第4話 黒幕は出てこない
ムチを掲げてるサファイアの首元目掛けて針が飛ぶ!
ギリギリで避けて後退する。
「サファイア!」
「チィ!ローズがいるならテメェもいるよな。
ルビィ!ローズをそのまま抑えてろよ!」
体制を整えようとすると首元に針が突きつけられる。
「アタイのものになってください!サファイア様!」
黄色と紫のツートンカラーの髪を揺らして金色の目を爛々と輝かせる少女がサファイアに纏わりつく!
「くっそ!毎回なんでこんなやつに!」
「抵抗しても無駄ですよぉ!
さあさあさあ!アタイのものになって!結婚式をこの船であげましょうぞ!」
「イカれ女が…。ルビィ!直ぐそっちに行くから離すなよ!」
「でもサファイア!」
硬直状態が続く。
その緊張の糸を切ったのはマダムアクアマリンだった。
アメトリンの脳天に爆竹を投げつけ、瞬間的に二人はその場を別々の方向に飛び退く。
「可愛い孫の脳天に爆竹を投げるな!クソババア!」
「どこが可愛いのかねぇ。
直ぐ立ち上がらない体幹弱々な奴をあたしゃ孫とは認めんよ!」
二人の間を割って入るようにアメトリンがナイフを振り下ろす!
それをマダムが軽々と受け止める。
「羽のように軽いねぇ。
ちゃんと食べてるんかい?」
「フン!ふとましい女なんで戦闘員としても諜報員としても失格ですよ!」
「それを言ったらお宅の上司のお胸はずいぶん大きいみたいだけど…。」
「なっ!揚げ足をとるな!
あとお孫さんをアタイにください!」
「話にならないね。
サファイア、ルビィと共に小舟で渡りな。
ここはあたしらが引き受ける!
野郎ども!気張って行くよ!」
おおー!と士気を上げるマダム・マリン。
「ルビィ先行くぞ!」
「ちょっ、待てよー!」
ローズを突き飛ばして船の奥へ退散する二人を
「待ちなさい!私のムチを返せ!」
ローズも後を追うが二人の方が重い鉄の扉を閉めるのが早かった。
「やーい悔しかったらここまで来てみろー!」
「サファイア、レディを揶揄うのは感心しないな。
ごめんねローズちゃん。君とは素敵なカフェテラスで素敵なティータイムを過ごしたかったよ。」
そう言って二人は救命ボートを用意し、裏口から脱出する。
「逃がさないわ!
手が空いてるクルーは船に戻りなさい!」
「「「アイアイサー!ローズクォーツ様!」」」
Ruthの船員達が次々と我先に船へと戻っていく。
「そうはさせるか!
可愛い孫達の船出を邪魔させないよ!野郎ども!乗り込めぇー!」
マダム・マリンの掛け声で一斉に野郎どもが相手側の船へと乗り込んでいく!
どっちの船内も無茶苦茶で追撃どころではない。
それどころか誰かが撃った銃の弾で火薬に引火して火の手が上がる。
「あーあ、やらかしてんなぁばっちゃ。
昔から無理すんなと言ってるんだけどな。ルビィ、もっとスピード出せ。」
「やってるよ!もうこれが精一杯!」
二人して言い合いながらマルタ島を目指す。
『待ちなさーい!
航行違反その他諸々でしょっぴくぞー!!』
ローズの拡声器越しの声に目をハートにしてルビーが声を張り上げる。
「ああ、愛しい薔薇の君!
俺の用事が終わったら何度でも逮捕させてあげるからそんなに悲しまないでおくれ!」
ラリっているルビーの頭を思いっきり叩きサファイアが睨む。
「悔しかったらここまで来いよブァーカ!」
『先輩!拡声器を貸して!
サファイア様〜!もっとワタクシを罵って!!あなたのためならこの雌豚、たとえ火の中海の中どこへでもあなたを追いかけますわ!』
アメトリンがクネクネと腰を揺らしながらサファイアへ重い愛を叫ぶ。
顔を青くしてサファイアはボートを走らせてマルタ島に上陸した。
二人はボートを乗り捨てて岩場を登り、無事マルタ島に不法入国した。
「Ruthの船はっと。
しっかりばっちゃが足止めしてくれてるみたいだな。
ルビィ!おやっさんの地図は解読できたか?」
「う、うん自信はないけど多分この先の教会だと思う。」
「よし、急ぐぞ!」
ルビィの背を押しながら二人は教会を目指すのであった。
一方、マルタ島の地下では。
3名の豪華な服を纏った女性一人男性二人が向かい合って座っている。
「どうやらお前の息子が侵入者みてぇじゃねぇか。なあ、パパラチア。」
サーモンピンクの髪とシルクのローブを纏った女に言う。
女の名はパパラチア・サファイア。
名のようにサファイアの母でマルタ島の娼館を取り仕切る女将さんだ。
「フン、あんな何処の馬の骨ともわからないガキを息子だと思った事はないね。
それより、お前の兄さんの子飼いの孤児はよほど馬鹿みたいね。」
パパラチアはタブレットを片手に赤毛の男に見せつけるようにRuthとの一部始終を再生する。
「…ドローンか。
確かにノースは愚かな奴だった。
だが、ルビィは見どころのある奴だぞ。」
赤毛の男の名はロッソ・ダイヤモンド。
世界を牛耳る不動産王であり、ノースの実兄である。
裏社会では彼に睨まれたら命はないと言う。
「まあまあ、お二人のお知り合いが不法入国者というのは残念ですが司法の鉄槌は下させていただきますよ。
英国女王、マザーパールの名の下に。」
メガネをかけた赤と青のツートンカラーの髪の男が不敵に笑う。
男の名はアレキサンドライト。
二人の相談役にして世界一予約の取れない弁護士という肩書きを持つ。
金になる事に目に無いと言う強欲な性格の悪徳弁護士である。
そんな三人が不敵な笑みを浮かべ二人を待ち受けるのであった。
【To be continued】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます