第59話 僕は......ロリコンなのか?

取り敢えず、旅は続けている。


もう此処は王国の領土ではなく、聖教国の領土だ。


このまま、突き抜けて帝国迄行くつもりだ。


ただ、もう急ぐ必要は無い。


魔族の脅威はほぼ去った。


あとは……


『風評』


僕は風評を使い、自分が弱い存在であることを広めた。


『聖夜は魔族に遭遇し臆して逃げ出した……その後、心が折れて戦えない』


そういうを話移動中にした。


戦えないなら、もう他の同級生と同じだ。


これで追って来られる事も無いだろう。


冒険者ギルドの掲示板を見ると王国が苦戦している情報が数多く見られた。


……僕にはもう関係ない。


流石に死んで欲しいとまでは思わないが、割とどうでも良い存在にしか王国も元同級生も思えない。


だから、無関心。


それで良い……


◆◆◆


次の村の宿屋にて


「ねぇ、三人でジャンケンしてみない?」


「ジャンケン?」


「なんでジャンケンするの?」


「ご主人様、ジャンケンってなんですか?」


そうか、この世界にはジャンケンって無いのか……


「リリア、ジャンケンって言うのはね」


僕はリリアにジャンケンのルールについて説明した。


「聖夜様面白そうですね、ですがなんで急にジャンケンなんてするのですか?」


「実は……これから三人と個別にデートしようと思って」


「「「デート!?」」」


顔を真っ赤にしているし……


好かれているのが良くわかる。


流石にもう否定するのはやめよう。


「そう、デート。良く考えたらそういうの全部飛ばしてたから……良かったらどうかな?」


「そうね……確かにそうだわ」


「あはははっ、うんうん全く全部すっとばしていたね。デートね。楽しそう」


「聖夜様とデートですか? 凄く楽しみです」


とはいえ、ここは異世界。


映画も無ければ遊園地も無い。


学生定番のデートコースが何も無い。


勢いで言ってしまったがどうした物かな。


『あのね……貴方は中層インキュバスなみなのよ! なにをしても喜ぶから』


頭の中に来夢が語りかけてきた。


『そうか……』


なんか身も蓋も無いな。


「それで順番を決める為にジャンケンして欲しいんだけど」


「それはそれで良いんだけど、最初のデートは全員でしない?」


「うんうん、それが良いかもしれない、ほら異世界でお出かけなんて真面にした事無いし」


「私も実は余り経験が無いのでその方が良いです」


確かにその方が助かるな。


「それじゃ、最初の1回目は全員で出かけるとして……」


塔子の顔が笑顔に見える。


あれは、腹黒い考えの時の笑顔だ。


「それじゃいきますよ……ジャンケンポン!」


「「えっ」」


塔子がいきなりジャンケンの掛け声を掛け、パーを出した。


二人は慌ててグーを出す。


「人間って慌てて出すとグーを出すのよね! 多分パーを出した私の勝ちじゃない?」


「確かに二人はグーだね……」


「塔子ちゃんズルい! いまのは無し!」


「いきなりはズルいですわ」


「それは『出さなければ』よ。出してしまった以上は戦いに応じたという事だと思います。これは正々堂々私の勝ちです! そうですよね! 聖夜……」


「それも、もしかして南条の教えとか?」


「はい」


「ならいいや。順番が変わるだけだから、此処は二人が大人になってくれるかな?」


「ハァ~塔子ちゃんだから仕方ないか……」


「そうね、子供相手に怒っても仕方ありませんわ」


「うぐっ……なにそれ、それではまるで私が子供みたいじゃないですか?」


拗ねた顔をしているし……


「お嬢様ぶっている塔子も良いけど、子供みたいに甘えてくる塔子もそれはそれで可愛いと思う」


「せ、聖夜がそう思うなら……それで良いわよ、まったく」


「あっ、塔子ちゃんばかりズルい……私はどうかな?」


「聖夜様、私は……そのどう思いますか?」


今思えば、凄い話しだよな。


塔子は学年一の美少女だし、綾子にしてもクラスで可愛いと評判だった。


それに加えてリリアは貴族の令嬢だったから、何とも言えない品がある。


こんな美少女は日本にはいない。


今考えてみれば恵まれすぎている気がする。


「皆、美人だし可愛いよ……」


「「「そう?(なんだ)(ですか)」」」


顔を赤くする三人はやはり可愛い。


結局、綾子とリリアがジャンケンを続け、最初が塔子、二番目がリリア、最後は綾子と決まった。


◆◆◆


デートは明日という事になり、今は一人宿屋の横で休んでいる。


『来夢、今いいかな?』


『なんかよう?』


『ところで来夢はなんで子供みたいな姿に変わったんだよ』


『この姿が聖夜の理想の姿だからじゃない?』


『僕はロリコンじゃない!』


『いや、ロリコンだと思うわよ! 私はサキュバスの王族。そしていまは貴方の心の中に住んでいる……だから、貴方の理想の姿になったんだから』


僕がロリコン……


『いや僕は……』


違うけど……


いや、どうだろうか?


『いや、貴方はロリコンだわ、この貧相な胸にすらっとした肢体、これこそが貴方の好みの筈よ……良く考えて……』


黒緑髪を後ろで束ねて、黄色のリボン、ポニーテール。


色白で手足が長くてスラっとした肢体。


だけど胸が無く、小学生の高学年~中学生。


これが……僕の理想?


解らなくもない。


多分、この容姿は僕が小学生の頃に憧れたアニメのヒロインの容姿に似ているし、誰だったかな?小学校の時にピアノを習っていた憧れの女の子の容姿にも似ている。


「そうかも知れないけど、その姿は……多分、子供の頃好きだった女の子の容姿だと思う……」


『そうね、だけど、貴方はそのあと恋をしたのかな? どう……?』


そうか、あれから誰かを好きになる事が無く……塔子達に虐められ女の子も嫌いになった。


あれ……それじゃ……僕は。


『自信が無くなった』


『そうでしょう? まぁ貴方の周りの少女も美少女かも知れないけど、貴方が本当に心から望む女性の姿はこの姿の筈だわ』


目を凝らして来夢を見た。


黒緑髪を後ろで束ねて、黄色のリボン、ポニーテール。


色白で手足が長くてスラっとした肢体。


確かに子供の頃好きだったアニメのキャラクターにこんな感じの女の子がいた気がする。


『確かにそうかも知れない』


『という訳で、妄想したいなら好きなポーズをとってあげるから……自由に使っていいわ』


『自由にって……』


『たとえば、こんな感じ』


いきなり服に手を掛け上着を……


『わぁ~そんな事しないで良いから』


困った……僕はどうやらロリコンでもあったのか……









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