第36話 もし今後何か困った事があったら私が後輩君の力になってあげるよ
夏乃さんと映画を見た日から数日が経過して金曜日になっていた。今日からテスト一週間前のため職員室へは入室禁止であり放課後の部活も停止となっている。
「今回の期末テストはやばそうな科目があるからガチで勉強しないと」
「それな、万が一赤点なんか取ったら後が面倒だし」
「健二と翔って毎回同じような事言ってるよな」
「だな、俺や結人と違って健二と翔はいつもギリギリのイメージしかない」
帰りのホームルームも終わって放課後となった現在俺はいつもの三人と教室の後ろで適当に雑談していた。成績の良い俺や海斗に対して健二と翔は赤点の常連だ。
「俺は物理基礎、健二は数学Bが特にやばいから困ったら助けてくれよ」
「マジでこの通りだから」
「二人が誠意を見せてくれるなら考えてやっても良いけど?」
懇願してくるような視線を向けてきた健二と翔に対して俺は笑顔でそう言い放った。勉強を教えるのも割と大変なため何か見返りがあってもいいはずだ。
「……結人って意外とドSだよな」
「もしかしてそんなギャップ萌えを利用して結城さんのお姉さんを惚れさせたのか……?」
「俺達も参考にしたいから詳しく教えてくれよ」
「おい、ギラギラした目で俺に近づいてくるな」
軽く恐怖を覚えた俺はそう声をあげた。てか三人とも普通にモテるだろ。そんなやり取りをしてふざけ合った後、俺は三人に別れの挨拶をしてから図書室へと向かい始める。
家では集中できないためテスト勉強は基本的に学校の図書館でやっているのだ。夏乃さんもその事は知っているため今日は来ていないだろう。
図書室に入って席に着いた俺はリュックサックの中から数学2Bの問題集とノート、筆記用具を取り出して今回のテスト範囲を解き始める。
授業中に基礎は大体理解できていたため簡単な問題は難なくすらすらと解けた。応用問題に関しても特につまずく事はなかったため割と順調だ。
しばらく集中して問題に取り組んでいるうちにどんどん時間は過ぎていき、気付けば後少しで最終下校時間になるところまできていた。リュックサックに荷物を詰め込んだ俺は席を立つと靴箱で靴に履き替えて歩き始める。
そのまま家に帰ろうとしていた俺だが、テスト対策用に新しい問題集が欲しくなったため方向転換して本屋へと向かう。
街中にある割と大きな本屋なため品揃えはかなり豊富だ。参考書や問題集が置いてあるエリアを見ていると突然後ろから声をかけられる。
「もしかして結人?」
「あれっ、夏乃さん。こんなところで会うなんて珍しいですね」
「実はこれから合コンに付き合わされる予定でさ」
そう口にした夏乃さんは憂鬱そうな表情を浮かべていた。この様子的に多分夏乃さんはあまり乗り気ではないらしい。
俺としても合コンに参加して欲しくないと思っている。なぜなら夏乃さんが合コンで楽しそうに話している姿を想像したらモヤモヤさせられたからだ。
そんな事を思いながら二人で雑談をしていると突然黒髪ロングのクール系美人な女性が夏乃さんに話しかけてくる。
「やあ、夏乃」
「あっ、
「こ、こんばんは」
恐らく夏乃さんの知り合いだと判断した俺は緊張しつつもそう挨拶をした。彼女になるかもしれない相手の知り合いとは仲良くしておいて損は無い。
すると夏乃さんから真夜さんと呼ばれた女性はにこやかな表情で俺に話しかけてくる。
「その制服を着てるって事は君って新城池高校の生徒かい?」
「はい、そうですけど」
「やっぱりそうか、じゃあ私の事って知ってたりする?」
「えっと……」
「今高校二年生の結人と大学二年生の真夜先輩は在学の時期が被ってないから多分知らないと思いますよ」
俺が回答に困っていると夏乃さんが助け舟を出してくれた。
「そっか、残念」
「真夜先輩はうちの高校の生徒会長だったんだよ」
「へー、生徒会長って凄いですね」
正直生徒会が普段どんな活動をやっているのかは全く知らないが、会長と聞くだけでめちゃくちゃ凄そうなイメージがある。
「ここで会ったのも何かの縁かもしれないな。もし今後何か困った事があったら特別に私が後輩君の力になってあげるよ」
「ありがとうございます、まあ何も困り事が起こらないのが一番ですけどね」
「それは確かに違いないな」
俺と真夜さんが二人でそんな話をしていると夏乃さんはジトッとした目で俺を見つめていた。いや、ただ普通に話しをしていただけなんですけど。
「ところで今日の合コンに参加する予定だった男子が一人急に来れなくなったとさっき連絡があったんだが夏乃は誰か参加してくれそうな知り合いとかいたりしないか?」
「一応これから声をかけてはみますが多分難しいと思います」
「だよな、やっぱり当日のしかも直前で探すのはかなり無謀か」
先程三対三の合コンと夏乃さんから聞いていたので男子が少ないとバランスが悪くなってしまう。まあ、ぶっちゃけ参加者でもない俺には関係の無い事だが。
「……あっ、そうだ。都合的な問題が何もないなら後輩君に参加して貰うのはどうだろうか?」
「えっ、俺ですか!?」
全く予想もしていなかった真夜さんからのとんでもない提案に俺は思わずそう声をあげた。
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