第22話 助けなかっただけだ

反省なんてする位なら復讐なんて考えるな。


今現在もあいつ等は僕の事なんて仲間と思っていない。


『僕は死にたくない』


だから、僕はもう反省をするのを辞めた。


もし、反省をするとしたら、それは『全てが終わった時』で良い。


それで良い。


◆◆◆


そういえば、レベルが上がっていた気がする。


確認して見るか……


聖夜

LV 14

HP 203

MP 162

ジョブ:ジャームズマン(ばい菌男)

スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)空気人間 お葬式ごっこ ばい菌 亀人間 下級人間 腐る目 物隠し 風評 要求と罰(NEW)


相変わらず、普通の魔法はMPがあるのに覚えてない。


その代り、また変わったスキルが増えている。


今の所、ばい菌と腐る目と亀人間しか使ってない。


必要な時に頭に浮かぶから、その時が来るまできっと解らないのかも知れない。


『お前等が悪いんだ』


僕は祐一と典子の死体に目もくれずにその場を去った。


『これで良いんだ』


◆◆◆


暫く洞窟を歩いていると頭の中に『空気人間』のスキルが浮かんだ。


周りを見ると遠巻きにゴブリンやその他の魔物が居た。


『空気人間』のスキルを使った。


ようやく、このスキルの意味が分かった。


僕は同級生皆から無視されていた。


『痛いっ』


いきなり足を踏まれた事があった。


『あれぇ~誰もいない筈なのに声が聞こえるなぁ可笑しいな~! なぁ皆、ここに誰かいる?』


『居ないよ』


『私にも見えないよ』


寄ってたかって僕をクラス全員で無視していたんだ。


『あの……高野さん』


『……おかしいわね、誰もいないのに声がするわ』


『峰村さん!』


『……あっ、典子いこう、いこう』


『……』


クラス全員で無視して、必要なプリントや情報を教えてくれなかった事もあった。


多分、あれがスキルになったんだな。


そこから考えるとこれは『空気のように周りから思われるスキル』だ。


これ、結構使えるな。


魔物が幾ら居ようと関係なく動き回れる。


まるでイジメみたいなスキルだと思っていたけど、あの女神天然なだけで悪い女神じゃ無かったのかも知れない。


まぁ、女神だもんな。


思ったより洞窟は広く、なかなか他の同級生には会えない。


検証してみたのだが、この空気人間というスキルはどうやら、こちらから攻撃を仕掛けたり、相手の物を取り上げようとすると、解けてしまうようだ。


ゴブリンで試してみて解った。


もし、そう言った欠点が無ければ凄いんだけど、まぁ世の中そんなに甘くない。


よくよく考えてみれば、幾らクラス全員に無視されていても、こちらが殴ったり、悪口を言えば攻撃してくる。


まぁ当たり前だよな。


そのイジメが元で出来たスキルなら、こちらから攻撃したら解けるのは当たり前だな。


◆◆◆


しかしこれ凄く楽だ。


ゴブリンが居てもオークが居ても、スライムが居ても全部無視できる。


斥候には最高のジョブじゃないかな。


同級生を探しウロウロしていると担任の緑川が居た。


この偽善者が。


頭の中に嫌な記憶が思い出される。


『お前等、なにやっているんだ!』


『先生助けて……うぷっ』


『いやいや、仲良くプロレスごっこをしていただけですよな』


『『そうそう』』


『そうか~あまり派手にやるなよ』


派手にやるなよ……此奴は知っていて僕を見捨てたんだ。


『先生、僕の給食にチョークの粉が入っているんですが……』


『よし、先生が調べておくから』


『おまえ、ふざけるんじゃないぞ! 皆に聞いてみたら自分で入れたと聞いたぞ』


『先生……』


『俺はもう知らん!』


そう怒鳴ってきた。


イジメている主犯に大樹や塔子、大河が居たから日和ったんだ。


だが、担任が庇ってくれないから余計いじめが酷くなった。


食べられなくなるのに、自分でチョーク入れる馬鹿は居ない。


暴力を振るわれている現場を見ても担任が見逃すなら、そりゃ余計イジメに走るだろう。


そのくせ、この馬鹿は教育熱心な熱血教師を演じている。


しかし、此奴もソロでやがんの。


当たり前だよな。


普通に考えて、誰も教師となんて組みたいと思わないだろう。


周りを見ると生徒は誰も居ない。


この変で一度、自分の力を試してみた方が良いかも知れない。


「緑川先生……」


「なんだ、聖夜じゃないか? 此処は異世界だ、俺は担任じゃない。1人で生きていけよ! 俺に迷惑かけるなよ」


「そうですね、此処は異世界で、貴方は教師じゃない! 死んで貰います」


俺は緑川に近づきナイフで腹を刺した。


「お前、何を言って……ぐふっ冗談だろう……ハァハァ俺を殺す気か……この野郎、ファイヤーボール」


なんだこれ。


やはりそうだ、ジョブの差があってもレベル差が大きければ問題ない。


緑川は恐らくまだレベルが低い。


緑川のファイヤーボールは簡単に避けられて俺には当たらなかった。 僕は再度近づき、緑川を滅多刺しにした。


「先生、いや緑川! 僕が恨んでないと思った? 僕は此処に転移してくる前に自殺したんだよ! 僕を自殺に追い込む手伝いをしていたんだ……殺されても仕方が無いよね......」


「ハァハァ……だから俺を殺すのか……俺は殺されるような事をしたのか? ただ……助けなかっただけだ……ハァハァ、それだけで殺すのかよ……」


「ああっ」


放っておいても緑川は死ぬだろう。


「そうか……」


緑川はそう言うと悲しそうな表情を浮かべ動かなくなった。


多分、死んだのかも知れない。


もし、生きていれもこの体じゃ魔物に食われて終わりだ。


周りに居る魔物がきっと襲い掛かって終わりだ。





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