第2話 『チームキャサリン』のメンバー紹介

 私は一瞬、固まった。


 ここは顔採用があるのか!? と思うほど会議室に集められたスタッフはスタイルや顔が整っていた。

 私は、ムチッとした足が自慢であるかのように見せつけているパンツスーツにぺったんこシューズを履いてきた自分を呪った。


「えっと、華ちゃん。みんなを紹介するわね」


 私は慌てて先ほど受け取ったファイルを広げ、チーム全員の名前と顔を覚えようとメモを取る。



「えっと、こちらが白鳥 櫻子さん。ここのことは何でも知ってるベテラン中のベテランよ。困ったことがあれば何でも彼女に聞けばいいわ」

「よろしくお願いいたします!」

「キャサリンさ〜ん。こんなに若い子が入るなんて、聞いてないわ」


 櫻子と紹介された女性は、私をチラッと見ると私の存在などないかのように、キャサリンに話しかけた。


 彼女は資料によるとアラフィフの魔女で、ベテラン中のベテランだ。見た目はどう見てもアラサーくらいにしか見えない! 美魔女だ。しかも短いスレッドの入ったスカートに網タイツ。ピンクのスカーフを上品に身に纏って、自分を綺麗に見せるコツを心得ていらっしゃる。


「いえいえ、そんなに私若くないんで」

「へ〜そう」


 櫻子さんは適当に相づちをうつと、調べ物に没頭してしまった。誰もその行為をいさめる人もいない。


 あれ? 私、何か変なこと言いました?

 気にしないの。とキャサリンが私の肩をポンと叩き、続いてその隣に立っている男性に視線を向けた。


「その隣にいるのが、馬鹿うましか 六郎太さんね」

「桜小路さん、よろしく」

「綾小路です。よろしくお願いいたします!」


 馬鹿うましかさんという人の経歴を見ると、超エリートの鍛冶屋だ。歴代の名のある勇者の剣は彼が造り出したモノばかりだ。物静かな雰囲気だけれど、この経歴を見れば泣く子も黙るだろう。すごい! すごい人だ! 名前は馬鹿うましかだけど、すごい人なんだ。


 私が感動していると、キャサリンが「次ね」と隣の男性に視線を移す。


「で、その隣が昨年ジョインした、夢野 王子くん」

「始めまして。華さんですね。わからないことは何でも僕に聞いてください!」

「ありがとうございます。よろしくお願いいたします!」


 なんて爽やかなの!? 適度に引き締まった体を見せつけるようなピチシャツに、スニーカーは素足で履いてます! 的なコーディネート。どこかのおぼっちゃまかもしれない。私は一瞬で彼は良い人だ、と理解した。

 彼の経歴もすごかった。特に語学力が長けていて6ヶ国語話せるらしい。なんてすごい。


「彼は優秀なアタッカーよ。きっと華ちゃんの助けになるわ!」


 夢野くんの興味は既に己に向けられ、スマホを鏡がわりに前髪のチェックを始めていた。


「そして最後が、沙良さら 大地だいちくん」

「はじめまして、綾小路です」

「ども」


「あ、彼はとってもシャイなの。だから気にしないで」


 気にしないで、と言われても最初くらい頑張ろうよ、と思うのは私だけだろうか…。

 彼は見た目からして草食男子だ。色白でメガネをかけていて、誰とも目を合わせようとしない。コミュ障なのだろうか…。顔が良い分勿体無い。

 資料によると彼の経歴も相当なものだった。チーム キャサリンのMVPに何度も輝いている。



 こんなすごいチームで私はやっていけるのだろうか? ワクワクと同じくらい不安が私を支配する。


 その横でキャサリンがすごく嬉しそうに頷いていた。



 勇者の道を進まず裏方の職に就いた私の人生は、こうしてスタートをした。


 伝説を残した勇者キャサリンのチームに配属された私は正直浮かれ過ぎて本質を見逃していたのだ。

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