第2話 突然の来訪者

この世界では生き物の力が使えるようになるという村長の話を聞き俺は興味が湧きさらに村長に尋ねた。


「能力っていうのはどうやって使うんですか?」


「それは、ワシにもわからない。いや、わからないと言ったら誤解を招くかもしれんの。この世界には同じ生き物の能力っていうのは同時には存在しないのじゃ。カブトムシの能力を持つワシがライオンの能力をどうやったら使えるかとかは分からないのじゃ」


「じゃあ村長は最初どうやって能力を使えたんですか?」


「なんとなくじゃ。皆最初はふとした時に使えるようになるものじゃ。そこから自分なりに修行などをして初めて意図した時に使えるようなるのじゃ。能力を自在に扱えるようになるのに1年掛かる者もいれば1ヶ月で自在に扱えるようになる者もおる。全てはセンスと努力次第じゃ」


「センスと努力… 村長は大体どれくらいで自分の能力を自在に扱えるようになったのですか?」


「ワシは大体半年位かのー。ヤンマがおるじゃろ?あやつは自分の能力を2ヶ月で習得していた。この村では奴が実力も含めて1番じゃ」


「ヤンマさんでも2ヶ月なんですね…」


「まぁそう焦る必要はない。自分のペースで習得していけば良い」



心配してるのがバレたのか村長は優しく声をかけてくれた。



「そういえば、ヤンマさんがさっき村長に言ってた収穫ってなんのことですか?」



ヤンマの話が出てきて俺は思い出した。



「あー、アレか。昔からこのパーラ地区には古くから伝わる伝説の筆っていうのがあると言われてるのじゃ」


「筆?」


「そうじゃ」


「そういう伝説の奴って剣とか魔法の杖とかじゃ無いですか?普通」


「剣も杖もあるぞ。ただこの地区に関しては昔から筆だと言われてる」


「なにするんですか?その筆で。持ってても攻撃とか強くならなそうだし」


「書物によるとその筆を使って右肩に生き物の絵を描くとその生き物の能力も使えるようになるらしい」


「え?そんなのありですか?」



あまりのチート級すぎる内容に驚きを隠せない。



「だからこそ伝説なのじゃ。故にその伝説の筆を見つけたものは今まで1人もおらんのじゃ」


「それって本当にあるんですか?都市伝説とかじゃなくて」


「我々もずっと噂だと思ってたんじゃ。しかしこの半年で状況が変わった。半年前にバッカス地区の伝説物の本が見つかったのじゃ」


「それで、都市伝説じゃ無いのがわかってここ最近で探し始めてるんですね」


「そういうことじゃ。皆その情報を聞いて伝説物を必死に探し始めてるのじゃ。見つかれば間違い無く最強に近づくからの」


「確かに…… ちなみに本の能力的なのはなんですか?」


「本はどうやらこの世の全ての生物の特徴、弱点などが書いてあるらしい」


「なるほど…確かにそれは持ってると大きいですね」



しかしそう言いながらレオはふとあることに気づいた。



(いや、待てよ・・・生物の特徴?弱点?それなら俺ほとんど知ってるんじゃ・・・)



そう。レオは子供の頃から大の動物好き。図鑑を作るほどだ。もちろんありとあらゆる生き物の情報は頭の中に入っている。何が得意で何が苦手か。どういう性質があるか。



(この世界って俺にとってかなり有利なのか?・・・)



「どうした?レオ」


「いや、なんでもありません」


「そうか。ともかくだな、ワシがレオに伝えたいのは一つじゃ。ワシらの為に力を貸してくれんか?」


「え?」



いきなりの言葉プラス村長のその真剣な顔にどう答えていいかわからずしばらく沈黙が流れた。



「でも、力って何を・・・自分の能力のこともまだ全然理解できてないですし、そもそもまだこっちにきて1日も経ってないんですよ。いきなりそう言われても・・」



沈黙からどれくらい経っただろうか。俺は村長に本音をぶつけた。確かに興味はある。でも力になれる自信がなかった。



「レオよ。どうか頼む。お前まであっち側に行ってしまったらいよいよ終わりの気がするのじゃ」


「お前まで・・・?それってどういうことですか?」



村長の意味深な発言が気になった。



「実はの・・・お前の前にもう1人向こうの世界からこっちに来た者がおると言ったじゃろ?」


「はい。そう言ってましたね」


「そいつは王国側の人間になったのじゃ。最初はワシらと共に生活していたのだが・・・ 」



村長はそこまで言うと黙り込んでしまった。



「裏切ったのですか?」


「そうじゃ。しかもこの村の住人を1人殺して出て行ったのじゃ」


「え・・・」



あまりの内容に俺は言葉を詰まらせた。



「ヤンマがいるじゃろ?アイツの奥さんをな・・・」


「ヤンマさんの・・・」



あんなに明るいヤンマさんにそんな過去があったなんて思いもしなかった。



「それはいつの話ですか?」


「もう3年じゃ。時の流れは早いの。ついこの間のことみたいに鮮明に覚えておる。ヤンマの叫びが今でも耳にこびりついておる」



俺はその一連の話を聞いて改めて考えた。


(俺に出来ることはあるか?俺はこの村の力になりたい。でも足手纏いにならないか?いや、ライオンの能力とこの知識があれば・・・)



「悪いの。変に考えさせてしまって。答えは今じゃなくていい。是非ゆっくりと考えてくれ」



村長はそう言葉を残すと後ろを向き外に出て行こうとした。



「あ、あの!村長!」



俺は村長を呼び止めた。村長の足がピタッと止まる。



「どうした?」


「俺まだ自分の能力とか全然理解してないけどそれでもよかったら力にn」



その瞬間俺の言葉をかき消すように鐘がなった。ものすごい大きな鐘の音だ。何かの合図か?



「まずい!レオ隠れろ!」



村長が物凄い形相で言ってくる。隠れろって言ってもこの狭い部屋に隠れるスペースなんてない。



「早く!布団の中にでも入ってろ」



何が何だかわからないが村長の迫力に押され言われるがまま布団の下に潜った。



それとほぼ同タイミングでヤンマが部屋に入ってきた。



「村長!パーラの部下が急にやってきました」



「なぜじゃ?先日貢いだばっかじゃないか。今日はその日じゃないだろ」


「俺にも分かりませんがとにかく外へ行って話をしましょう」


「そうじゃの。外に出よう」



声だけしか聞こえないが相当イレギュラーなことが起こってるのは明白だった。どうしても気になった俺は村長たちが出て行ったのを確認してコッソリと布団を抜け出し隙間から外の様子を伺った。そこには村長とヤンマ。その正面には2人よりも遥かに大きい男が立っていた。2mは超えてるだろうか。その男の周りには取り巻きっぽい奴らが数人立っていた。俺はなんとかして会話の内容を聞こうとしたが距離が遠すぎて全然聞こえない。ただ村長が謝ってる事だけは分かった。何を謝っているのだろうか。1〜2分ぐらい見てると大男がこちらの部屋向かって歩いてきた。真っ直ぐこちらに向かってくる。俺は焦って布団の中に隠れた。数秒後数人の男が部屋に入ってきた。



「おい!じぃさん。食料はもうないって言ってたよな?なんだこれ?沢山あるじゃないか!」


「これは・・ 来客者がきてたからその方への料理じゃ。だがもう本当にこれでないのじゃ。これ以上渡してしまうと我々が食べれなくて死んでしまう」


「ほう・・・俺より大事な来客者がいるんだな。俺も舐められたもんだなー。いいか!テメェらの心配なんかより俺様の心配をしろ!」



物凄い大きな声で男が怒鳴った。



「俺を怒らせた罰だ。お前のせいで今から人が死ぬ。よく目に焼き付けておけ。おい!住民全員外に出せ!!」



男はそういうと村長たちを連れて外に出て行った。いったい今から何が起こるのか。俺は再び布団から飛び出し様子を確認した。


          続く














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る