第62話 メンバー探し

いま、僕は宿屋近くの野原に寝ころび考え事をしている。


帝国への旅は続けているが、もうそれも意味がないかも知れない。


魔族は怖くないし……王国からの勧誘らしい気配はない。


風評がどうやら効いたようで『腑抜け』と思われ出したようだ。


三人のフォーメーションで普通に魔物を狩り生活が出来る。


今のままで充分だ。


『本当にそう思うの?』


『そう思っているけど?』


また、頭の中に来夢が話し掛けてきた。


『足りないわ! ヒーラーに魔法使い……あと一人、そうね剣士か武術家、打撃系が必要だと思うの』


確かに言われてみればそうかも知れない。


だが、伝手は無い。


しいて言うなら、奴隷を買う位しかおもいつかない。


しかし、来夢は……なんでTシャツとショートパンツで足をばたつかせているんだ。


『伝手が無いよ……それより、なんで?』


『こう言うの好きでしょう? それは置いておいて、貴方が使うスキルは直接戦闘で使い続ける必要は無いから、貴方が近接を覚えれば……あははは、二人を背負っているから無理ね』


『そうだね……笑う事ないじゃないか?』


『あはははっ、あーおかしい……確かにそうだね。まぁ強い敵と戦わないなら別に必要ないし、このままでも良いんじゃない? ただ接近戦は、危ういわ』


確かに、この戦い方は魔法の攻撃範囲をくぐり抜けて来る相手には危うい。


僕のスキルが作動するまでのタイムラグで怪我、場合によっては死ぬ場合もある。


『確かにそうかも知れない』


誰かが怪我してからは遅い。


手を打つべきかも知れない。



◆◆◆


宿屋に戻り、三人に事情を説明すると凄く嫌な顔をされた。


「いらない」


「必要ないと思うよ!」


「聖夜様は危ない事は避けるのですから、必要ないと思います」


だが、此処は譲れない。


僕は、安全に皆と楽しく暮したい。


そう思っている。


その安全に問題があるのなら、手を打つべきだ。


熱心に説得したら、渋々了承してくれた。


「それじゃ行ってきます」


「「「行ってらっしゃい……」」」


やや不貞腐れ気味の三人に見送られ、僕は宿から飛び出した。


◆◆◆


この世界何処にでも奴隷商があるんだな。


しかも、王国よりもかなり大きく幾つかの店とテントがあり、まるで市場みたいだ。


「凄く大きいな……」


「そりゃ、あんた王国で魔族との戦いが激戦化して財産を失い逃げてきて……湿っぽい話はしない方が良いな!まぁ奴隷商としては沢山の奴隷を抱えているから買うならチャンスだ」


そうか……確かに戦争で財産を失った人間が多く出れば奴隷も増えるのかも知れないな。


魔族と戦う筈の異世界人があれじゃ王国もかなり被害が出て居るのかも知れない。


「騎士とか剣士の奴隷とかいるのかな?」


「いるけど、負傷した奴隷が多かった気がする……まぁ見て回るが良いさ。俺はもう見終わったから行くな」


「ありがとう」


市場の関係者かと思ったら……客だったのか。


しかし、すごいな檻に入って並べてあるし、テントにも檻がある。


本当に市場みたいだ。


しかし、さっきの人が言った意味が解った気がする。


怪我している者が多い。


見た瞬間思った事は『惨い』だ。


すこし歩き出した瞬間……


「「「「「「「「「「買って! 買って私を買ってーー」」」」」」」」」」


「お前等黙れ……さもないと」


「そのお兄さん、私を買って、何でもしますから」


「エルフに興味ない? お兄さんになら幾らでも尽くすよ」


「そんな、奴やめた方が良いよ、買うかならダークエルフ、私なら絶対に満足させてあげるわ」


なんでこうなるんだ。


『あのさぁ……貴方はもうインキュバス並なんだから、顔位隠した方が良いわ! 奴隷に落ちた自分の前に突然王子様みたいな人が現れたら……こうもなるわよ』


そうか、来夢の言う通りだ。


僕は手ぬぐいで顔を隠して奥へと進んでいった。


しかし、この辺りは随分と愛玩用みたいな綺麗な奴隷が多い。


聞いて見るかな?


「戦闘用の奴隷は何処に居ますか?」


「ああっ、それなら、あの奥のテントに集まっているけど……今は酷いのしかいねーぞ」


そうなのか……


テントに近くに行くと嫌な臭いがする。


「いらっしゃい……此処に居るのは使い潰すようなのしか居ません。 魔族との戦いで傷ついた物ばかりです」


見た瞬間覇気が無いのがわかる。



さっき迄も怪我をした存在が多かったが、此処はもっと凄い。


手足の欠損や包帯を体中に巻いた者が多い。


それに男ばかりだ。


『本当に酷いな』


火傷や傷が尋常じゃない。


なかには傷口から虫が沸いている者までいる…...そして動物園みたいに臭い。


「確かに怪我人ばかりだ。女性の奴隷は居ませんか?」


僕のパーティは僕を除いて女の子ばかり、女性の方が良い。


「いるけど? 一応分けていてあそこのカーテンから先がそうだが、女としてなら期待しない方が良いぞ」


おそるおそるカーテンを開けると……


ひどいな。


目があっているのに焦点が定まっていない。


全員が横たわっていて、体が痒いのか必死に手を伸ばして体を掻いている。


『碌なの居ないね』


確かに、見た感じ目ぼしい相手は居なさそうだ。


ただ、折角見に来たのだからと気を取り直して見ていく。


死にかけなのか黄色い声も上がらない。


一つ一つ見ていきとうとう一番奥についた。


この子も相当酷い。


横たわっているが、両手両足が無い。


いや、それ処か両目も抉られていて無い。


「……たふ……え」


身に着けている鎧は綺麗な銀色だが、そこから手足が無く首が出ているだけだ。


だが、その顔は目が無くても美人だと思える位整っている。


『まさか……』


『どうしたの!?』


『貴方、ギャンブルは好き?』


『あまり好きじゃないけど……』


『そう……なら勧めないけど、この子もしかしたらお勧めかも知れないわ』


来夢がいう『お勧め』が気になる。


奴隷商に話だけでも聞いてみるか。







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