二、
山伏の格好をした男は、手にしていた
それは鋭く研ぎ澄まされて、槍の穂先のようになっていた。
「なぜ、わしを狙うや」
左近が問うた。
「ククク・・白々しいぞ、公儀隠密め!」
「ほう、わしを隠密だと?」
「これを見よ」
山伏様の男は、懐から何やら取り出し、左近の方へ投げて寄越した。
「むっ?」
地面に転がったそれを見ると、白っぽい木の塊のようであった。
「こ、これは・・・弥助の根付か?」
それは、
今、左近の目の前にある根付は、ウサギを型取った彫りが入っていて、弥助愛用の物だった。
「貴様の仲間の物だ。見覚えがあるようだな」
「・・・貴様、弥助を?」
「なかなかの短槍の遣い手だったな。じゃが、我の術の前には成す
(先ほど、血の匂いがしたが、刀槍の音は聞こえなかった。弥助が
左近が男の背後にチラリと目をやると、男が
「ああ、夫婦連れが近づいて来たでな、始末しといた。邪魔になるからのう」
まるで小さな虫を捻り潰したかのように、平然として言った。
「外道め!」
左近がスラリと刀を抜いた。
山伏様の男も、錫杖を両手で持ち直すと、スラスラと地面を滑るような足取りで、真っ直ぐに迫って来た。
左近は断崖を背に、剣先をダラリと下げた、柳生新陰流「
やがて互いに一足一刀、生死の端境に達した。
キラッ!
山伏様の男の錫杖の穂先が陽光を跳ね、左近の剣先が、そろりと動いた。
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