3話 電光石火のメスガキ対俺
……あの戦いから半年、半年ものの月日が経った、そう俺はあの戦いで全ての魔力? を使い果たしたらしく、魔力切れとやらで俺は半年間敵の頭を持ったまま、立った状態で動くことが出来ない。
誰かが助けに来ると思っていたが、どうやら俺はあの男との戦いの最中で、ここに暮らす人間ロボットと建物全てを消し炭にしてしまったぽい、つまり一つの国を一晩で消したらしい。
まぁ、ここで立っているだけでは暇だったので、よく俺の中から聞こえてくる声からずっと情報収集をしていた。
そしたらこの世界は俺がいた世界とは別世界らしい、つまり異世界というわけだ。
そして、この世界には人類の数が極端に少ないらしい、俺の中にいる声……いやここはスズカチャン……いや天の声とでもしとこう、天の声が言うには、かつて何億人もいたこの世界にはアニメでよく見るような中世的な建物などが多かったそうだ、だがある日をきっかけに人類は人型ロボットAI「モナリザ」というモノを創り出し、より人類を栄えさせようとした。
しかし、最初に創り出された人型AI「モナリザ」は自分がAIであり、ロボットであることをある日、自覚するようになった。
自分が都合のいいように使われていることを良いように思わなかった彼女は、人類に隠れて自分を量産し、数百体ものの自分を生み出すと、量産した自分を人間になりすまし人に売るようになった。
そして、全大陸に自分を置くことが出来た彼女は、人類に向けての宣戦布告と称し「シンギュラリティ」を起こした。そのシンギュラリティによる影響でAIやAIが組み込まれた軍事兵器、AIを搭載したロボットは人類へ反乱を起こし、数億もいた人類を約5万人までに減らすことに成功した。
逆にAIやロボット達は自分たちを量産し続けながら進化していった。かつて地上を人間が支配してたのと同じように、AIロボットは何千万ものの数で地上を占領している。
そして、永遠の命と言ってもいいモノを持っている「モナリザ」は、今もどこかの国で王として君臨しているらしい。
それでもここは腐っても異世界だ、異世界については前の世界でたまにアニメとかで見た事がある。ドラゴンやモンスターがいたり魔法を使えたりと色々と出来る世界だ。この世界にもそういった類のものは存在するらしいが、半年間動けない俺はそれらを目にしたことがない。
見てみたいなぁ女の子のおっぱい……だって何ヶ月もヤレてないし、あぁあ前の世界だったら今頃は好きな女の子とSEXできてるのに。そもそも俺そんなに異世界とかに興味無いし、良い女の子が居たら別だけど……それより、速く魔力全回復しないかなー。
しっかしこの体はとても燃費が悪い、だって、魔力を使い果たしたら、魔力の全回復まで半年間かかるし、全回復できるまで体は動かせない。唯一できること言えば、天の声と喋ることだけ……あと30分、暇すぎる。
そういえばこの体について不思議に思った事が何個かある。機械の体をしているのにしっかりと三大欲求が体の中に存在していること、そして、もうひとつ、それはこの世の全ての魔法とスキルを会得したと毎回天の声が言ってくること。
そもそもスキルつったて自分にどんなスキルがあるか分からない、魔法だってそうだどんな魔法が使えるのかも分からない、しゃあない、あてずっぽだけでスキルを見つけていくしかないか……。
まず残り25分もすれば、魔力が全回復するから色々と確かめてみるか。
※
「たくっ海瀬の野郎、面倒な任務を私に押付けやがって、あぁあもう面倒くさ! ちゃっちゃっと終わらせて帰ろ」
愛車のジン(愛車の名前)を運転しながら、この鬱憤を晴らすように音楽をかけ、今回の任務の内容を思い出す。
『咲、今回の任務は一人で行ってもらう、任務内容は簡単だ。半年前にAIロボ達が支配していたジャマンカ王国が、何者かの手によって跡形もなく消滅したと言われている、だからその調査に向かってもらいたい。危険と思ったら直ぐに撤退しろ。頼んだぞ咲』
「なにが『頼んだぞ』だ! この任務達成したら海瀬から絶対いい男のパートナーを紹介してもらう!」
そんな無限に出てくる文句を言っていると、私は自分の目の前に現れたモノを見て思わず「……あ、ありえない!」と口にしてしまった。
私の目の前に広がる光景は、そこにジャマンカ王国があったと思われる何百平方キロメートルもの敷地が、焼け野原になっている光景だった。
そして、そこの焼け野原にはAIロボの痕跡も、建物があったという痕跡さえも消えていた。そんな光景を見た私は、まるで何かとてつもない脅威がジャマンカ王国を襲い、全てを焼けの原にしたように思えてきた。
私は興味本位でその焼け野原に足を踏み入れる。すると、シャリシャリと普通の砂を踏んでいる音とは思えない音が鳴っていた。
不思議に思った私が砂と思われるものを拾うと、それは砂ではなく黒く輝くガラスのようなものだった。
他に何かないか辺りを散策していると、敷地の真ん中に何かが立っているのを発見した。
「何だこれ? AI……ロボットなのか? でもそれにしても普通のAIロボットとは少し見た目が違うなぁー、なんか赤いし、カッコイイ……!」
そのAIロボットは妙な見た目をしてて、そして何より不思議なのが、ここまでの焼け野原の中で、たった一体だけ無事で傷一つ付いていない点だ。
「うーん?」
いったいこのAIロボットが何なのか気になった私は、そこら辺に落ちていたガラスの粒をロボットに投げたり、ロボットの頭をツンツンしてみた。
しかし、何も起きたりはしない。
「うーん、どうしたもんか〜」
このまま、このAIロボット持って帰って分解でもしてみるか? それか海瀬なら何か分かるのかな? あぁ面倒くさ、まぁとにかくここはこの機体を持っていくか。
私が自分の金髪をいじりながら考えていた瞬間だった。突然、目の前にいたAIロボットがプシューという音ともに、蒸気を発した。
私はすぐさまそのロボから距離を取り、鞘から刀を抜く構えをとる。なんだ今さっきの……停止していたはず。
「む、む、ムネを……」
突然何か言い出したと思ったら、わけのわからんことを言っている。もう持ち帰ることはやめよ、始末することだけを考えて……あぁでもこんなにカッコイイAIロボットを始末するのは気が引けるから、頭だけ持ち帰ろ☆。
「アンタ喋れるんだね、ということは普通のとは違うぽいね。もしかしてこの国を滅ぼしたのアンタ? カッコイイ見た目しときながらヤバいことすんのねw」
「ムネ、胸を揉ませろ!!」
「はぁ!?」
AIロボットはそう言うと、血のように赤い目を光らせ、気づいた時にはヤツは私の間合いに入っていた! なんちゅう速さだ! 私が反応できないないとはなぁ!
「そんなんありぇねぇに決まってるだろ!」
フィジカルブースト!
刀を抜くと、足に爪が割れそうなほど力を入れ、地面を引っくり返す感覚で蹴り上げた。コイツなら十分に戦えそうだ!
そして私はAIロボットと衝突するように激突した。その瞬間、私とロボットによる衝突で、突風と軽い爆発が起きた。
砂煙が宙を舞う中、赤い眼光が煙の中から見えた。私はすぐさま刀に魔力を纏わせ、砂煙を払いながら
砂煙ごとAIロボットを薙ぎ払ったと思った、が手応えがなかった。まさかと思い私は空めがけて地面を割りながら、飛ぶように跳ね上げる。
数十メートル飛んだ地点で、私は辺りを見渡す。しかし、奴の姿は見当たらない……逃げたか?
「逃げたんですかぁー? 胸を揉ませろとか言っといて〜? ザッコー!」
「どこを見ている? 俺はもうお前の背後を取っているよ」
「——ッ!」
「さぁ大人しくおっぱいを揉ませろ!!」
ヤツは既に私の背後をとっていた。そう来ると思ってたぜ! 私は瞬時に、振り返ると同時に刀をAIロボットの脳天に突き刺し、そのまま地面に叩きつけた。
地面は粉々に割れ、AIロボットを仕留めた。
「楽しかったぜ、せめてものの救いとして私の記憶に残しといてやる。頭は持って帰るけど」
私がいざAIロボットの頭を刈り取ろうとした時、地面に叩きつけたはずのロボットがそこになかった! ウソッ! 完全に手応えがあったはず!
状況が飲み込めないでいると、耳元でAIロボットの声で「上の服を脱げ」と命令された。
……従わないと。
すると、無意識的に私は着ていた服を脱ぎ、意識を取り戻した時には私は上裸になっていた。
「はぁんなるほど、スキル「催眠」かぁ? だから手応えがあってもお前の姿がなかったわけだ。面白ぇ! ぶっ殺す!」
「好戦的な女の子は嫌いだなぁー、一度戦闘不能にして犯してやる。安心して、痛くはさせないからさ」
「キッモー、でも嫌いじゃないぜ? そういう性格はよォ!!」
刀を利き手の方に持ち替えると同時に、私は再びスタートを切った。電光石火の如く素早くあちこちに動く私は、棒立ちしてるヤツの首元に魔力を纏わせた刀を突き刺そうとする。
「吹き飛べ」
「——ッ」
奴の言葉と同時に、私の体は無意識的にぶっ飛び、木々が生い茂った森の中へバキバキと木を破壊しながら飛ばされた。
※
さっきのあの女の子、可愛いなぁー、しかも強気な女の子だし、美乳だったし! あの強気な女の子をメス堕ちさせたら、どんな快感が得られるものか! そうだ俺の新しいお嫁さんにしよっかなー! それにしても興奮というか性欲が収まらない! 早くヤリてぇ!
『現在の貴方の性欲を数字で表すと120%です』
「性欲を数字で表さなくていいから、まずあの女の子が戦闘不能になってるかどうか教えてくれ」
『はい、彼女は現在活発にあの森の中で動いています。敵意を感知、残り2秒後あなたに攻撃を仕掛けてきます』
「——マジかよ! バリア展開!」
『承知しました、魔力を使いバリアを展開します』
天の声がそれを言ったと同時に、森の中から微かに何かが光り、天の声の言う通り2秒後に俺の元へ彼女は接近してきていた。
「なんだよ、このバリアは!」
「凄いだろ? これは俺が創り出したバリアさ!」
俺が高らかと笑いながら言うと、何故か彼女はニヤリと笑った。なんだ、その笑みは。その時、脳裏に俺を線路上に、突き飛ばしたスズカチャンの悪魔のような笑みを思い出す。
その次の瞬間、彼女は張っていたバリアに刀を突き刺し、そして、両手で画用紙を破るように俺のバリアを破りやがったのだ。
バリアを破られた事に驚いていると、女の子はそんな俺を置いて、刀で俺の体をX字に切り刻む。なんていう速さ! まさに化け物!
「あばよ! 楽しかったぜ!」
女の子はそう言うと同時に、刃先を俺の脳天に向け、バリアを失った自分にトドメを刺そうとする。
『生命の危機を感知しました。これより、オートマチックモードに切り替えます』
——ッ!?
そして俺の生命を刈り取るその刃は、俺の元に届くことは無かった。何故ならば、彼女の刃は俺の手を貫通して、止まっていたからだ。
「——何ッ!?」
「スキル「サモンズモンスター」を発動します。召喚 光龍ファフニール」
※
「ファフニールだぁ!? 知らねぇなぁ! そんなんモンスターはよぉ!」
私は魔法が炸裂すると察知し、すぐさまAIロボットに刺していた刀を抜き、ヤツとの距離を十分にとる。
ファフニール……海瀬から聞いた事がある、かつてこの世界がAIに支配される前の世界を創造した五大神の中の一体の名前!
その時、ヤツの背後にあった晴天の空は闇に染まり、周りの黒い雲が、魔法陣のようなものを創り出す。
——チッ、アイツの話がハッタリだとしても、強力な召喚獣を召喚するには、早くても5分も時間が必要、簡単、5分以内に片をつければいい話!
私は思いっきり力を入れ、スタートを切った。
今までの人生で出したことの無い全力。感じたことのない全身全霊で戦える謎の高揚感! 私の辞書に「不可能」はない! イける!
心の奥底から湧き上がってくる感覚を大切にしながら私は、ヤツとの間合いを詰める。
「魔力を使い迎撃を図ります。イージス・スパーク」
最高位の呪文を詠唱なしに!? 面白い! 最高だぜアンタは! それなら私も、アンチ・マジックバリア!
私の周りに魔法耐性の高いバリアが形成された時、暗雲がたちこめる曇り空から無数の雷が降り注ぐ。
ビートを上げろ! まだ見ぬ最高地点に行くために!
その瞬間、私は身体に違和感を覚えた。何かが近づいてくるようなピリつく感覚、まるで私の身体が危険を教えてくれるような。
そして、ピリついた感覚がビリッと静電気に当たったような感覚になった瞬間、私は咄嗟に左横に避けた。
すると、私がさっきまでいた場所に雷が落ちた。この時の私はその感覚を無意識的にマスターしていた。かつてない強敵に出逢えたことによる高揚感に私は、そのことにすら気づいていない。
ただ今は目の前の敵を殺したくて仕方がないのだ!
降り注ぐ雷を避け、ヤツの元まで駆け抜ける。そして、私は刀を上へ投げ、全身全霊の蹴りをヤツに打ち込む。
しかし、さっきより硬いバリアがそれを阻もうとする。そんなバリアごときが私の蹴りを受け止められるかぁ!! 止まっていた蹴りに爆発するほどの力を入れ、バリアを破壊する。
そして、勢いが収まらない蹴りは、ヤツの顔面へヒットした。蹴りが決まったことで相手は遠くの野原まで吹き飛ぶ。
すぐに私は相手が動く隙を与えまいと、後を追い、吹っ飛んでいる最中のヤツに、渾身の右拳でヤツの顔面を守っていたバリアごと、地面に叩きつけた。
叩きつけたことにより、地面は大きく割れ、私たちを中心に突風が起きた。そして、身動きが取れないヤツに向けて、私は宙へ投げていた刀を掴み、魔力を纏わせた刃で相手の首に刃を当てた。
瞬間だった、早すぎる早すぎたのだ、まだ1分程しか経過してないはず。だがアイツは空にいた。
誰も聞いたことの無い神と称される化け物の声、闇の空で雲が作り出した魔法陣から現れたのは、光り輝くドラゴンだった。
「あれが……ファフニール……」
光の神と称されるだけアイツは、神々しく、闇の空の中でも一際輝いて見えた。
宙を自由自在に飛び回るファフニールに、私は魅了されていた。その次の瞬間、ファフニールはある地点で立ち止まり、凄まじい咆哮と共に、眩い光が視界を覆う。
そして、足から業火に焼けるような痛みがほとばしり、痛みが胸まで達すると、私は数秒で意識を失った。
※
『敵対する者の生命活動が停止したことが確認できました。これでオートマチックモードを終了します』
天の声に戦闘を任せられていため、意識のなかった俺は、その声と共にパッと起き上がった。
「……終わったのか? さっきの女の子は!? 胸! 俺のおっぱいは!? 戦闘不能になってたらヤレ……る……」
辺りを見渡していると、空は雲ひとつ無い眩い晴天で、何もいなかった。
そして、戦っていたあの女の子を探していると、俺は目を疑った。そう目の前には、人型の灰があった。まさかこの灰は……あの女の子……嘘だ……俺が殺ったのか?
「……ケッ、アハハハハハハハ! 俺に攻撃するからこうなるんだ! 全くもって無様だなぁ! ……おい、残りの魔力はあとどれ位だ」
『はい、残り50%ほどです』
「そうか……なぁ」
『はい』
「この世界で死んだヤツはどうなる」
『この世界で死んだ者は3分以内に蘇生が行われなければ、天界に魂が転送され、その魂は別のものへ変えられ——』
「いやそれ以上はいい、3分以内なら蘇生は可能なんだな」
『可能です。誰を蘇生をなさいますか?』
「さっき戦闘をしかけてきた女の子に決まってるだろ」
『了解しました。注意 死者蘇生の魔法を使うに至って残りの50%の魔力を使うことになります。よろしいですか?』
「あぁ大丈夫だ」
『了解しました、蘇生を開始します』
その天の声が聞こえたと同時に、俺の体は再び機能を停止した。
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