10 そして、鬱病へ

「どうして起こしてくれなかったんだよ!!!」

 社会人にもなって、寝坊したわたしは母を怒鳴りつけた。

 会社を休んだら、遅刻したら、大嫌いで恐ろしい課長に電話をしなければならないからだ。

 しばらく現実逃避をしていたが、ちょうど予定日だったので、生理休暇を取得することにして、電話をかけた。

 課長は電話に出なかった。

 心底ほっとして、休む旨をメッセージで送信した。

 後で、本当に生理が来た。


 母は、メンタルクリニックの予約を取っていた。


 母に連れられて、メンタルクリニックに行くと、優しそうな男性のお医者さんが座っていた。

 わたしはこれまでの経緯を話した。

 すぐに涙が溢れて止まらなくなり、早く死にたいと何度も言った。


「今すぐ会社を休んでください」

 先生は言った。会社への連絡は母がすることになった。


「来週の忘年会はどうしたらいいですか?」

 わたしが言うと、二人に「何を言ってるんだ?」という顔をされた。

 お医者さんは、「休んでください。今日から休みます」と言った。


 もう会社に行かなくていい。

 怖い課長に会わなくていい。

 話の通じない先輩と話さなくていい。


 一瞬だけ、解放された気分だった。

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