4話 復活とパートナー

 また半年……この真っ暗な視界世界がまた半年間続くのか……まぁ可愛い女の子を助けることが出来ただけマシか、そうだ! 次に目が覚めた時は助けた恩としてヤラせてもらおう!

 

 俺がそういう期待を抱いていた時だった。真っ暗な視界世界の中で、天の声が俺にこう伝えてきた。

 

『第三者からの魔力補給が行われました。第三者からの魔力を受け付けますか?』

 

 誰かが俺に魔力を補給してる? どういう事だ? まぁ半年間もこの真っ暗なままじゃ嫌だから、受け付けるに決まってる。

 

『第三者からの魔力補給を受け付けます。20%、50%、80%、100%、120%、これより、30分後に起動します。しばらくお待ちください』

 

 ※

 

 あれ……私、死んだのか……まぁ最後にありのままの自分を出せただけ結果オーライか……海瀬ゴメン、お母さんごめんね、後先考えずに行動した結果がこうなるなんてね。

 

 何もかも終わったと思った。今まで私を育ててくれた仲間達に、今頃懺悔したところで失った命は戻ってこない、あの時、逃げておけば良かったのにな……。悔いてももう遅い、私は死んだのだから。

 

 そして、私の真っ暗だった視界に太陽のように眩い光が、差し込んできた。これが天国か……お母さん待っててね、今そっちに行くから。

 

 私がいざ眩い光の空へ飛び立とうとした時、地面から無数の手が強靭な力で私を掴み、地面の中へ引きずり込む。

 

「——ハッ!? ここは……私は死んだ筈……」

 

 目が覚めるとそこは、天国でも地獄でもなく、さっきまであのAIと戦っていた戦場だった。

 

 生きてる? どうして? 私は確かにあの化け物に焼き殺された筈……まさか!?

 

 まさかと思い私は咄嗟に後ろへ振り向くと、そこに居たのは私に何かを施そうとしたのか、手を私にかざしているAIがいた。

 

「まさか、禁忌の死者蘇生魔法を!? どうして?!」

 

 私は機能が停止し、ただ立ち尽くしているAIにそう問いかけた。だが、そのAIは何も私の疑問に答えやしてくれない。

 

 クソ……私が女だから? 私が弱ったからその情けで私を蘇らせたの? このこのこのこの!

 

「クソオンボロ機械が!」

 

 私は思いっきり棒立ちしているAIロボの足に蹴りを入れる。すると、AIは何もすることはなく野原にドスッと倒れた。

 

 それを見た私はコイツに舐められているような、煽られているような気がした。

 

「おい! 私を生き返らせて何がしたいんだよ! 何とか言ってみろ! おい!」

 

 バンバンと恨みを込めた蹴りを何度何度も繰り返し入れた。チッ、コイツから私を蘇らせた理由が聞きてぇ、どうすればコイツは起動する!? ……海瀬の所に持っていくか、そうすれば何か分かるかもしれない。

 

 そう判断した私は倒れたAIロボを担ぎ、愛車のジン(愛車の名前)の荷台に乗せ、調査書を書きあげ、本拠地に帰る。

 

 ※

 

「ただいまー、今戻った」

 

 私は本拠地の海瀬のいるテントを開けて言った。すると、会議中だったのか海瀬以外にも他の人間達がいた。

 

「み、水島さ、ん?」

 

 だが少し彼らの様子がおかしい、頬を赤らめて、まるで人の裸を見て顔を赤くしているような……あ、そうだった私上裸だったわ。

 

「おいテメェら、私の上裸は私より強い奴にしか見せねぇて決めてんだ。今すぐ目を閉じろ抉られたくないやつはな」

 

 私が鋭い眼光を効かせた目で奴らを睨むと、情けないことに彼らはすぐさま目を閉じやがった。一方の海瀬は「はぁ」とため息を着くなり、私に服を投げた。その服に関しては正直私の好みじゃない男物の服だが、ここは着るしかない。

 

「どうだった? ジャマンカ王国の調査は」

 

 上裸だった私は服を着て、海瀬にジャマンカ王国が消滅していたこと、建物やAIの痕跡がなかったことを伝え、書き記した調査書を机に置いた。

 

「あと海瀬、コイツを見てもらいたんだよ」

 

 私は言って、今回のクエスト調査で大目玉のモノを愛車から持ち出し、テーブルに向けて軽々と投げてやった。

 

 しかし相当な重さだったのか、テーブルはバキバキと音を出し、綺麗に割れた。

 

「あ、スマン」

 

 土煙が舞う中、周りからは「何をやってるんだ!?」と言われるが、海瀬だけはいつものように冷静な雰囲気であった。

 

「コレは? AIロボットか? 何でこれをココに? 位置情報を送るシステムがあるかもしれないのに。あとなんでお前髪が白くなってる? 染めたのか?」

 

「そんなん知らねぇよ、髪については気づいたら白になってた。あとそのロボット自我があったんだ、私の胸を揉ませろとかキモイこと言ってたし。あとなんかカッコイイから持ってきた」

 

 私がそう言うと、周りにいた仲間達から色々と「何やってんだ」とか「何てもの持ってきてんだ」とか言ってきやがった。私より格下のくせにムカつく奴らだなぁー、ここは一つビビらせないとな。

 

「私よりカスが私に文句言うんじゃねぇよ! こちとらコイツと戦って負けてきたんだ。こっちが落ち込んでるところに文句ばっか言いやがって調子乗んじゃねぇよ!」

 

 怒髪天になった私が怒鳴ると、海瀬以外のヤツらは驚いた顔をしていた。まぁそりゃ驚くよな、フィジカルの天才の私が戦いのスペシャリストの私が負けたんだ。

 

「嘘だろ、お前が負けたのか? それは本当なのか? じゃ、じゃあなんでお前は生きてるんだ? だって、AIに負けたとしたら殺されるか、AIにされるかの二択……お前まさか!」

 

 仲間の一人が怯えながら言うと、他の仲間たちはソイツが言いたいことを察したのか、私に向けて銃を向ける。ここは面白ぇ、からかってやろうか!

 

「おうおう、とうとう気づいちまったか! そう! 私はAIにされたんだよ! さぁかかってこい! テメェらのチンコと金玉引きちぎって、そのあとに体の節々引き裂いてやるからよ!」

 

「おい君たち落ち着け!」

 

 海瀬がそう止めに入るが、私の一流の演技を見た仲間たちは、冷や汗をかいた状態で、私に向けて銃の引き金を引く!

 

 射出された銃弾が、その距離約1メートルからの近距離で、四方八方から向かってくる。これだ! ヤツと戦っていた時のあの感覚を思い出せ! その瞬間、あの時と同じくビリッと静電気に当たったような感覚が四方八方からなった。

 

 そして、私はその四方八方から来る銃弾一発一発を、スロモーションのような感覚の中で私は、かすりもせずに余裕で避けてみせた。

 

「な、なんだと……銃弾が当たらなかった!?」

 

「おい、落ち着けと言ってるんだ、君たち」

 

 仲間たちが私の動きに驚いている中、海瀬だけは一人冷静でいた。流石私の師匠だw。

 

「咲……お前まさか、死んだのか?」

 

 海瀬だけ気づいていたな。冷静で表情を崩さない彼に私はコクッと頷いた。すると、周りにいた仲間達は笑えることに、開いた口が塞がらなくなっていたw。

 

「聞いたことがある、死者蘇生による副作用で髪が白くなること、そして、異常に五感が……いや全ての感覚が鋭くなることを。つまり咲、お前は一度このAIに殺され、どういった訳でどういった方法かわからないが、このAIに蘇生されたんだな」

 

 海瀬は私に100点いや、120満点の回答を私に言った。そんな問題を解いてくれた彼に私は笑みを浮かべながら、拍手した。

 

「正解〜。海瀬の答えがあってマース。逆に他の人達は不正解! こんな簡単な問題に解けなかった人はおつむが小さいですねぇ〜」

 

 私は少々煽り気味で言った、すると、周りから「調子に乗りやがって」などなどの私に対する文句が小声で聞こえてきます! そんな彼らには睨みつけることが最適です。

 

 そんなことを思いながら仲間達に睨みを飛ばしていると、海瀬は咳払いをして言った。

 

「んで、このAIロボを持ってきたのには何か意味があるんだろ?」

 

「おぉ! よくわかったね〜! 海瀬! 正解! 単刀直入に言うけど、このAIを直して、故障しちゃったみたいだしさ!」

 

 私は少しおちゃらけた感じで言ってあげた、すると、仲間達からは大バッシング! いやぁ〜酷い人達だねぇ! 私の命の恩人なのに! でも海瀬だけは考えながら、地面に置かれたAIを触り、こう言った。

 

「なぁ咲、コイツ……故障してねぇぞ」

 

「は? どいうこと?」

 

「特に外傷もねぇ……このAIは推測だが魔力を動力に動いていると思う。普通のとは少し違う見た目をしているし、何よりこの外見に近いAIと言ったら「モナリザ」が創り出した「七英雄しちえいゆう」の機体に似ている。もしその「七英雄」をモデルにして作られたとしたら、この機体には魔力が必要じゃないのか?」

 

「魔力切れ、てこと?」

 

「そうなるな、咲がこのAIを助けたいなら私も協力する」

 

「お、おい! アンタらちょっと待ってくれ!」

 

「「?」」

 

 いざこの機体に魔力を注ぎ込もうとした時、一人の仲間がそれを止めに入ってきやがった。そんな仲間の対応に不機嫌になる私、しかし、海瀬は「どうした?」と仲間に聞いた。

 

「もしかしてアンタら、その機体を起動させようとしてるのか?」

 

「そうだけど、なんか文句あんのかよ」

 

「そりゃあ文句はあるだろ! AIロボットだぞ!? もしかしたら起動させたら俺達を殺しにくるかもしれねぇ! しかもこの中にはAIに家族や友人を殺された奴だっている! そんな安全と確信できねぇAIロボットを起動させるなんて俺は賛成できねぇ!」

 

 なんとウザイことに一人の仲間が言うと、その周りにいた仲間もそれに賛成するように私達に文句を言ってきやがる。何様なんだよ、私の命の恩人なんだぞ?

 

 徐々にイライラが溜まり私は、地に思いっきり足を叩きつけ、私より弱い者を見下す目でこう言ってやった。

 

「黙れよ、ゴミ共。んなもんコイツが暴れだしたら私がコイツをすぐさま殺す。私はこのAIの動きを見てきた、だから分かる今の私ならコイツを簡単に殺せる。だからいきしゃあしゃあと文句ばっか言ってんじゃねぇよ雑魚ども」

 

 私が言うと、黙ると思っていた仲間たちは逆にもっと私達に文句を言い出す。こいつら殺しちまおうか?

 

「水島さん! アンタ殺すとか言っておきながら、逆にそいつに殺されてるなら信憑性皆無ですよ!?」

 

「そうだそうだ!」

 

 無限に出てくる文句を並べる輩、そんな輩に「少しは静かにしていろ!」と海瀬が大声を上げた。

 

「そんなに沢山の文句だけを言って、自分たちは何も解決策を出さない奴をこのレジスタンスに入れたつもりは無いぞ! たしかに君たちの言い分も分かる。家族や友人をAIに殺された人もいる。でもその悔しさを今AIではなく人間同士でぶつけ合って意味があると思うか? この世界には一秒でも早く人類の未来、生活を取り戻したいという人々が沢山いる! いま力ある我々がそんなことをしていて良いのか!?」

 

 海瀬の言葉に皆誰もが口を閉ざす。私もそうだった。そして、一人の仲間がまた口を開く。

 

「で、でもよ! このAIがもし俺達を殺しにきたら……」

 

「そうだなもしかしたらコイツが起動したら我々を殺しにくるかもしれない。もしこの場が恐ろしく感じた人は逃げればいい「逃げる」が正解の時だってある、だがその逆も然り「挑戦」が正解の時だってある。この世の中分からないことばかりで選択の数々、どちらか選びなさい! ここに残るのか! 逃げるのか! 30秒やる逃げる者は逃げなさい! ……安心しなさい逃げても私と彼女は恨みはしない」

 

 海瀬は高らかとそう言うと、仲間達に逃げる時間を上げた。どうせ誰もいなくなると思っていただが、だがその場から逃げる者は誰もいなかった。

 

「それが君達の選択なんだな」

 

 海瀬はニコッと安心したような顔で笑うと、ゆっくりとAIロボットの頭に手をかざし、魔力を注ぎ始める。

 

 ※

 

『第三者からの魔力補給が行われました。第三者からの魔力を受け付けますか?』

 

 受け付けるに決まってる。

 

『第三者からの魔力補給を受け付けます。20%、50%、80%、100%、120%、これより、30分後に起動します。しばらくお待ちください』

 

 天の声が聞こえたその数分後、真っ暗だった視界に一筋の光が入ってきた。そして、一筋だった光が全体に広がっていき、俺は目を覚ました。

 

「ここは……」

 

「お、起きたぞ」

 

 俺が辺りを見渡すとそこは、あの女の子と戦っていた野原ではなく、どこかのテントの中だった。そして、周りには数人の人が俺を取り囲んでいた。

 

 その時だった、ボーッと座っていると、後ろから俺の背中を誰かが思いっきり蹴りやがった。

 

「誰だよ! 俺の背中蹴ったやつ!」

 

 俺がそう声を上げて後ろに振り向くと、周りにいた人の中に一輪の薔薇のような人を見つけた。そうその子はさっき俺と戦っていた女の子だった。

 

「何ボーッとしてんだよ。んま、まず先に、おい何で私を生き返らせた。私が可愛くて美しくて情が湧いたから生き返らせたのか?」

 

「——そりゃ、可愛いからに決まってるからでしょ、あとヤリたかったし、俺好みの人間殺すとか後味悪いし」

 

 俺が素直になんの偽りもなく言うと、無表情だった彼女はプッと言って笑いだした。あぁ、笑ってる顔も俺の好みだァ! クシャクシャになった顔も美しい!

 

「気に入った! アンタ私のパートナーになりなさい! 拒否権はなし! 良いね?」

 

「ヤレるんならーなってやるよ! パートナーてやつに!」

 

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