第4話
朱に交わればなんとやらで連日の2人の話に僕は徐々に傾いていくようになった。口座だけでもお付き合いするかということで僕と妻の口座を作ることにした。内心、株を買うことはないだろうと思いながら。
夕方、本宮君から電話がはいった。「核心的な情報が入ったよ、明日、B社に仕手が入るらしい。絶対買いだよ。俺は買うけどね、」僕は絶対怪しいと思いながらも生返事をして電話をきった。
翌日、2人は勢いづいて店に入ってきた。「朝から買い気配ですね」本宮君はにこにこしながら証券マンに話かけていた。証券マンは勝ち誇ったように「これからもまかしてください」と胸を張って顎を突き出した。僕は偶然だろうと腹の中で苦笑して2人によかったですねと相槌をうった。
その後もB社の株は上がり続け本宮君は3割くらい利がのったところで売った。僕は本岩君が意外にも堅実な利食いをしているんだなと思った。証券マンも「頭と尻尾はくれてやれですよね。」などと含蓄のある言葉を発して本宮君を褒めたたえていた。僕もなるほどと思いかれらの理にも少し感心をしていた。
マスコミも連日、株価だ経済だと騒ぎだし、それらのニュースに多くの時間を割くようになった。ワイドショーでも芸能人が株のことを評論家並みに語り、エリート然としている者もいた。会社では財テク部門などと呼ばれる部署ができたりもした。もはや株に参加しないと時代遅れのような様相すら呈してきた。
僕も周りがあまりにも株、株なのでなぜか乗り遅れてしまいそうな気にもなりだしてきた。
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