第7話

 1990年大発会の日、株価は大きく下げた。多くの予想に反したので市場関係者はおおいに動揺した。翌日からも一進一退を繰り返し、下げ基調になっていった。

 僕の保有している銘柄もほとんどが下げに転じた。特に信用で買った銘柄の下げが凄まじい。これ以上下げると信用取引の保証金が足りなくなる。保証金が足りなくなると追加の保証金をいれなければならない。つまり追証ってやつだ。僕は初めて株の厳しさを知った。この日から毎日がどきどきの日々になった。夜も時々不眠症になり睡眠薬すら飲むようになった。証券マンは信用で買った銘柄の損切を進めてきた「損失が大きくならないうちに早く売ってしまいましょう」僕は始めての経験なので、なかなか損切に踏み込めない、これで素人はずるずると損失を膨らませてしまうのだなと、わかっていてもなかなかできないものだった。

 株価は一進一退を繰り返し横ばいの水準が数か月続いたころ想定外の事件が起きた。イラクのクエート侵攻、湾岸戦争の勃発である。世界の石油相場は大きく揺れ動いた。日本の株式市場も大きく下がった。特に中東に進出している日本の石油会社は大きく下げた。他の株もそれにつれ安してさらに下げた。当然僕の保有銘柄も全面安になった。

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