重い。おい!シード!そこのガキをなんとかしろ」



バスラは取り巻き連中の1人に指示を出した。



「は、はい!」



シードと呼ばれる男は言われるがままギーラの方に向かって取り押さえようとした。しかしヤンマがその行手を阻む。



「おいおい、今この村の子供が初めて能力を使えるようになったんだ。しかも7歳だぞ。コレは異例中の異例だ。未来ある若者の為に温かく見守ってくれよ」



ヤンマは笑いながらそう言うと男の服を掴み宙を飛んだ。背中には羽根のようなものが見える



「コレが噂のトンボの能力・・・」


「よく知ってんじゃねーか。噂にまでなってるとは嬉しいね。コレが俺のアニマルアビリティ『トンボ』さ」



ヤンマはそう言うと男を離れたところに連れていった



「チッ・・役たたずめ。おい他の連中!ガキを抑え・・ん・・?」



バスラの声が止まった。レオは声が止まった原因がすぐ分かった。糸の力が弱まってきてるのだ。



「まぁ無理もないか。まだその歳だ。長時間は持たないか」



バスラの言う通りギーラは自分の能力を初めて使えた分まだ上手く扱えていなかった。バスラは弱まってきた糸を無理やり外した。



「この村のガキ共は俺を怒らせるのが得意なようだ」



バスラはそう言いながらレオに振りかざしてる鎌を一旦下げギーラの方に向かった。



「よそんじゃ。バスラ」



「どけ!」



止めに入る村長や住民たちを押し除けギーラの前にバスラは着いた。ギーラは小刻みに震えている。



「その勇気は評価しよう。だがな世の中には反抗したらダメな大人もいるんだぞ」



バスラは両手を振り上げギーラの体にに向かって鎌を振り落とした。



グサッ・・・・・・・・・・・



「うっっ・・・・・・・」



鎌は体を貫通した。しかしそれはギーラではなかった。



「マルシェさん!!!!」



レオは生まれて1番の大きな声を出した。ギーラを守ろうとしたマルシェの体に鎌が貫通した。



「ギー・・・ラ・・はや・・く・にげて・・」



ギーラはその場で立ち尽くしている。



「チッ。なんだよ。ヤりそびれたじゃねぇか」



バスラはそう言いながら血の付いた鎌を拭いている。レオはその一部始終を見て言葉にできない感情になった。



「うぉーーーーーーー!」



レオは雄叫びを上げながら本能のままバスラのところに行き振り返ったバスラの顔面に渾身の右ストレートを浴びせた。



          続く









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