「聖夜という少年ですが、やはり隠し玉を持っていましたね」

「どう言う事でしょうか？」

「あの洞窟の中で『魔族と遭遇していない』その線を最初に考えていたのですが『どうでも良い存在が目の前で死んでもどうとも思わない』『助ける力が無い僕が逃げ出すのは当たり前じゃないですか？』そう言いました。その言葉が意味する事は、異世界人が死に勇者大樹が壊れる。その現場に聖夜が居たと言う事です」

「確かにそう取れますね」

「そこから考えられる事は、彼には魔族の目を欺ける様な能力があったと言う事です。　そう考えるとすれば、彼の能力が解ってきます」

「姫様……ですが、聖夜という少年は他の人間が馬鹿にする様なジョブとスキルしか無かったという話です」

「多分、それは『偽装』のスキルを使って作られた偽のステータスだったのではないですか？　聞いた限りでは、今迄、あんなバカみたいなジョブやスキルを持った人間を私は知りませんよ！」

「では、聖夜という少年の正体は何だというのですか？」

「『暗殺者』『シーフ』その辺りの様な気がしますね。その二つのジョブなら偽装のスキルを持っていても可笑しくありませんし、隠形のスキルがあれば、あの場所から帰って来られても可笑しくありません」

「確かに、そのジョブなら他のジョブの人間が帰って来れないような戦場からでも帰って来れそうですね」

「ええっそうね」

あの冷たいような世の中を恨んでそうな目、その目が何処か気になります。

私の考えではシーフでなく『暗殺者』の可能性の方が高そうですね。

「ですが、姫様一言宜しいでしょうか？」

「ええっ」

「相手が普通の魔族、魔物ならそれで説明がつきます。　ですが、一方的にあの数の異世界人を葬り、勇者の心をあそこ迄折るような魔族。　恐らく上級魔族、下手したら幹部クラスです」

「恐らく、その可能性は高いと思います」

「では、もし聖夜殿が『暗殺者』『シーフ』のジョブを持っていたとして、初戦だからレベルは低い筈です。レベルが低ければ暗殺者であっても、果たして上級魔族から逃げられるものでしょうか？」

確かに……下級魔族なら兎も角、異世界人を一掃できるレベルの魔族から逃げられるとは思わない。

だとしたら……あのジョブやスキルはユニークジョブ、ユニークスキルという事になるわ。

『ユニークジョブ』や『ユニークスキル』は女神が気まぐれで与える物。

そしてその能力は、一部の能力で四職をしのぐと聞いた事があります。

あのジョブやスキルは……『ユニーク』だった……そうじゃないの？

「やはり、聖夜にはなにか秘密がありそうです！　引き続き観察をお願い致します」

「ハッ」

勇者の大樹があの状態で、戦況は魔族に傾いています。

今も騎士が死ぬ様な犠牲を出しながらどうにか戦況を保っています。

使える物は全部使わないとなりません。

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