2-7 甘味絶対愛者の出会
1月某日。残雪唯が家でゲームをしている頃。
———首都ワシントンにて。
「やあ。君は…玉木彩さんで間違ってないかな?」
「……そうですけど。ていうか、日本人じゃん。まさか…迷子?」
店で買ったばかりのスムージーをベンチで座って飲みながら、あーしは中学生くらいの身長の黒髪の少女に言う。
「…私は別に迷子じゃないよ。こう見えて実は19歳なんだ…日数的にそろそろ20歳なるのかな。」
「…嘘!?全然そう見えないし。整形とか…改造とかしてる感じ?」
「色々あってね…ああ。それはいいんだ。」
あーしに少女は手を差し伸べてくる。
「…何のつもり?」
「少し君とお話がしたくてね。」
「話?別にここでもいいっしょ。」
「偽りの世界。煉獄。」
「……!」
あーしはハッとする。この子…何でその事を。
動揺するあーしを見て少女は少し微笑んだ。
「といった事について…君から詳細を聞きたいから、ここじゃあ…言いづらいだろう?」
「……名前。」
「ん?」
「名前、聞いてなかったから…いくら子供でもついて行くのはNGっしょ?」
「子供…う、うん。それも…そうだね。」
ため息をつきながら、少女は自身の名前をあーしに教えてくれた。
演劇部にいたあーしにとって…聞き馴染みのある名前だった。その口調といい……納得した。
「あいつ…妹いたんだ。」
「……私は妹ではなく姉なんだが…まあ、この見た目でいうのは…違うか。」
「どれくらい話とかするの?それによってはマミーに連絡しないといけないんだけど……」
「時間はそんなに取らないよ。大体、1時間くらいかな?…一応、君が緊張しないように甘い物や飲み物はこっちで準備している。」
その言葉で、警戒心が一瞬で吹き飛ぶ。
「マジ!?つまり奢ってくれるって事?…じゃあ早く行こっ!!」
「まあそういう事になるが…チョロくないかな?君は…私が言うのはおかしいけど。」
「甘い物には罪はないっ!!飲み物もあるんでしょ?行こ行こ…早く早くっ!!」
「……。」
ベンチから立ち上がって、周りを気にせずはしゃぐあーしを冷ややかな目で見ていた。
「じゃあ、案内するから…ついて来てくれ。」
「甘い物が待っている…♪ふふっ。ドーナツ、アンパン、アイス♪チョコもいいなぁ、クッキーもスコーンも…いや和菓子かなぁ…グラブジャムンもあるのかな?あはは超楽しみ〜飲み物は勿論ミルクと砂糖たっぷりのココア…」
「あはは…私も甘党だがここまでではないな。とりあえず追加しておこう。」
スマホで連絡しているのを尻目にあーしはスキップを決めたりしながら、少女について行った。
……
…
「…あー超美味しかったぁ!!ねえ、また来てもいい?」
「…あ、うん。まさか…追加分も在庫も全て食べ尽くされるとは…本当に無尽蔵だね。」
「甘い食べ物は別腹っしょ。んじゃねー☆」
走って行く背中を見ながら少女は考える。
(どんなに隠そうとしても、私の目だけは誤魔化せないというのに…本当に懲りないな…あの嘘つきは。)
「『世界の改竄』…リードという名の悪魔の存在。繰り返される日々。にわかには信じられないが……興味深いね。何よりも…」
——本来いない筈の少女の出現。それに関わった…謎の人物。
「…まだまだ話は聞けてないから何とも言えないかな。」
玉木彩……君は本当に人間なのかな?
或いは—————
(なんて……暫くは退屈しなさそうだ。)
少女は後ろを向いて…研究所へと戻る。
「あ。明日の私のお菓子…こうなったら仕方ない。後々怒られそうだけど……研究費から捻出するか。」
了
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