第4話 リタイアするってマジですか?

 久しぶりにキャサリンがオフィスに顔を出した日、私は思いきってこの『チームキャサリン』のメンバーについてたずねてみた。


「キャサリンさんってやっぱりすごいですね。櫻子さんとかに、どうやってお仕事をさせてるのか…正直不思議です」

「みんなそう言うんだけどね、かかわり合わないことが大事なの。放っておけば、ある程度やってくれるわ。これが成功の秘訣よ」


 キャサリンは自分のSNSをみながら、さも当然でしょ? という感じに話す。


「実は私も正直困ってたの。でも華ちゃんがいてくれるから安心! 彼女には、彼女がやりやすいようにやらせてあげることが、一番よ。誰も被害に会わずストレスもかからない唯一の選択なの。私はこの究極な安全策を発見したわ」

「でも…」

「そのうちあなたにもわかる時が来るわ」


 キャサリンはそう言うと私の手をとり真剣な眼差しでこう告げた。


「私ね、この会社辞めるから。『チームキャサリン』のこと、あとはよろしくね。ボスには、あなたを新しいリーダーにするよう推薦しておいたから」

「えっ?」


 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ? 何を言ってるの? 辞めるって何? この状態をほっぽって抜けるってこと?


「本当に華ちゃんが来てくれてよかった。頑張ってね」


 えっ?


 私にはもはや何が起きたのかわからなくなっていた。


 扱いづらい意地悪魔女、本当は歴代の勇者に剣を届けただけの馬鹿鍛冶屋、自分大好きで夢を語るだけのナルシスト、コミュ障の草食男子…。


 このチームで何を目指せと言うのだ!


 ピンチこそ、成長の最大のチャンスである。と誰かが言っていたけど、この状態は乗り越えられるレベルなのだろうか?


 やっぱり私、勇者を志した方がよかったのかも…。そう思わずにはいられなかった。

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