2-◾️ 愚者の足掻き

…◾️◾️◾️◾️。 


ーー◾️回目


「……なあ、残雪?おい…」

「…ぁ。」


どうやら、ボッーとしていたらしい。


「…しっかりしろ。ったく、やっぱお前、部屋まで送ってやるよ。」

「…っ。」


その圧に負けて、渋々…部屋まで案内した。


「へぇ。残雪の部屋ってこんな感じなのか。」

「……。」


男子に見られた…ボクのコレクションを。すごく……恥ずかしい。


「…湿布もついでに持ってきたから…おい大丈夫か?顔が真っ赤だが。」

「…だ、大丈夫。」


俯きながら、何とか答えつつ足に湿布を貼った。


「…んじゃあ、やる事済ませたし…帰るぜ。またな、残雪。」


そう言って帰ろうとする山崎の手を掴んだ。


「あ?…どうした?」

「……?」


自分でも何故そうしたのかが分からなかった。咄嗟にボクは弁明を…


「あの、ご飯…食べていかない?…ボクを送ってくれたお礼で。」


出来なかった。むしろ、ご飯に誘ってしまった。このボクが。


「おう、いいぜ!実はここ最近、飯を食ってなかったからな……クソ親父の所為で。」

「…駄目だよね…あ、え……本当に?」

「今、いいって言ったろ?男に二言はねえよ。」


なし崩し的にボクはご飯を提供する事になった。


「おお、美味いな。久々の飯だからテンション上がるぜ!!」

「…なら、よかった。」


内心ビクビクしながら、ボクはそう答えた。


「……ん?」


ふと、箸を止めて山崎は玄関の方を見る。


「あの、…どうしたの?」

「玄関からなんか物音がしてな。ちょっくら見て来るわ。残雪は食べてて良いぜ。」


椅子から立ち上がり、山崎は玄関へと向かおうと…申し訳なさそうにボクを見てきた。


「…俺、実は方向音痴なんだ。だから、あれだ!案内を…頼めないだろうか。」

「ん…分かった。」


ボクと山崎は、玄関へと向かった。


「えっと…着いたけど……あの、山崎さん?」

「……お前は自分の部屋にいろ。」


真剣な声色で言われ、体に緊張が走る。


「…いいな?」

「…うん。」


軽くボクの頭を撫でてから、扉を開けて外に出て行った。ボクは言われた通りに、部屋に行こうとすると外から剣戟のような音が聞こえ始めた。


「………。」


ボクは玄関にあった懐中電灯で辺りを照らしながら、外に出ると…遠くで山崎さんと誰かが戦っていた。


「…っ何で、残雪を襲おうとするんだよ!!」

「全ての元凶だからです。」


白髪の女性が包丁片手に山崎に攻撃を仕掛けるのを鍵で必死に防いでいるが、明らかに劣勢なのがよく分かった。


「…っぁ。」


遠目ではよく見えず近づこうとして何かを踏んづけた。咄嗟に下を照らすとそこには…


ーー山崎の右腕が落ちていた。


反射的に悲鳴をあげた…あげてしまった。


「来るーー」

「消えて下さい…偽物。」


山崎がボクの方を見て警告をしようとする隙に、女性は首を斬り落とした。


血を大量に溢しながら山崎だったものは倒れた。それを見向きもせずに女性はボクに近づいてくる。


「問います。」

「…ぇ…あぅ。」


自然と体から力が抜けて崩れ落ち、涙が溢れ出てくる。


「……この世界を変えた元凶は貴女ですか?」

「…元…凶って…なに…?」

「そうですか。」


それを聞いた途端、ボクの視点が地面にあった。女性は何かを呟いた。 


「今度こそ……これで…」


ーーそこでブツリと意識が途切れた。


…◾️◾️◾️◾️。


ーー◾️◾️回目


掃除当番を真面目にやっていたら、色々あって…いつのまにか22時を過ぎていた。


(あーあ…リアタイ、間に合わなかったなぁ。)


そう思いながらボクは競歩で帰宅していると前方から、何かが飛来してきた。


「…?」


それを軽く避けて、前進する。


(暗くてよく見えないけど…)


ナイフの形をしていたような……


「……」


今度は2本のナイフがボクの側を通り過ぎた。


「……」


当たらないならどうでもいいかと思いながら、ボクは信号が青になっている横断歩道を渡っていると……唐突に体が宙を舞った。


(……何、で?)


後ろにあった信号機がナイフによって壊されているのが見えて…車に轢かれたんだと気づいた。


街灯もほとんど無いルートを使ったんだ。ボクが見えなくてもこれは…仕方ないな。


最期に皆の為に手伝えて…良かっーーー


ーー頭蓋が割れた感覚がして、そこで言葉は途切れた。


……◾️◾️◾️◾️。


ーー◾️◾️◾️回目


「残雪さん!?どこに行くの!!」

「…っ!」


雨の中。ボクは反射的に、傘を捨てて中野さんの手を取って走る。


「…どうしたの、残雪さんっ!」

「……。」


目の前に白髪の………女性


否————死神がいた。


「……っ。」


中野さんと逃げるよりも、ボク1人で逃げればよかったじゃないか。


(でも怖い……怖い怖い怖い怖い怖い……)


想像するだけで、自然と寒気と恐怖で震え上がる。


「……さんっ……残雪さん!!」

「……っ!?」


いつの間にか、駅前についていて…心配そうに中野さんはボクを見ている。


「大丈夫…?落ち着いて…何があったのかは分からないけど…わたし、聞くよ?」

「……ボクは、」


言ってもいいのだろうか。これはボク1人の戦いだ。でも…その気持ちを無下にしたくない。


「教えて、何があったの——」

「あ……避けて、中野さん!!!」


間に合わなかった。頭の後ろから包丁が深々と突き刺さる。


「………ぁ。逃げ…てぇ。」


白髪の女性が、中野さんの頭から包丁を引き抜く。大量の脳漿をぶちまけて、ボクの体に倒れ込んだ。


「…ぁ、あぁ…嘘……中野…さん。」


ボクのせいだ。ボクが…友達になれるかもって思って、ボクの家に誘った……っ、だから!!


「終わりです。」

「……。」


ボクは無言で白髪の女性を力の限り睨む。そしてこれ以上…中野さんの体が傷つかないように…その亡骸を地面に横たえる


———ボクにはそれしか、出来なかった。


意識が暗転した…首か、それとも心臓か…よく分からないが、一撃で致命傷を負ってそのまま即死した。


……。


これで、600回目。


「……つまんねえな。」


ビルの上からリードはそう呟く。


「…干渉はしないって契約だが…もう飽きたぜ。」


それに見てられねえよ。小さくため息をついて、軽く手を叩いた。


「……やり直し。」


世界が巻き戻り始める。


「…お前を幸せにしないといけねえしな。本当に面倒だぜ……いるんだろ、サンボ。」


後ろからピエロ姿の成人程の男が現れる。


「いますが?」

「はぁ…どこにでも出てくるよな。」

「あなたが私、僕、俺を呼んだのでしょう?」

「探す手間が省けたしいいか……この世界を『改竄』してくれ。」

「…フフン。それが…「悪魔帝サタン」様の御命令なら…僕、俺、私が見事に遂行してみせましょう!」


リードは嫌そうな顔でサンボを睨む。


「その名前はやめろって前に言わなかったか。もし次言ったら………滅ぼす。」

「ええ、ええ!!了解しましたとも!!!」


サンボは両手を天に向けてニヤリと嗤った。


「……では、『改竄』」


世界の仕組みが瞬時に書き換わっていく。

それを見ながら、リードは小声で呟いた。


「絶対、助けてやるからな。」



その果てに…この身が滅んでも。


























































































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