第3話 船上にて


 マダム・アクアマリン率いる船に乗った二人。

甲板掃除の次は野菜の皮剥きを命じられ、二人は渋々野菜を手に取って皮を剥き始める。

「ガキじゃねぇのになんで雑用しなきゃいけねぇんだ。」

「まあまあ、これもいい経験じゃないかサファイア。」

悪態を吐きながら皮を剥いていく。

「おうおう、サファイア坊ちゃんはご機嫌斜めでちゅねぇ〜。」

「ルビィ坊のほうが素直で扱いやすいな。」

ガハハとマダムの取り巻きクルー達が馬鹿にする。

「馬鹿にすんなよ!

こんな遺言書さっさと届けておやっさんのカンパニーを立て直して俺たちは成り上がってやる!」

ナイフを掲げて高々と宣言する。

「ほぉ〜その時は是非あたしらに楽させてほしいね。」

様子を見に来たマダムが皮肉を込めてサファイアを睨む。

「げっ、聞いてたのかよ。」

「あんたの絵空事が叶うならあたしゃ今頃この世界の海を手中に入れてるわ。」

大笑いしながら去っていくマダムに顔を真っ赤にしたサファイア。

周りのクルー達も腹を抱えて笑って去っていった。


「サファイア、お前そこまで考えてたのか!」

さっきの言葉に感動したのかルビィががっしりと両手を握る。

「いてて!お前馬鹿力なんだからやめろ!

まあ、おやっさんが残していったもの全て立て直せるかと言われたらできねーけど。

取り敢えず依頼をこなしたらそうしたいなって。

まあ、カンパニーの元幹部達が今どうなってるか本当にしらねぇけど…。」

自信なさげにサファイアは木箱に腰を下ろして皮むきを再開する。

「できるって!俺は難しいことは解らねぇけどサファイアならできるって!」

ルビーにバンバンと背中を叩かれ、雑に励まされて少しだけ顔を上げるサファイア。

そして二人は親であるノースのカンパニーを守る約束を誓い合った。


 皮剥きを終えて料理をしている途中、ガタン!と大きく船が揺らいだ。

「ガスを切れ!

これは座礁じゃねぇ!」

野生の勘かルビーが真っ先にコンロの近くにいたコックに指示を出す。

コックもその指示通りにガスを切った。

幸いなことに焼き物料理を終えたところだったので料理が吹っ飛ぶことはなかった。

「敵襲ー!敵襲ー!甲板に急げ!

全戦闘員に告ぐ!てきしゅー!」

副船長であるスピネルのしゃがれた声が響き渡る!

「行くぞサファイア!!」

「当たり前上等だー!!」

二人して腕まくりしながら甲板へ急ぐ!

 

 甲板に出てみれば既に戦闘は始まっており、相手側の船の帆を見るとデカデカと諜報組織「Ruth」と書かれている。

「あーあれ多分あいつだろうなぁ。」

嫌な顔でサファイアが呟く。

「ローズちゅわんがいるなら俺が出る!」

目をハートにさせて戦火に飛び込もうとするルビーの首根っこを掴む。

「お前、おやっさんが生きてた時からハニトラやら女諜報員に引っかかるのいい加減やめろよ!」

「止めるなサファイア!俺には女を平等に愛する使命がある!」

「だーかーらー!見境なく盛るな万年発情期!相手は敵だぞ!敵!

女に攻撃できねー癖にでしゃばるな!」

コントを繰り返してると乗り込んできた男の諜報員がこっちにマシンガンを撃ってくる!

それを難なく交わして二人でその諜報員を蹴り倒す!

「何年この社会で殺しをやってきたと思ってるこのヤロー!」

「おうおう、ローズちゅわんの部下か?羨ましいぞこのやろー!」

ボコスカ蹴っていると戦禍の波を掻き分けてピンク色の髪を揺らして女がムチを振るってくる!

「うお!」

「ひゃん!この愛の鞭は俺のためだね!ローズちゅわん!」

二人してムチの軌道ギリギリを避けて振り返る。

その女は赤い外套を纏い、赤い目をキッと釣り上げてルビーを睨む。

「匿名の航海違反船が密猟していると言う通報を信じて来てみたらなんであんたらがいるの!」

怒りのままにムチを振るう女。

彼女は諜報機関、Ruthの戦闘員。

名をローズ・クォーツという。

ムチ振いのローズという異名を持つが行く先々でルビーとサファイアに合うと言う因縁の相手なのである!

「なんでって、てめーが付き纏って切るだけなんじゃねーのかストーカー女!」

「な!そんなこと言っちゃダメだろ!サファイア!

彼女は俺に愛を伝えるために来てるんだから!おっと!」

奇妙な動きでローズの攻撃を交わし切るルビーととばっちりを受け流すサファイア。

「何このクソキモいこと言ってんの!

大体、ダイヤモンドが死んだのなら組織的に解散してんだから大人しく捕まりなさいよこの!」

ムチを振ろうとした手を一気に距離を詰めてルビーが奪い取る!

「君の可憐な手にこの大きなムチは不釣り合いだな。

無理して戦わなくても…「返せ!この!勘違い男!」いって!」

ローズにビンタをされてムチを落とすがそれをサファイアが取り上げる!


「これを返してほしくばお前の隊を撤退させろ!

そうすればこれに風穴は開かないかもなぁ。」

悪い笑みを浮かべムチを掲げる。

「ふん!そんな脅しに屈しないから!

アメトリン!」

ローズの呼び声に渦中からゆらりと影が動いた。

 

【To be continued】

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