11話 世界は暴走を始め、新たなステージを開く……。

「殺す、ね。できるものならやってみろ」

 

「黙れ黙れ黙れ! テメェだけは! テメェだけは絶対に許さねぇ」

 

 怒りと憎悪が入り交じる目で俺は、彼女の体をそっと静かに地に置き、剣を大きく構え、戦闘態勢に入る。

 

 一方の相手も水島ちゃんの首に刺していた剣を抜き、二刀流で戦闘態勢に入った。

 

 そんな憎たらしい奴の姿を見た俺の怒りは怒髪天にまで上り、俺はすぐさま鈍い踏み込みで地面を捲るように蹴りあげた。

 

「さっきからテメェテメェ、て俺にも名前があんだ、アマテラスて名がな?」

 

「名前なんかどうでもいい。テメェを殺せればなぁ!」

 

 風を颯爽と切りながら俺は、渾身の力を込めた一撃をアマテラスにぶつける。

 

 ——が、それに対し、奴は余裕そうな様子で二刀流でそれを受け止めて見せた。

 

 刃と刃が擦り合う音。

 

 俺はスキル「避雷針」の能力を怒りと憎しみを込め、最大限にまで高める。

 

 周りに降る巨大な雷達を俺という存在に一点に集中させ、俺の元に降らせる。

 

 体が壊れようとも、体がボロボロになろうとも、俺は雷を集め続ける。

 

「貴様が何をするのか見ててやる。テアラ様のお気に入りらしいからな?」

 

「テアラ? 誰だソイツはァ」

 

 体ギリギリの限界まで雷を溜めた俺は、アマテラスと俺の間に稲妻を走らせる。

 

 次の瞬間、俺は瞬間的な速さでアマテラスの元まで接近し、今まで出したことのないほどの力を込めた、全力の一撃を打ち込む!

 

 ——しかし、そんな攻撃を持ってしても、アマテラスを完全に消し去ることは出来なかった。

 

 アマテラスに与えたダメージは、せいぜい奴がつけていた仮面と、上の服を消し去ることが出来たぐらいだった。

 

「良い攻撃だ、それでこそテアラ様のお気に入りだ」

 

「——ッ!? テメェ」

 

 仮面が取れた奴の顔面を見ると、アマテラスとかいう野郎の顔はツギハギ顔で、あらゆる生物に対し、恐怖を植え付けるような顔だった。

 

「どうだ? 貴様も怖いだろ? 俺の顔が、なんせ俺の顔は——」

 

 奴がぺちゃくちゃ喋ろうとしたので、俺は間髪入れずにアマテラスの顔面に拳を打ち込む。

 

 アマテラスとかいう奴は物の見事にぶっ飛んだ。

 

「テメェの顔なんざ、心底どうでもいいんだ」

 

「面白いそう来るか、ならばこちらもその礼をしなくてはな!」

 

 ——ッ! 速い!

 

 まるで電光石火の如く速いスピードで迫り来る奴に、俺は剣をギュッと握り、待ち構える。

 

 ——そして、目の前にまで奴が接近した瞬間、俺は雷のような速さでアマテラスと激突する。

 

 激突する瞬間、凄まじいほどの爆発が起きた。

 

 爆風により舞った砂煙の中、俺は煙を払う為に意思ありし剣を凪る。

 

「いい太刀筋だ、だがあの女ほどではないな」

 

「テメェが水島ちゃんを語んじゃねぇ」

 

 アマテラスの言葉と同時に、奴は俺にも認識できないほどの斬撃をぶつけてくる。

 

 しかし、さすが自信作の剣だ、相手の見えない斬撃に対しても、この剣は対応してみせる。

 

 次々と攻撃をいなす俺にアマテラスは、俺の横っ腹に綺麗な回し蹴りを入れ込む。

 

 ガードが間に合わなかった俺は、崩壊した建物の中まで吹き飛ぶ。

 

「——ッ!?」

 

 俺が瓦礫から出たその時だった、既にアマテラスは俺の目の前まで接近しており、奴の閃光のような一撃が俺を襲う!

 

 ——しかし、俺を殺させまいと意思ありし剣は、剣を持っていた腕を動かし、アマテラスの攻撃を防ぐ。

 

 火花がバチバチと散る。

 

『警告、スキル「避雷針」の効果が薄まってきています。残り時間3分でスキル効果が終了します』

 

 チッ、もうそんな時間かよ!

 

 悲鳴をあげ続ける腕を奮起させ、俺はせめぎ合っていた相手の刃を押し返した。

 

 雷神の力に等しい能力をフル活用するために、俺は再び雷を自分自身に集め始める。

 

 ザーザーと豪雨が降る雨の中。

 

「さぁ! 鼓動ビートを上げろ!」

 

 辺りから爆発音が轟々と響く。

 

 俺は無数の雷を集めていく。

 

 一方のアマテラスは何かを始めようとする俺に向かって、特攻する。

 

 ——その次の瞬間、雷を溜められる限界量を突破した俺は、ビリッと稲妻を走らせ、それと同時に大地を大きく割りながら地面を蹴った。

 

 一閃の眩く輝く光の一線がアマテラスに襲いかかる!

 

 そして、限界にまで溜められた雷を放ちながら俺は、アマテラスの体を横真っ二つに切り裂く。

 

 ——が、切り裂く寸前のところで、奴は持っていた剣でガードに入っていやがった。

 

「やるじゃないか」

 

 俺の剣を受け止めていた相手の剣の刀身が崩れていく。

 

 それを見た俺は最後の力を振り絞り、相手の剣を破壊して、堰き止まっていた俺の攻撃を貫通させ、アマテラスの体を横真っ二つにした!

 

「や、やった……のか?」

 

 手応えがなかった確かにこの手で奴を切った感触はあった……でも何故だか切ったと言える感覚がなかった。

 

 宙を舞っている奴の胴体。

 

 アマテラスは卑屈そうな目でこう言った。

 

「なんていう妄想を見ていたのさ、貴様は」

 

 そう、気づいた時には、宙を舞っていたのはアマテラスではなく俺だったのだ。

 

「は?」

 

「これが私のスキル「理想現実」だ。その能力はあらゆる私の理想が叶う能力……叶うものによって代償があるがな。……じゃあな敗北者」

 

 アマテラスはそう言い残し、この戦場から去っていった。

 

 ごめん、水島ちゃん……俺、仇取れなかったよ……でもあの世なら会えるよな……。

 

 こうして俺の意識は闇へ落ちた。

 

 ※

 

「そうかガルリアスとベルゼブブは死んだのか。アマテラス、君はとんでもないことをしたようだね、そんなに私を怒らせたいのか?」

 

 豪雨の中、私はお気に入りの白髪の女の子の死体を見ながら呟いた。

 

 アマテラスのやつ、リガドを倒した後この国にいた人間全員を殺したな……気分が悪い。

 

「ごめんね、せっかく私が作り出した最高傑作なのに上手く活用できなくて……ッ?」

 

 私が死体となったリガドの体を触った時だった。

 

 微かにプログラムが生きている信号があった。

 

 まだプログラムが生きている!? 何故だ?

 

「クフッ面白いじゃないか! プログラムがまだ生きているなら君はまだ蘇られる! 持ってきておいて良かったよ、このチップを交換すれば君はまた動けるようになるよ。このチップには少しだけだけどスキル情報と魔法の情報が入ってるから活用するといい」

 

 私は彼のこめかみからチップを抜き、新しいチップを挿入した。

 

「AIにも予想できなかったことが起きるなんて! 人間とは素晴らしいものじゃないか! さて、君がまずすることは水島咲を蘇らせ、そして、カレイス王国にいる海瀬を守ることだよ、頼んだよ? リガド」

 

 私は彼にそう言い残し、雨が降る戦場を去った。

 

 ※

 

 死んだのか? ここは一体どこ——ッ!?

 

 俺が目覚めた場所、そこは東京の駅のホームだった。

 

 なんでここに? ここがあの世? いやまさか! 戻ってきたのか!?

 

 困惑しながら辺りを見渡していると、俺の目の前にある女が立っていた。

 

「スズカちゃん?」

 

「テメェまだ生きてたのかよ、潔く死んでろクズ野郎」

 

「——は?」

 

 気づいた時には俺は既に線路の方に突き飛ばされていた。

 

 な、なんで? また俺は死ぬのか?

 

「——ハッ!?」

 

 俺が次に目が覚めた場所は、アマテラスと戦ったあの戦場だった。

 

 俺はアイツに負けて死んだ筈……なんでだ?

 

 俺が体を起こすと、真っ二つになっていた体は修復されていた。

 

 クラクラと立ちくらみを起こしながらも、俺は水島ちゃんの切り離された首と腕を拾い、彼女の体に回復魔法でくっつける。

 

「おい、天の声、魂が消えた死体にまた魂を戻すことは出来るか?」

 

『対魔法結界がないので可能です。しかし、今回使用する魔法は以前使用した禁忌魔法とは違い、最上位禁忌魔法です。そして、リガド様は以前、代償なしで禁忌魔法を使ってしまったので、今回禁忌魔法を使用する際は多大な代償を負ってもらいます』

 

「彼女が蘇るならそれでいい、魔法を教えてくれるか?」

 

 俺は天の声にそう聞くと、

 

『その禁忌魔法の名はインビジブル・リスタートです。もう一度言いますがこれを使ってしまうと貴方は代償を負ってしまいます……よろしいですか?』

 

「良いそんなモノ、負う覚悟だ……インビジブル・リスタート」

 

 俺は禁忌魔法を水島ちゃんに向けて唱える。

 

 ——その時だった、暗雲たちこめていた空に一筋の光が降り注ぐ。

 

 まるで天使が天界から舞い降りる様な、そんな美しい光景だった。

 

 その光景に見惚れていた時、突然水島ちゃんの遺体の方から突風が起きた。

 

 瞬間、俺の脳内にあった記憶がどんどんと水に溶けるように消えていく、前いた世界の記憶、思い出、この世界に来て何があったのかの記憶、水島ちゃんとの思い出、その全てが消えていく。

 

 そして、俺の意識が闇へ落ちた。

 

 ※

 

「起きなさい、そんなとこで寝てると風邪ひくわよ」

 

 聞き覚えのある聞きたくてたまらなかった声。

 

 私はパッと声の方へ顔を上げる。

 

「お母さん……?」

 

 そこに居たのは、先月病気で死んだ私の母親がいた。

 

 困惑している私にお母さんは、ニコッと笑いながら言った。

 

「貴方はまだこっちに来ちゃダメ、貴方には守らなきゃいけないものがあるから」

 

「こっちに来ちゃダメってどういうこと!? 私は確かにあの時死んだはずよ!」

 

 私がどう言おうともお母さんは、ニコッとしたまま笑っている。

 

「リガドくんをあなたが守るのよ」

 

 その声と共に私の視界は真っ白になり、下から何かに掴まれ、地面に引きずり込まれるように沈んだ。

 

 ※

 

「お母さん!?」

 

 次に目が覚めた場所は、謎の白仮面の男と戦った戦場だった。

 

 さっきの出来事が起こった事もあって私の頭は、いっぱいいっぱいだった。

 

 しかし、私は確信していたリガドが禁忌の魔法を使ったことを。

 

 彼の安否が気になった私は、辺りを見渡した。すると、私の傍にまるで私を守るような体勢でリガドは気を失っていた。

 

「リガド……一緒に帰ろう疲れたでしょ」

 

 そう言って、私はリガドの体を背負い、建物が崩壊した王国を出た。

 

 ※

 

 アマテラス達がドスタルニア王国を襲撃した時と同時刻。

 

「ん? なんだアレ?」

 

 警備していた一人の男が望遠鏡でソレを見た。

 

 彼の目に映ったのは、AI軍の旗が掲げられたAIの大軍だった。

 

「た、大変だ……!」

 

 ※

 

「アレがゴミの最後の砦の国でありんすか? 小汚い国でありんすね。ゴミの巣窟と言った方がいいと思うでありんす」

 

「モナリザ様、そろそろアレを」

 

 ゴミという名が相応しい人類に向けて喋っていると、テアラが私にそう言ってきた。

 

 仕方ないわね。

 

「ハァ、魔天崩壊まてんほうかい

 

 わらわがそう唱えると、カレイス王国とやらを覆う天が赤く眩く光る。

 

 ——次の瞬間、カレイス王国そのものが木っ端微塵に、爆弾が爆発するように散り散りに爆発した。

 

 王国からは何も悲鳴も、命乞いをする声も、泣き叫ぶ声すらも聞こえない。

 

 そんな国の最後にわらわは、

 

「アハハハハハハハハ! 見よ、ゴミ共が何も言わずに死んでいくでありんすよ! テアラも笑いなさい、ゴミという力のない生き物はこうやって死んでいくでありんすよ……さぁ、進め! あのゴミ共に生き残りがあってはならん! 一人一人の爪を剥がしながら殺していくでありんすよ!」

 

 それからわらわは生き残り、いや虫の息になっているゴミを見ながら笑いながら殺していったでありんす。

 

 そして、面白いことに息のあった妊婦は「お腹にいる子供だけは!」とか言っていたでありんすねぇ、だから私は笑顔で、

 

「おいそこの貸すでありんす」

 

「へ?」

 

 部下から借りた拳銃をうけとったわらわは、笑顔で妊婦のお腹に向けて引き金を引いてやったでありんす。

 

 そしたら妊婦は我が子を失った苦しみと痛みに泣き崩れたでありんす!

 

 そんな妊婦にわらわは、笑顔で寂しくないように妊婦の髪を掴み、妊婦の額に向けて、引き金を引いた。

 

「傑作! 傑作でありんす! こうも無様に死んでいくゴミは最高でありんすねぇ!」

 

 それからもわらわは息のある人間どもを殺して回った。

 

 子供? 赤ん坊? 女? そんなの関係ないでありんす、わらわはとってゴミはゴミ、ゴミはゴミ箱でありんす。

 

 家族共々大火傷を負って逃げることが出来ない彼らには、まず見せしめに親たちの目の前で子供を殺して、絶望と苦しみを味わってる最中でわらわは笑顔でこういって殺すでありんす。

 

「すぐに会えるでありんすよ」とね!

 

 そんな愉快で楽しい遊戯をしていたら、まぁなんということ! 既に日が沈みそうではないでありんすか!

 

「これで人の気配は消えたでありんすね、人類絶滅でありんすね! アマテラスや他の七英雄からの連絡からすると、もう生き残りの人間はいないようでありんすね。……これでゆっくり眠れるでありんす。撤退!」

 

 わらわがそう言って、乗ってきていた乗り物に乗ろうとした時だった。

 

「おや? まだ生き残りがいたようでありんすね」

 

 わらわが後ろを振り向くと、そこに居たのは大火傷を負って、身体中に木の破片が刺さった、おっさんがいたでありんすよ。

 

「最後にゴミの名を聞いとくのもアリでありんすね、貴様の名は?」

 

「名? 貴様みたいな奴に名乗る名は無い」

 

「そう……それじゃあ、死ぬでありんす」

 

 わらわが魔力だけで作り出した魔力弾をおっさんに向けて放つ。

 

 身動きも取れないゴミはそれをまともに受けたでありんす! これで絶滅……——ッ!?

 

「いや名乗る名は無いと言ったが名乗っといてやる。私の名は海瀬正義うみせ まさよし。貴様を殺した名だ」

 

「絵空事は後にするでありんすね、死ぬのはお前。サモンズモンスター、光龍ファフニール、火神竜ガルゲイユ」

 

 ※

 

 奴が創世神の二体の名を唱えた時、奴の背後に召喚の魔法陣が現れる。

 

 奴の前に現れる直前に、俺のテレパシーでドスタルニア王国にいる水島とリガドには連絡した……あとは召喚獣が出る前に殺るだけだ。

 

「どうしたでありんす? そっちが動かないのであれば、こっちが動くでありんすよ!」

 

 奴がそう言って、先程より大きな魔力を込めて魔力を放とうとする。

 

 力を込めて動こうにも、体に突き刺さった建物の瓦礫のせいでろくに動けない——でも! 無惨に殺されて散っていった人々のために! 私はそんなことでくじけるわけにはいかんのだ!

 

 私は足に突き刺さった瓦礫を抜き捨て、全身全霊の力を込めた踏み込みを入れ、瞬間的速さでやつの背後に回った。

 

「——へ?」

 

 奴は背後を取られたことに動揺していた。

 

 でもそんなこと今はどうでもいい、怒りで打ち震える今の私にそんなものはなぁ‼︎

 

 腕に全神経と力をみなぎらせ、私は拳を奴の顔面に放つ!

 

 バキバキと何かが砕けるような音が鳴る。

 

 ——長が吹き飛ばされたことで、周りにいたAIが私に銃口を向ける——が、そんなことお構い無しに私はほんの2秒、2秒という短時間で私は軽く腕を横に振る。

 

 腕を振った時に生じる少しの風で、私は数百体もいるAIをバラバラに破壊した。

 

 しかし、それでもAI共は私に向けて銃を乱射する。

 

 魔法を打つ暇は無いので私は、怒りを込めながら肉弾戦で一体また一体と1秒も掛からずに一体一体始末していく。

 

 そして、怒りに身を任せたまま体を動かした結果——私は10秒も掛からずに数千体もいたAIの軍団を始末していた。

 

「少しはやるようでありんすね」

 

 遠くの瓦礫の中から、額に傷を負った長が現れる。

 

「イージス・インフェルノ・ダブルス」

 

 無詠唱で火と雷を融合させた!?

 

 奴はそう言って、おそらく火の最高位魔法と雷の最高位魔法を融合させ、放ってきた。

 

 ほとばしる煮えたぎる炎と、神の怒りの雷が辺り一体に降り注ぐ。

 

 ここまでか……——ッ!?

 

 体力を使い果たし死を覚悟した私の前に、巨大なバリアが張られ、その強大な魔法を弾いた。

 

「咲……リガドくん」

 

「海瀬……話は後だ、今はこのマヌケを殺るぞ」

 

「ゴミが何人増えようとも結果は同じく死でありんすよ!」

 

 奴がそう言った時、奴の背後にあった魔法陣から神の名を遣わす二体の龍が現れる。

 

 ※

 

 記憶を完全に失い廃人になったリガド。

 

 そんなリガドの中で何かが変化していた。

 

 天の声は自我を持ち、自動的に天の声はオートマチックモードに入っていた。

 

「水島さんはすぐに海瀬さんを連れて、離れててください」

 

「わ、分かった!」

 

 天の声は彼女に、ボロボロになっている海瀬を担がせ、遠くへ避難するよう指示した。

 

 ※

 

 今の私がモナリザに勝てる確率はせいぜい15%ほど……こうなったらアレを使うしかありませんね。

 

「あぁ、貴方もしかして、わらわの模造品でありんすね? テアラが作ったわらわの模造品て聞いてるわ……模造品ごときがわらわに勝てるわけないでありんす!」

 

「……よほど怒りやすい方なのですね、戯言を言って楽しいですか?」

 

 私が彼女の言葉に対して言い返した。すると、

 

「コロス!」

 

 モナリザの怒りに火をつけたのか、彼女は次の瞬間、既に召喚しておいた光龍ファフニールと、火神竜ガルゲイユを私に襲わせる。

 

「あなたがそう来るのであれば、サモンズモンスター。邪龍バハムート、水龍ナーガ」

 

 私はそう言って、二つの巨大な魔法陣を展開する。

 

 ——次の瞬間、私はスキル「避雷針」を使った。

 

 体中に回る閃光烈火の電流。

 

 私はそれを力へと変え、体全体にめぐらせ、次にこう唱えた。

 

「フィジカルブースト!」

 

 ——そして、私は大地を引っペがす程、足が壊れるくらいに力を込め、大地を蹴った。

 

 音速をも超えた速さで、高鳴る心臓の鼓動の中、私はモナリザの背後に回った。

 

 しかし、さすが彼女と言うべきか、モナリザは瞬時に私が背後に回ることを見抜き、私に向けて魔法を放とうとする。

 

「インフェルノ・フレアでありんす」

 

「ゼロインパクトストリーム」

 

 相手が打ってくる魔法に対し、私はその対をなす水魔法の最高位魔法を放つ。

 

 轟々と燃える炎と、高波のように荒れる水が、攻撃を打ち消し合う。

 

 相殺されていく魔法の中、私は次の攻撃を図るため、足を動かす。

 

 ——が、モナリザの元へ行こうとする私の前に、火神竜ガルゲイユが待ち構えていた。

 

 間発入れずにガルゲイユは、火魔法の最高位魔法を連発してくる。

 

 広範囲で破壊力のあるガルゲイユの魔法。

 

 そんな魔法に対し私は、最低限の被害で抑えるため、魔力を使いバリアを展開する。

 

 しかし、その超硬度のバリアをもってしてもガルゲイユの魔法の威力は凄まじく、すぐにバリアは破壊された。

 

 バリアが剥がれた私に、ガルゲイユは再び魔法を放つ。

 

「来てください、意思ありし剣よ」

 

 私がそう言うと、遠くの彼方から黒く煌めく剣がガルゲイユの炎を切り裂きながら、私の元へ来る。

 

 ——それと同時にスキル「避雷針」の力をフル活用し、瞬時に意思ありし剣を掴み、電光石火の如く私はガルゲイユの体を切り刻む。

 

 剣でガルゲイユを刻んだ後、私は次にモナリザを標的に足を動かす。

 

 轟々と燃える背景の中を私は颯爽と走る。

 

 ——その次の瞬間だった、ガルゲイユと同時に出されたファフニールが私に襲いかかる。しかもそれと同時にモナリザも豪炎の炎の中から顔を出す。

 

「さぁこの業火に燃える地の下で死ぬでありんす」

 

「死ぬのは貴方です、モナリザ」

 

 スキルで作りだしたのか、剣を持ったモナリザはファフニールと共に私に襲いかかってくる。

 

 絶対絶命の状況下の中——次の瞬間、私が呼び出しておいた邪龍バハムートと、水龍ナーガが姿を現す。

 

 水龍ナーガは瞬時に業火に燃える地を水流で消火する。

 

 一方でこちらへ襲いかかろうとしていたファフニールに、バハムートが襲いかかることでそれを阻止した。

 

 一対一の場面まで持ち込んだ私は、モナリザと正面衝突する。

 

 もしこの勝負で負ければ、人類は確実に絶滅する、ならばここは!

 

 心の中でそうつぶやきながら私は、

 

「イージス・スパーク!」

 

「何度打とうと無駄でありんすよ! 死ぬのは貴様ら人間どもでありんす! 魔力解放!」

 

 私のイージス・スパークを弾いた彼女はそう言った。

 

 ここで魔力解放!? 溜めてきた魔力を人類を根絶させるためだけに使うのか!

 

「させない!」

 

 私はモナリザが繰り出そうとする切り札に対し、取っておきの切り札で対抗する!

 

「最上位禁忌魔法を知ってるでありんすか? それは宇宙をも作り出す禁忌魔法! これをどう対処するでありんす?」

 

「サモンズモンスター!」

 

「——まさか!?」

 

「時空龍! ケツァルコアトル!」

 

 ※

 

 既に四体の神龍が顕現してる中、リガドこと天の声は最終奥義として五体目の神龍を呼び出す。

 

 創世神が五体呼び起こされた事で起きる現象……それは宇宙の起源でもあるビックバンに相当するほどの現象である。

 

 五体の神龍が揃った時、起こる現象はたった一つ。

 

 この世界の破壊、それと世界の創世であった。

 

 その事を知っていたモナリザは、すぐさま最上位禁忌魔法を放とうとした——が、禁忌魔法が放たれる直前、速すぎる時空龍の顕現にリガドこと天の声は成功した。

 

 五体の神龍が顕現した瞬間だった。

 

 神龍達は空を縦横無尽に舞い、そして、甲高い雄叫びを発した。

 

 神龍の雄叫びにこの世界を作り出していた次元は打ち震え、次元が崩壊していく。

 

 次元は1秒も経たずに崩壊した。

 

 その瞬間に起きるビックバンに相当する爆発。

 

 その爆発影響で、次元や宇宙そのものが崩壊し、再び宇宙と次元そのものが作り出される。

 

 ——そして、既に生き残っている生命やAI達は次なる世界ステージの未来へタイムスリップする事になった。

 

 ※

 

 時は次なる世界ステージが誕生して1250年後。

 

 リガドは意識を失ったまま、天空から降下する。

 

 そして、まるで隕石が地へ衝突したように少し大きなクレーターを作り、リガドは地に落ちた。

 

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