第27話 お葬式ごっこ

しかし、本当に誰にも会わない。


だが、歩いて進んでいくと奥から声が聞こえてきた。


「異世界人は手ごわいと聞いたけど!? 大した事ないいわね」


「ぐわはははっーー! 異世界人が強くなるのは経験を積んでからだ、来たばかりはこんなものだ」


「全部は殺すなよ……勇者と数人位は残せよ」


「全部殺すと、また次が来ちゃうものね」


男2人に女1人が楽しそうに話している。


ただ、少し違うのは三人とも頭に羊みたいな角があり、蝙蝠のような羽が生えている。


そして肌が紫だ。


顔は整っていて美男美女。


だが……その足元を見たら、それ処じゃない。


異世界人、いや……僕の同級生が転がっている。


どう考えても生きているとは思えない。


ある者は頭が無く、ある者は体が潰れていた。


まるで壊れたマネキンが転がっているみたいに見えた。


見た瞬間からこの存在には敵わないのが解かる。


魔物じゃない。



『絶対に此奴らには勝てない』


此奴らが魔族だ。


異世界人を呼ぶ原因。


騎士が殺されるわけだ。


『あれは恐怖の象徴、見た瞬間から恐怖が走る。まるで宗教上の悪魔』


人間が悪魔にあったら恐怖しかないだろう。


「たたた……助けて……死にたくない。死にたくないんだ」


「あわわっ、逆らいません……逆らいませんから」


今現在、運悪く遭遇してしまった大樹と聖人はこの惨状を見て土下座状態で震えている。


「あら……殺さないわよ!? うふふふっ、勇者って殺しちゃうとまた次が召喚されるからね」


「それじゃ……」


「うん、君は殺さないよ。だけど、お友達は別だね」


「がははははっ、お前俺と戦ってみないか? 傷一つつけたら助けてやるぜ!」


「あっ……あぁぁぁぁぁぁーーファイヤーボール」


僕からしたら凄く大きな火の玉が飛んでいった。


だが、その火の玉を……


「ふん! なんだ、こんな物か?」


まともに顔面に受けて、顔色変えずにいる。


「あっあっあわわわ」


昔、レベルが低い状態で先につい進めて、どうあっても勝てない状態にRPGでなった事がある。


まさにあれだ。


レベル1~3の勇者がレベル20の魔物にあった。


そう言う状態だ。


「ふん!」


いきなり目の前に何かが飛んできた。

うぐっ!


思わず声が出そうになるが、耐えた。


それは聖人の首だった。


恐怖に顔を引き攣らせ驚いた顔を僕に見せながら目の前に転がった。


思わず声をあげそうになる所をグッと堪えた。


「助けるのは勇者だけよ? それ以外の者は皆殺し……生きたければ頑張って戦った方が良いわよ?」


全部が死んで居た訳じゃないんだな……だが、どうやら立ち上がる者はいないようだ。


「此奴ら役立たずだ……動く事も話す事も、もう出来ぬ。適当に数人残して殺してしまえ」


「そうね、殺しちゃいましょう」


そこから僕が見た物は地獄だった。


大樹と適当に選ばれた4人の同級生を除き、虫の息で死体に混ざり生きていた同級生が殺されていく。


焼かれたり切断されたりしていくが、誰からも声が上がらない。


何かの術に掛かっているのか、絶望した顔をしながら声も出さず、動きもせずに殺されていく。


「おかしいな……離れた所から気配が感じる」


ヤバい……気づかれたか。


「此奴らと別の所からだわね。まだ居たのかしら?」


「がはははっ、まだネズミが居たのか!」


ヤバい、ヤバい……このままじゃ殺される。


スキル『お葬式ごっこ』を使いますか?


頭の中にそんな事が思いついた。


そうか……これならいける。


空気人間が人を空気として扱うなら、このスキルは『死人として扱う』そういうスキルだと思う。


『聖夜くん死んじゃったよ』


『昨日が葬式だったんだよな』


『可哀そうだから花瓶に花を活けて机に置いて置こうぜ』


ご丁寧にお線香や最後の方には黒白のリボンがついた写真まで用意していた。


だが……あえて言おう『ありがとう』


そのおかげで僕は生き残れる。


僕はスキル『葬式ごっこ』を使った。


意識が薄れていく。


その中で……


「なんだ、もう死んで居るじゃない?」


魔族の女の声だけが、僕に聞こえてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る