5 威圧感の強い課長に、会議で公開処刑

「なんでお前の業務時間が、目標に届いていないんだ?」

 会議室で、大勢の社員がいる中、怖い課長に問われた。

 モニターに映し出されているのは、リーダーに「こう書けばいいから」と指示された通りに作成した、わたしの勤務時間表。

 これでいいって言われたのに、課長から怒られてしまった。

 リーダーが助け舟を出そうとしたが、「俺はこいつに聞いてんの」と一蹴される。

 わたしは何も言えない。

 脂汗だけが、頬を伝っていく。

 どうして、わたしだけがこんなに責められるの?

 言われた通りに働いているだけなのに。


 会議後に「なんて返せば良かったんですか」とリーダーに聞いた。

「俺に言われてやったって言えばいいよ」

 ……そういう問題じゃなかったと思う。


 そもそも会社のシステムがおかしい。

 わたしは、外部の会社に常駐している。基本的に出社は常駐先の会社だ。

 なのに、朝礼や会議で本社に戻される。

 移動時間は約一時間。

 移動時間は、本社の勤務時間にはなるが、常駐先と契約している勤務時間にはならない。

 常駐先の勤務時間は、八時間×二十日間。合計百六十時間。


「普通に勤務していれば、達成するよ」

 滅多に本社に顔を出さない先輩はそう言う。

 新人は月に一回、進捗報告会議が本社で行われる。月一の朝礼も本社。それ以外にも、新人だからという理由で出席しなければならない会議がゴロゴロある。

 IT企業なのに、リモートで会議しないなんて、時代遅れも甚だしい。


 本社の朝礼さえ、本社の会議さえなければ、常駐先の勤務時間を達成できるのに。

 残業ありきの考え方じゃないか、こんなの。

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