20話 勇者達の実力
僕が守備する場所へ向かってくるアンデッドの軍勢。それを見た騎士達は自身を鼓舞するために雄叫びを上げ、アンデッドと激突する。
騎士達がアンデッドを倒していく最中で、僕はゆっくりと剣を抜く。
これだけの軍勢、この剣を抜くに値するのか……——ッ。
僕がいざ出陣しようとした時、目の前ではアンデッドと戦い、戦死していく騎士達が居た。
「——クッ! フィジカルブーストォ!」
僕はあの時と同じまんまだ……誰も救えなかった、もう誰も救えない自分はもうゴメンだ。僕の脳裏に過ぎるのは、自分の村を救えなかった過去。体から湧き上がってくる力を両腕と足に込め、大地をかち割る程の蹴りを入れる。
怏々として風を切りながら、僕はアンデッドの首を斬り飛ばす。それでも万を超えるであろうアンデッドの軍勢は、僕を取り囲み、攻撃を仕掛けてくる。
僕はその攻撃を避け、瞬間的な速さで取り囲んでいたアンデッドの首を回転斬りで刈り取る。
神速の速さで縦横無尽にアンデッドを倒していると、僕の目の前にアンデッド達が結集した巨大なアンデッドが現れる。
それを見た騎士達を怖気付いた様子で、後に後退していく。が、後退するだけでアンデッド達はその騎士達を殺しにかかる。なぜこうも人を簡単に殺せる? 許せない、絶対に!
僕は身に満ちる魔力を剣に流し、大振りに剣を振り下ろす。
——瞬間、振り下ろした剣の斬撃は、台地を大きく直線状に切り裂きながら、結集していた巨大なアンデットや控えていた敵たちを殲滅した。
もうこれ以上死なせちゃダメだ。そして、僕は剣を空へ掲げこう宣言する。
「僕がここにいる限り、君達を絶対に死なせやしない!」
僕がそう宣言すると、周りにいた騎士達は再び自身を鼓舞し雄叫びを上げる。
騎士達は必死に防御の体勢に入り、その一方で僕はこのアンデッド達を指揮するリーダー格の相手を倒すために動く。
倒しても倒しても次々へと来るアンデッド達。キリがないな。そう感じた僕は剣に再び魔力を流し、今度は大振りに薙ぎ払いをぶつける。
巨大な横一線の斬撃がアンデッド達を横真っ二つに蹴散らす。
「レイク! 前に頼む!」
「了解!」
僕は後ろで戦っているレイクにそう言うと、それを聞いたレイクは言って、地面から上へと続く階段状の岩を出す。
僕はそれをすかさず上り、ある程度の高さまで来た時に空高く飛び、辺りを見渡す。
見つけたぞ。
リーダー格の敵を見つけた僕は、そのリーダー格の方へ空を蹴る。
「——ッ!?」
「君がこのお山の大将だね?」
「こ、この化け物め!」
アンデッドをある程度蹴散らし、辿り着いたこの軍勢を仕切る相手に向かって、僕は閃光の一太刀をぶつける。
※
「む、無理だ……このアンデッド何度切っても立ち上がってきやがる!」
そう言って、騎士達が意味の分からん戯言を言って、怖気付いている。それを聞いた私は怖気付いている騎士達の元へ飛び入る。
「無理などこの世には存在せん! 私がいる限りな(キリッ)」
「ふ、フラーム様!」
「で、ですが、このアンデッド達は倒しても倒しても復活するんです! もうどうしようも無理としか言いようが——ッ!?」
また一人の騎士が『無理』だと言っていたので、私は問答無用でその騎士の頬を叩いた。
「私のいる前で次『無理』と言ったら、次に私はソイツをぶん殴る!」
鞘から剣を抜き、私は剣の刀身をなぞり、青い炎を浸透させ、ゆっくりと構える。
「私の辞書に「無理」という言葉がないことを証明して見せよう」
私は体を捻らせ、炎とパワーを溜める。それを隙と見たアンデッド達は一斉に襲いかかってくる。
馬鹿め。
「
アンデッドが襲いかかる直前で、私は捻らせていた剣と体を回す。
私の放った斬撃は豪炎の炎を纏い、アンデッド達に向けて斬撃が到達した時、凄まじい爆発と共にアンデッド達の骨も残さず殲滅した。
「肩慣らし的には丁度いい敵だな。このイケメンな私を! アンデッドごときが! 殺すことが出来るわけ! なかろう? そうだろう? 皆の衆?」
私が自分のイケメンさを騎士たちに共有したが、騎士達は無言で私を見ていた。
「……はぁ、私の魅力が分からないとは。ダメな騎士達だ」
騎士達の反応に頭を抱えていると、
「貴様だな? アウラ王国の勇者、フラームというのは」
と私の前に現れたのは、頭に2つの異形の角を生やした魔族、ヴットだった。
「ヴット、貴方ですね? 私の姿に見惚れ私に化けていたのは?」
半ギレ気味で目の前にいるヴットに言うと、ヴットは私の顔を見て鼻で笑い、
「見惚れるわけが無いだろ? 自分の顔を鏡で見たことがあるのか?
ペチャクチャと失礼な御託を並べていたヴットの間合いに入り、私はそのヴットの右腕を斬り飛ばす。
「一応言っとくが、私の剣術は七大勇者の中である人間を除けばNo.1だ。その私が貴方のやっすい挑発に乗るわけがなかろう?」
私がそうヴットに告げると、奴は徐々に私と美しき同じ顔、体になり、完全に私に化けた。
「それが貴方のスキル「擬態」ですね? まさか自分自身と戦うことになるとは初めてです——ッ」
「遺言はそれでいいのか? 人間」
私が自分の生き写しをしたヴットに見惚れていた時、ヴットは私とほぼ同等の速さで私の間合いに入っていた。
ほう、スキル「擬態」は人にただ化けるだけでなく、身体能力も化けることが出来るのか……面白い! 本当に私と戦うことが出来るとは!
相手の刃が私の脇腹に当たる時、私は余裕を持ってヴットの剣を剣で弾き返した。
「いくら私と同じ美貌な姿と実力を持ったとしてもな? 私の心までは擬態出来ないようじゃ、私には勝てんよ?」
そう言って私は勢いよく踏み込みを入れ、一方のヴットも大地を蹴り、私達は激突した。
さすが私と言うべきか、力もスピードも同等……だが、奴には私を越えられない壁が存在する。
「騎士達よ、私には構うな! アンデッド達を殲滅しろ!」
私は棒立ちしている騎士達に命令し、ヴットと剣をジリジリと火花を散らしながら交える。
そして、私はがら空きになっていた奴の腹に回し蹴りを入れた。
フィジカルブースト。
ヴットとの距離を開けた私は、すかさず音速のような速さで、奴との距離を詰める。
例え肉体も実力もコピー出来たとしても、私が培ってきた歴戦の戦いで得た技術もスキルはコピーできん!
私は剣先を後ろへ向ける。ほとばしく燃える黒炎を剣に流し込む。勢いよく剣をヴットの左脇腹から右肩に向けて振り上げる。
勢いよく振り上げた私の刃は、守りに入ろうとしていた奴の動きを上回る。そして、私の目的通りヴットの左脇腹から右肩にかけて斬り捨てた。
胸から大量に出血する奴は、体の体勢を狂わせる。
「何故だ? 何故、実力も肉体もコピーした私が追い詰められている? 何故だ?!」
ヴットは焦りからか一人でつぶやく。焦りで体をがたつかせる奴は、体勢がうまく取れていない様子だ。
「そんな様子でよく私に勝てると思ったな? 貴様の起こした愚行、あの世で悔いるといい」
「ま、待ってく——」
彼の命乞いも聞く暇もないので、私はヴットの体を粉微塵に切り刻んだ。
「無謀な事なんですよ、2人の勇者がここにいる時点で貴方たちの負けです」
※
アンデッドを率いるリーダー格と思われる女に、一太刀を浴びせる。——が女の魔族は僕の攻撃を受ける直前で受身をとっていた。
僕の一太刀を最小限に抑えた彼女は、胸から大量に出血する。
「わ、私が斬られた? この私が……」
彼女は胸から出る血を触り、その血を僕に向けて血を飛ばす。その血が僕の右頬に付いた時、それを見た彼女は絶望した顔から勝利を確信した顔になる。
「アハハハ! 勝ったわ! 貴方、私の血を浴びたわね」
「……どういうことだ——ッ」
僕が彼女が笑う理由を聞こうとした時、突然心臓に吐き気を催す程の痛みが僕を襲う。
あまりの激痛に片膝を地面に着く
「もう貴方は私の物。だって私の血を浴びてしまったからね。教えてあげる! この私、ブーゼのスキルは私の血が付いた者を自由自在に操ることができる。もう貴方はただの奴隷よ? さぁ、自害しなさい勇者デレック・ゾディアック」
ブーゼの言う通りにしなくてはという感情が僕を襲う。そして、僕は彼女の言う通りに自分の心臓に向けて、刃を刺そうとする。
——が、僕はその数秒後、瞬足の速さで彼女の首を斬り飛ばす。
「は? ——な、なんで? 確かに私の血を浴びたはず……何でよ!」
「僕のスキルさ。僕のスキル「勇者」は僕に敵意のある者の”スキル”を打ち消す能力。だから君のそのスキルは途中で無力化されたんだろう」
「な、何よそれ、そんなの勝ってこないじゃない」
ブーゼは最後にそう言って、塵となり消えた。
そして、アンデッドを指揮していたリーダー格の魔族が死んだ事で、動いていたアンデッド達は進行をやめ、その場で塵となって消えていった。
※
デレック達がブーゼやヴットを倒す前、魔法使いリガドは、アンデッド化したアマテラスの前に立ち塞がっていた。
「あなたをデレックさん達のいる戦場まで行かせない」
「出来るものならやってみるといい、リガド」
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