第三話:ライバル!?
「あゆみちゃん、病気治ったんだって!? もう大丈夫なの!!!?」
いきなり
見た目はあゆみや
半袖のパーカーに短パンと言う姿は活発さを物語っている。
とは言え、筋肉質と言う訳ではなくしなやかな手足はカモシカの様で、ややも釣り目気味の勝気な表情は少女から美しい女性へと変貌する過程にいるようだった。
「え、
「おじさんとおばさんに聞いたよ、あゆみちゃん! 病気治ったんだって? これで私と一緒に学校へ行けるね、良かったぁッ!!」
「うわっぷっ!」
だきっ!
そう言って彼女、
「ちょ、ちょっと恵菜ちゃん、今はアイナお姉ちゃんとあゆみお姉ちゃんの事で取り込み中よ!」
「あらぁ、恵菜ちゃん久しぶり。そう言えば恵菜ちゃんも聖友愛学園だっけ? あ、そうか、恵菜ちゃんはあゆみちゃんと同じ学年だっけ?」
幼馴染でご近所の稲垣恵菜に抱き着かれ歩はドキドキしている。
その昔、男だった頃には妹の愛菜と一緒によく遊んだものだ。
年齢的に近い愛菜と恵菜はやたらと仲が良く、将来どちらが歩のお嫁さんになるかとか争ったモノだ。
が、流石に昨年あたりから高校受験であまり星河家に遊びに来なくなったが、その後は更に疎遠になっていた。
歩はふと思う。
恵菜は自分の事をどう認識しているのだろう?
「あ、アイナさんお帰りなさい。でもよかったよぉ~。あゆみちゃんの病気が治って。せっかく同じ高校に行けるようになったって言うのに、いきなり病気で長期療養だなんて、私すっごく心配したんだよ?」
「あ、そ、そう? あ、アリガトね……」
恵菜に抱き着かれたまま歩はアイナを見る。
その眼は「これ、どうするんだよ?」と物語っているが、アイナは落ち着いて恵菜に言う。
「恵菜ちゃん、ごめんね、治ってはいるけどまだあゆみちゃんは長い間休んでいたからお手柔らかにね?」
「あ、ごめんなさい。私、つい嬉しくて」
恵菜はそう言いながら歩から離れる。
歩は、ほっとして改めて恵菜を見る。
恵菜も高校生になったんだなぁと改めて思うと同時に、先ほど抱き着かれて分かったが意外と大きかった。
多分着やせするのだろう。
幼馴染に対して今までそんな事は思った事もないが、よくよく見ればそこそこ可愛いし、将来ステキな女性になるだろう。
彼女いない歴の歩にとってまさしく灯台下暗しであった。
「それで、アイナさんと愛菜ちゃんはあゆみちゃんのお部屋で何してるんですか?」
いきなり参入してきた第三勢力に歩は嫌な予感がする。
何と言ってもその昔、恵菜は愛菜と自分が歩のお嫁さんになるんだとか言っていた間柄だ。
歩当人としては、恋愛対象ではなく、あくまで妹が一人増えた程度に今までは思っていた。
しかし成長して女子高生になった恵菜は違っていた。
立派に彼女にしたいくらい可愛い女の子になっていたのだ。
くそう、俺が男のままだったなら!
内心本気でそう思っている歩だった。
「うーんとね、私は研究員のお仕事しばらくお休みで日本に帰って来たんだけど、実家ってこの通り狭い家だからあゆみちゃんの部屋に居候する事になったのよ。ほら、愛菜ちゃんて今度高校受験じゃない? あゆみちゃんも体が治ったし、何か有った時私が近くにいればすぐに見て上げられるしね」
アイナはそう言ってにっこりと笑うが、恵菜は少々不満そうな顔をする。
「そう、ですか…… 私もあゆみちゃんの事心配で今まではお邪魔じゃないかって遠慮してたんですが、アイナお姉さんがいるなら……」
ちらちらと歩を見ながら恵菜はそう言う。
が、ここで愛菜が口を挟む。
「恵菜ちゃん、アイナお姉ちゃんに騙されちゃダメ! アイナお姉ちゃん今朝だってあゆみお姉ちゃん襲っていたんだから!!」
「何ですって!? あ、アイナさんっ! いくらあゆみちゃんが可愛いからって、実の妹ですよ!?」
どんがらがらびっしゃぁ~んっ!
恵菜が背景を真っ暗にして稲妻を落す。
そしてでんでんと音が鳴りながら背景に仁王が現れる。
「ア~イ~ナ~さ~ん!」
「ちょ、ちょっと、あゆみちゃんはやっと復活したから色々とお世話しただけよ? まだやましい事はしてないわよ?」
「まだっ!? 一体、何するつもりですか!!」
「いや、ほらあゆみちゃんが女のとしての喜びを知りたければ教えてあげようかなぁ~って」
「そ、そんな事、わ、私が教えてあげますから、アイナお姉さんはしなくていいですっ///////!」
「ちょ、恵菜ちゃんだけ抜け駆けするつもり!? わ、私だってあゆみお姉ちゃんの為ならなんだってしてあげるよ!? 本でしっかり勉強だけはしてるんだから///////!!」
わいわい騒ぐ女性陣。
そんな中、歩は顔を真っ赤にして頭から湯気を出しながらこそこそと部屋を抜け出す。
そして廊下に出てからやっと一息、大きなため息を吐く。
「はぁ~、まさか恵菜まで乱入してくるとか。それに俺が女の子に成っちゃってもなんかやばそうなこと言ってるし……」
ちらりと自分の部屋の扉を見たその時だった。
扉に何か赤い光る点がある。
何だろうと思ってそれを見ているとその光がどんどんと自分へと近づいてくる。
ちょっと嫌な予感がして身を引くとその光は歩を追ってくる?
「な、なんだ、なんだ!?」
「下がりなさい! 伏せて!!」
ジュっ!
そう言っていきなり首根っこを引っ張られて床に倒れる。
と、その瞬間歩の頭の上を何か熱いものが通り過ぎた。
「な、なんだ!?」
「頭を伏せて! ベータからアルファへ、狙撃された! ガンマ、デルタすぐに対処を!!」
見れば全身をぴちぴちのウェットスーツの様な黒い服で覆われた胸の大きなナイスバディ―の女性が、やたらと未来的なゴーグルに片耳のインカムみたいなものを介して誰かと話していた。
歩は頭を押さえられたまましばしそのままでいたが、やがてその女性は耳元のインカムから手を離すと、安堵の息を吐く。
「歩さん、敵対勢力は撤退しました。もう大丈夫です」
「あ、あんたは??」
「アイナさんと同じ歩さんをサポートするエージェントです。ベータとお呼び下さい。現在貴方は国際連邦の決議反対派の者から狙われています。私たちは陰ながらあなたの安全をサポートする者です。相手の刺客は三人、現在われわれのチームの者が追っています。じきに刺客たちは排除されるでしょう、ご安心を」
そう言ってにこりと笑うその美女は紫がかったウェーブの肩まである髪の毛を片手でかき上げにこりと笑う。
歩は思わずドキリとするも、彼女が少々困ったような表情に変わるのを見て首をかしげる。
すると彼女は申し訳なさそうに歩に言う。
「あの、歩さん…… いえ、今はあゆみさんでしたね。女性に性転換したばかりで慣れないでしょうが、その、つつしみと言いますか、恥じらいと言いますか、そろそろスカートを降ろして下着を隠した方がいいかと」
「へっ?」
言われた歩は自分の状態に今更ながらに気付く。
押し倒されて、頭を押さえられていたが、その時にスカートが盛大にめくれ上がって純白な下着があらわになっていた。
慌ててスカートを手でおろし、赤面する。
「わわわわわわわぁ///////」
「ふふふふ、私はこれで。女性は大変ですが、恥じらいも必要です。それでは」
そう言って彼女は腕時計のような物を触ると足元に暗い渦のようなものが出来てその中に沈む様に消えて行く。
呆気に取られていた歩だったが、壁に小さな焦げた穴があるのを見て今更ながらにぞっとする。
アイナも言っていたが、いっそのこと歩自体を亡き者にして数年後の大災害を完全に起こらないようにしようとする考えも有るとか。
「じょ、冗談じゃないぞ! 女の子に成ってそして命まで狙われるだなんて!!」
そう言って憤慨するものの、歩のその言葉に応える者は今はいないのだった。
* * * * *
「と、言う訳でみんなでお風呂に入る事になりました」
「はぇ?」
なんやかんやあってアイナに文句の一言でも言ってやろうと部屋に戻った歩にアイナはそう宣言する。
「な、なんでみんなでお風呂に??」
「だってあゆみお姉ちゃんのお世話はあたしがするって言うのに、アイナお姉ちゃんも恵菜ちゃんもあたしは受験生だからだめだって言うんだもん!」
「だからみんなであゆみちゃんのお世話しようってことになったのよ」
「と言う事で、親睦を深めるには裸の付き合いが良いかなと思ってね、ほら、うちのお風呂って無理すれば四人くらいは入れるから」
ニコニコとそう言う三人は既に歩の近くまで手をワキワキさせながら迫っていた。
「いいや、風呂くらい俺一人で入れるから……」
「だめよぉ~、あゆみちゃんは病み上がりなんだから、お姉さんが奇麗に隅々まで洗ってあげるから~、この胸でね♡」
「なっ! た、確かにあたしには胸ないけど、私の全身使ってあゆみお姉ちゃんを洗ってあげるよ!」
「わ、私だって! あ、あゆみちゃんとお風呂一緒に入るのは久しぶりだし、私も一応は成長してるんだよ? あ、あゆみちゃんの成長も見てみたいし///////」
思わずたじろぎ後ずさるも、部屋の壁に追いつめられる歩。
脂汗を流しながらもいやいやと首を振っても三人の魔の手に捕まるのであった。
* * *
かぽーん
「や、やっぱり無理があり過ぎるぅっ!」
「だ、大丈夫だよあゆみお姉ちゃん! むしろあたしはこの方が幸せ♡」
「あ、あゆみちゃんも結構大きいんだね、小ぶりだけどいい形してるし///////」
「うーん、流石に四人一度は無理があったかぁ~、でもあゆみちゃんと濃厚なスキンシップが出来るのは良いわね♡ ほらほら、私の胸、気持ちいいでしょ?」
歩は無理矢理服を脱がされ、女たちに浴室へと連れられてゆく。
そしてシャワーを浴びて四人同時に湯船に入ろうとして座れずぎゅうぎゅうに立ったままもみくちゃにされている。
「わわわわわぁ///////」
後ろからアイナに抱き着かれ、後頭部にその豊満な胸の感触を感じる。
前からは愛菜と恵菜が体を押し付けて来るも、みんな裸だからその感触がダイレクトに伝わって来る。
ぺターンとぽよーんの感触を前から感じて歩は更に目がまわる。
「うーん、これじゃぁお湯に浸かれないから、先に体を洗ってあげましょうかしら?」
「な、ならあたしがこの身体であゆみお姉ちゃんを洗ってあげる!」
「わ、私だってあゆみちゃん奇麗にしてあげる! あ、あゆみちゃんの胸とかお尻とか!!」
更にもみくちゃにされ、歩は限界を迎える。
「も、もう駄目だぁ~%$#@」
顔を真っ赤にして頭から湯気を出し目を回しぐったりとなる。
「きゃー! あゆみお姉ちゃんが!!」
「あゆみちゃん!!」
「あらあら大変、これはマウスツーマウスですぐに人工呼吸しなきゃね♡」
女たちの騒ぎの中、歩は「もう勘弁してくれぇ~っ!」と心の中で叫びながら意識を失うのだった。
ちーん。
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