第26話 何かが起きている......


『潜らなくても良い』


そうは言われても、此処に居たら同級生と過ごす事になる。


凄く居ずらいから、僕には潜るしか選択は無い。


毛布一枚で寝ると疲れは余り抜けないんだな。


体が少し痛いし、疲れも完全に抜けてない気がする。


テントの中にはかなりの人数の同級生がいる。


顔を合わせたくないから、早目に出た方が良いだろう。


僕は毛布を昨日話した騎士に返し、洞窟に向かった。


◆◆◆


テントを見た感じでは全員は戻ってない気がする。


だからと言って騎士が慌てたような感じは無いから、夜通し戦うような人間が居てもおかしくないのかも知れない。


ただ、気になるのは騎士が減ったまま戻っていない。


ハイオークの討伐に手間取っているのかも知れない。


まぁ、そんなのは僕には関係ない。


僕には『空気人間』がある。


ただ、散歩するように洞窟を歩くだけだ。


魔物も襲われないと解っていれば、動物園やお化け屋敷と一緒。


爬虫類とかも嫌いでない僕には……うん、問題ない。


さぁ、どうするか? 


チャンスがあれば……その位を考えていれば良い。


此処からは無理して襲う必要は無い。


それに大樹と聖人には恨みはあるが、他の同級生は同調していただけ、そう考えれば、半分はどうでも良い。


だが、どうも様子がおかしい。


確かに洞窟は広いけど、こんなに同級生に出会えないものだろうか?


それにハイオークを狩りにいったという騎士たちも見当たらない。


なにかがおかしい。


此処は、初心者が実習で使うような洞窟。


ハイオークが居たのもオーガが居たのもおかしな気がする。


もっと奥まで行ってみるか?


奥へ奥へと進んでいくが、やはりおかしい。


魔物は見るものの同級生や騎士が見たらない。


この洞窟はそんなに大きいとは思えない。


こんなに出会わないものなのだろうか?


討伐目的ではなく、状況調査気分で誰かが居そうな場所を探し歩いていたが……なかなか会えない。


本格的に探すつもりで奥へ奥へ進む。


足跡を見つけては進んでいくと……


これは騎士の兜じゃないか?


なぜ兜が落ちている……


いや、理由は解る。


ここで何者かに襲われた。 そう考えた方が良いのかも知れない。


周りを見ると、ひしゃげた鎧も落ちていた。


そして……嘘だろう。


かなりの血が流れていて……そこには騎士の死体があった。


しかもバラバラだが恐らく4人分はある。


この洞窟にハイオークを討伐しに入った騎士は4人。


つまり、この洞窟に入った騎士全員が殺された事になる。


あくまで話を聞いた限りでは、今の同級生、勇者の大樹を含んで騎士には勝てない。


同伴してきた騎士は誰もがオーガ位なら討伐出来る力があり、更に連携も上手いと聞いた。


それが此処で死んで居る。


これは僕が見た、オーガ以上の化け物が居るのかも知れない。


そして、さっきから会わない同級生。


何かが起こっている。


そして……そこには騎士を殺せるほどの敵がいる可能性が高い。


不気味だ。


こんな事に僕は関わる必要は無い。


早くこの洞窟を出た方が良い。


だけど……気になる。


この奥で何が起きているのか?


同級生がどうなっているのか?


結局僕は好奇心に負け、更に奥へ向かった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る