7 先輩たちに無視され続けた日報

「お前がいつ気づくかなって、みんな黙ってたんだよ」

 日報の書き方が間違っていると、OJTから指摘された。

 そんなこと、誰も言ってくれなかったと言い返したら、そう返された。

 嘘だろ、と思った。

 新人に意地悪して、なんの得があるのか?


 その日は特に酷かった。

 今までだんまりだったくせに、急に仕事のできない先輩とOJTの先輩が、「今まで言わなかったけど、お前の日報はおかしい、書き方がなってない」と言い出したのだ。

 腹の底から怒りが沸いた。

 気づいたらすぐ修正させるべきでは?

 なんで今まで黙っていた?

 大声が出そうになるのを、拳を握って我慢した。


「まあ、落ち着けって」

 OJTのママさん社員は言う。

 わたしは必死に深呼吸して、呼吸を整え、声を絞り出した。

「すみません、生理前なので……」

 生理前は感情の起伏が激しくなり、自分でも手をつけられなくなるのだ。コントロール不可のジェットコースター状態。

 生理前、生理中の体調不良については、配属された時に、ママさん先輩には相談してある。「大丈夫だよ」と言ってくれた。

 しかし、彼女は怒りを押さえつけるわたしにこう言った。


「そういうの、いいから」


 ソウイウノ、イイカラ?

 何言ってんだ……?

 こっちは、死活問題なんだぞ……?


 そのあとは、もう覚えていない。

 適当に話を済ませて、トイレに駆け込み、声を殺して泣いた。


 会社で泣いたのは、初めてだった。

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