8 強制参加の忘年会

「強制参加ではないけれど、新人は毎年参加しています」

 本社のあまり会話を交わしたことのない先輩から、新人に一斉メールが届いた。

 社員が自主的に開催している忘年会のお知らせだった。

 新人は出し物をやる決まりなんだとか。


 わたしが本社に戻った時に、新人だけで集まって、昼休みに相談会を開いた。

「やりたくねー」

「でも、あの感じはやんねーとな」

 と、口々に言っていた。


「やんなきゃいいじゃん! 強制じゃないんなら、わたしたちの代で歴史を変えようよ!」

 わたしの言葉に、みんな苦い顔をした。

 結局、一部の同期が出し物を考えてくれることになった。


 本社から常駐先の会社に向かう際、OJTのママさん先輩から「出し物考えた?」と尋ねられた。

「わたしは所用の腹痛があるので、欠席します」

 自信満々にそう言った。

 途端に、先輩は顔をしかめた。

「それ、本気で言ってんならやばいよ」

 え……?

 そんなに出席しないといけない飲み会なの……?

 任意参加なのに……?

 水曜日にやるのに……?


 先輩の剣幕にビビるわたしに、

「ま、わたしは子供の面倒を見なきゃいけないから、行かないけどね」

 と、彼女は言った。

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