6話 グレイカ王国奪還作戦

「は? もうアイツ行ったの?! グレイカ王国奪還に?!」

 

 私はこの国の門番をしている奴にそう聞くと、ソイツは「張り切った様子で行きましたよ」と言った。

 

 アイツ馬鹿なのか? なにも一人だけで行けなんて言ってねぇのに……仕方ない。

 

「私もそのグレイカ王国に行く、海瀬が私を探しに来たら『グレイカ王国に行った』て言っておいてくれ」

 

「わ、分かりました……で、でも2人だけで行かれるのですか?」

 

 私がいざ行こうとした時、一人の女の門番がこう言った。

 

「……グレイカ王国から逃げてきた人達は言ってました、とんでもない化け物が襲ってきたって。あのエルゼ・ガーディアンの群れを一撃で葬った騎士団をもってしても指一本もその化け物に敵わなかったて……」

 

 あの海瀬野郎! この事知っててアイツを送り出したのか!? 小さな国だから簡単とか言っといてとんでもない所に行かせてんじゃねぇか! このままだとアイツが死ぬ、あの騎士団が敵わなかったなら、私でもその化け物に勝てる自信がない! ここからグレイカ王国はそこまで長い距離じゃない、車を用意してる時間もないし、なんなら車より私の方が速い、間に合ってくれ!

 

 咄嗟にそう判断した私は、刀を入れた鞘を持ち、地面がめくれる程に足に力を入れ、そこから突風を起こすほどの瞬発力で猛スピードで出発した。

 

 ※

 

 レジスタンスの本拠地からグレイカ王国に出発して、約1時間が経った頃だろう、ようやくだようやく目的地にたどり着いた! 

 

 そう俺の目の前にはグレイカ王国と思われる国がそこにあったのだ。そして、グレイカ王国の門の前には何十体ものの人間に化けたAIロボットが立っている。

 

「スキル、クリエイト」

 

『何を創造しますか?』

 

 矢が沢山飛ぶような弓を連想しろ、強度を鉄のように強く、威力は鉄砲のように発射速度が速い矢をイメージ、そして、赤ん坊の腕力でも簡単に引けるような弓……出来たぞ。

 

『了解しました、想像したものを創り出します』

 

 天の声がそう言うと、俺の手からアニメや漫画などで見るような弓と矢が創造される。

 

 さてここからは自由な発想でまずあの門番を潰すとしようか。

 

 まずは初めに3本の矢を軽く引く。

 

 水島ちゃんと初めて会って戦った時のことを思い出せ……あの子刀に何かを纏わせてたな……魔力? そうか魔力か! それなら引いている矢に魔力を込めろ、焼きたての食パンにバターを塗るような感覚で、優しく優しく矢に魔力を纏わせろ。

 

「準備万端!」

 

 引いていた魔力を纏わせた矢を放つ! 

 

 放たれた矢は門番達がいる方向へ、一直線で飛んでいく。そして、飛んだ矢一本一本は、棒立ちしている3体のAIの脳天を射抜いた。

 

「しゃあ! ヒットヒット!」

 

 俺が一人喜んでいると、残っていた数十体はこちらへギロリ視線を向ける。その次の瞬間、凄まじい速さでこちらへ猛突進してくる戦闘モードになったAIロボット達。

 

 数は甘く見積っても4~50……魔力を矢に纏わせることが出来るんなら魔法はどうだ? 試してみるか。

 

 さっきと同じでバターを塗るような感覚で矢に魔力を纏わせて4本の矢を引く、そして、その魔力を爆発させるような感じで放ちたい魔法を頭の中で浮かべる。

 

「インフェルノ・フレア」

 

 俺はそう魔法を唱えたと同時に矢を放った。放たれた矢達は煉獄の炎をほとばしりながら、猛突進してくるAIロボット集団の元に着弾した。その瞬間、鼓膜が破けそうな程の爆発音と爆風が俺に襲ってくる。

 

 だが、こちらへ迫ってきたAIロボット達は、インフェルノ・フレアによる爆発と、その爆発によって生じる炎で焼き払われた。

 

「よし、門の前が焼け野原になったけど……まぁいっか!」

 

 門番たちがいなくなったのを確認した俺は、敵にバレないようにコソッと国の中へ入ろうとした時、さっきの爆発で危険を察知されたのか、国中から警報音が聞こえた。

 

 そして、俺は急いで国の中へ入った。

 

「やっぱすげぇなー、AIの町っちゅうやつはよぉ」

 

 俺が目にした門の先にあった光景。それは俺がはじめてこの世界に来た時に見た、近未来の建物や空飛ぶ車があった。

 

「これを壊すのは少し気が引けるなぁー……なぁんて! 全部壊しちゃおー!」

 

 アリがせっせと物を運んでいる行列を崩したくなるような、潰したくなるような感覚と似たものがあった。

 

 あ、でも焼け野原にはしちゃいけないのか……でも一人だけじゃ効率悪いからなぁー、そうだ!

 

「イージス・スパーク」

 

 そう唱えると、晴天だった空はあっという間に曇り空になり、無数の雷がAI達に降り注ぐ。

 

 おい、今さっきのでこの国に居るAIはどれだけ殺れた?

 

『8割ほどです』

 

「そうか、なら! スキル クリエイト!」

 

 想像しろ! どんな硬い物質に叩かれても折れない決して折れない刃を! 切れ味はトマトの薄皮を綺麗に切るほどの切れ味、空気のように軽くて、意志を持った一生使っていける剣を!

 

 完璧な想像が出来た俺の手から、暗黒に煌めく剣が入った鞘が生まれる。

 

 これが俺のマイアイテム! 

 

 一人自分の生み出した剣に見惚れていると、こちらの存在に気づいたのか、そこら辺を歩いていたAIロボット達や武装したAI共が、こちらへ向かってくる。

 

 剣術はEだが、この剣には普通の剣には無いものがある! 意志が! この剣には敵意を感知した相手を攻撃するようプログラムしておいた、だから!

 

 武器を構えたその瞬間、まるで剣に体が操られるように俺は、襲いかかってくるAIロボ達の間合いに入った。

 

 そして、剣に魔力を纏わせ、まず先に右から迫ってくるロボット達の銃撃をボコボコとバリアで受けながら、一瞬の隙が生まれたロボ一体一体の頭を、まるでホームランを打つような感覚で切り飛ばしていく。

 

「愉快愉快! これほどまでに愉快にストレス発散できるモノはないぜ!」

 

 じゃんじゃんとロボットを倒していく俺の頭に、ある発想が思い浮かんだ。

 

 うん? 待てよ? 矢に魔法を組み込むことが出来たんなら、この剣に魔法を組み込めるよなぁ? そうしたらもっと面白くなんじゃね?! イメージだ、イメージ、大きなの中に大量の魔力をこぼれないよう注ぎ込むようなイメージ!

 

「インフェルノ・フレア!」

 

 膨大な魔力を流しながら俺は魔法を唱え、思いっきり剣を横に薙ぎ払った。すると、が小さすぎたのか、剣先から膨大な魔力が噴き出し、その暴走した魔力は、蒼炎となり巨大な爆発を起こした。

 

 灰すら残らなかったAIロボット達。だが、仕留めきれなかった残党共が俺の元へ接近してくる。そして、なんと空からは戦闘機まで飛んできた。

 

「キリがないな、しゃあないここは神様の力を借りさせてもらおうか! スキル サモンズモンスター、召喚! 邪龍バハムート。1分で終わらせてね」

 

『了解しました』

 

 天の声にそう頼むと、暗雲立ち込める空がゴロゴロと鳴き始める。そして、周りにあった雲たちが魔法陣を作り出す。

 

 それを見た俺は暗く輝く剣を構える。

 

「さて1分だ、1分だけ構ってやる」

 

 迫り来るAIロボット達、俺はロボ共の中心で、

 

「殺してやる。戦闘モードに移行する!」

 

『了解しました、これより戦闘モードに移行します』

 

 天の声がそう言うと、俺の体は変形し、血のように赤い装甲を纏った戦闘モードに入った。

 

 次々と向かってくるAIロボットに対し、俺は意志を持った剣に身を任せる。すると、まるで一流の剣士にでもなったような感覚が俺を襲う。

 

 相手の攻撃は勝手に避けてくれるし、敵に隙が生まれれば、剣は自動的にその相手を切り刻んでくれる。

 

 そんな楽しい攻防の最中、空からヤツの鳴き声が轟く。俺はヤツが来たあまりの嬉しさに空へ視線を上げる。

 

 ポタポタと雨が降る中、現れたのは体中に人の頭蓋骨や動物の骨を纏わせ、邪悪なオーラを醸し出しているドラゴンだった。光を与える光龍ファフニールとは打って変わって、邪龍バハムートにはそんなものは存在しなく、その代わりに存在するのはあらゆる生物、無生物に与える絶望だけだった。

 

 次の瞬間だった、バハムートは重みのある重低音のある鳴き声を発する。すると、それを聞いたAIロボット共は一斉に爆発し始めた。

 

 もちろん空を飛んでいた戦闘機も機能停止して、地面に不時着し、綺麗な花火の如く爆発した。

 

 一気にAIロボット共を殲滅できた俺は、任務が完遂したことを確認し、邪龍バハムートを引っ込ませ、その場から立ち去る。

 

 ——ッ!?

 

 ——その時だった、見えも感知もできなかった。俺が気づいた時にはもう俺の右腕は、何者かによって切り飛ばされていた。

 

 右腕で持っていた剣が、勢い良く地面に突き刺さる。

 

「……俺ぇ腕の治し方とか知らねぇんだけどよぉ、どうしてくれんだよォ! ……そうだテメェを再起不能にして魔法の事とか聞いてやらぁ!」

 

 俺の視線の先にいたのは、めちゃくちゃムカつく顔をした、中世の貴族のような格好をした男だった。

 

「君かい? 我が同士である槍使いのヴェルゴを倒したのは?」

 

「ヴェルゴォ? 誰だァ? 槍使い槍使い……あぁアイツなら俺がムカついたから殺しといたぞ?」

 

「……そうか、なら貴様はバラバラにして殺す! 我が名はモナリザ様から創られし、七英雄の一人! 鎌使いのゼッドだ——ッ!?」

 

「あっそ、そんな自己紹介とかどうでもいいから死んでろ」

 

 ソイツの自己紹介なんて聞く気も起こらない俺は、棒立ちしているソイツが大切にしてそうな顔面を思いっきし殴ってやった。

 

 すると、相手は顔面を地面で削りながら、吹っ飛んでった。

 

「やっぱAIロボットは硬ぇな、拳が痛てぇ」

 

 ヒシヒシと痛む手をぶらぶらさせ言うと、土煙の中から赤く光る目が見えた。

 

 そして、煙から出てきたのは戦闘モードになって俺と同様にロボット姿になったゼッドだった。

 

「よ、よくも! 我のご尊顔を! ぐちゃぐちゃにしてくれたなァァァ!」

 

「キッショ、俺ナルシストとか嫌いなんだよねぇー。——来いバハムート」

 

 別空間に引っ込ませていたバハムートを再び呼び出した俺は、それと同時に意志を持った剣を左手で呼び寄せ、剣をグッと力を込めて握る。

 

「我のご尊顔を傷つけたからには、ただでは死ぬことは出来んぞ!」

 

 ゼッドとかいう奴はそう言うと、どこからともなく鎌を取り出し、それを構え、臨戦態勢に入りやがった。

 

 ※

 

 テアラ様からの指示があってここに来たが、まさか支配しておいたグレイカ王国がこんなことになっているとは……だが、ここは七英雄の一人! このゼッドがあの化物を殺す!

 

 片手で拳銃を回すように鎌を回しながら、我は武器を構えた。

 

 相手は2体……1体はこの世界の創造神とも呼ばれる邪龍バハムート、そしてもう1体はそれを呼び出した我の顔面を殴った不届き者、簡単だバハムートの「絶望」のオーラを避けながら行けば良い話。

 

 静寂の空気が流れ、一触即発の状態になった。

 

 そして、戦いの合図を出すかのように、バハムートが咆哮を上げた。それと同時に我は軽く足に力を入れ、地面を叩き割りながら空高く飛び上がり、標的の間合いに入った!

 

 だが、そんな我を視界に入れたバハムートが、我に向けて複数の闇魔法を放ってくる。

 

 放たれたのは恐らく最高位の魔法達! 楽しくなってきたじゃありませんか! 当たれば即死!

 

 こちらへ放たれたビーム状の魔法に対し我は鎌を使い、空中でヤツとの距離を詰めながら、バハムートが打ってくる魔法を野菜を微塵切りにするような感覚で斬り刻んで行く。

 

 楽しいじゃないか! 流石神と謳われるドラゴン——ッ!?

 

 我がバハムートに気を取られていた時、既にヤツは我の後ろに潜んでいた! コイツ! 殺気が読めない! 我はすぐさま後ろへ振り返り守りの体制に入る。

 

 が、それを許さないのが邪龍バハムート、邪龍は口を大きく開き、そこからまた最高位の呪文を打とうとする。

 

 この絶体絶命的な状況! 仕方ありませんね! スキル! 避雷針を見せるしかありませんか!

 

 両側から来る攻撃に対し、我は全身にビリッという電流を走らせる。その次の瞬間、我は自分自身に雷を落とした。

 

 全身が痺れ、鼓膜が揺れるほどの落雷の音ともに、我は光のような速さで、剣を振りおろそうとしているヤツの腹に蹴りを入れる。

 

 猛スピードで蹴ったことでヤツの体は、王国の城壁に埋め込まれるように吹っ飛んだ。

 

 そして、邪龍の放つ魔法を避けた我は、身動きの取れない相手の元まで光の如く速いスピードで移動すると、持っていた鎌で渾身の一撃をぶつける!

 

 ——がしかし、それに対応するようにヤツは剣を盾にして、我の一撃を受け止めてきたのだ。

 

「潔く死ね、そしたら苦しみもない、さぁ! ヴェルゴの仇だァ!」

 

 ヂリヂリと刃が軋む音が鳴る中、再び我が全神経を両手に集中させ、もう一度手加減なしの一撃をぶつけようとした時だった。

 

「調子に……乗んなよォ」

 

「——ッ!?」

 

「インフェルノ・フレア!」

 

 両腕を上げ、がら空きになっしまっている我の体に向けて、ヤツはそう魔法を唱えた。

 

 ヤツの剣先から煮え滾るほどの魔力を感知した。この体勢と位置! 無傷じゃ避けられない! いや! ヤツが魔法を打つ前に殺す! 簡単なことだ!

 

「ウオォォォォ!」

 

 相手に向けて振り下ろす刃、しかし、それに対抗するようにヤツは暴走した魔法を唱える。

 

 しかしこの時の我は気づいていなかった……コイツと戦っていて気づいた唯一の欠点、それは邪龍バハムートの存在を完全に忘れていたこと。

 

 目の前の敵に無我夢中になっていたのが裏目に出たのだ。

 

 気づいた時にはもう時すでに遅し、邪龍は我とコイツ目掛けて、詠唱なしの最高位魔法を放つ。

 

 そして、邪龍バハムートが放った魔法は、広範囲にわたって大地を根こそぎ削り取るほどの威力の魔法だった。

 

 避けることも受け身もとる事も出来ない! 負けたな……。

 

 ※

 

 眩い紫色の光が俺の視界を覆って数分後、気がつけば召喚していた邪龍バハムートは消えており、俺の体を見てみるが腕以外重症といえる傷は無い……俺と戦っていたゼッドは跡形もなく消えていた。

 

 おそらくヤツの体が俺の盾となり、重症を負うことはなかったのだろう。

 

「七英雄、手強かったな……つっかれたァ、まぁとにかく任務は完遂した! これで水島ちゃんと一緒に任務受けられるぞぉ! やったァァァ!」

 

 魔力を使いすぎた……やばいめちゃくちゃ眠い……寝るか。

 

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