第12話 面倒くさい女


今日も座学だ。


今は、20分の休憩時間だ。


だけど、ハァ~なんで此奴と一緒なんだよ。


「今、私の方見たでしょう?」


「見て無いよ……」


「いいえ、見たわ!」


「あのさぁ、塔子は目が真面に見えないんだよな? 解る訳ないだろう?」


「完全に見えないわけじゃないから」


「そう? 僕は見て無いよ! 落ちぶれた令嬢なんて見ていても楽しくないからね」


「あんたね」


まぁ、これ位の意趣返しは良いよね。


塔子は悔しそうに地団太を踏んでいる。


「悪い、流石に言い過ぎた」


「そう……あのさぁ、ここを出た後どうするの?」


「別に……ただ、話の流れだと冒険者になるしかないかもな」


「あの、私も……」


「馬鹿か? 見習い回復師の方がまだ幸せな筈だよ。教会から出ないで一生を終えれば不自由しないで済む」


「だけど! それじゃ……」


「この世界は魔物や魔族がいて治安が悪い……それに俺は、落ちこぼれだよ! 一緒に来てもゴブリンのエサになるか、オークの苗床になるかもよ! だから、回復師の方がまだ無難だよ」


「そうね……ううっ、ううっなんで、私が、こんな思いしないとならないのよ」


「知らないよ」


まぁ、僕のせいではあるけどね。


◆◆◆


残りの期間からして、スキルで復讐出来るのは恐らく1人。

だれを選ぶべきか。


勇者の大樹か剣聖の大河どちらか一人だ。


どちらにするかは運命にゆだねる事にした。


『腐る目』は使えない。


使うなら『ばい菌』だ。


ばい菌を使うには『触れる』必要がある。


◆◆◆


それにしても……面倒くさい。


「なんで、俺が塔子の世話をしないといけないんだよ」


「私だって嫌よ! だけど……目が見えないんだから仕方が無いじゃない」


「はいはい……そうですね、本当に面倒くさい」


利用価値が無くなったからか、僕達の傍にはメイドや使用人が居ないし、居てもなにかして貰えない。


僕は兎も角、目の見えない塔子は何も出来ない。


そんな状態の塔子を押し付けやがった。


「ごめん……」


「まぁ、仕方ないね。此処まで連れてきたんだから、後は出来るよな?」


今、何をしているのかと言えば、トイレに塔子を連れてきている。


「あの…どこが便器なの?」


この世界、流石に便器は座って出来る洋便器だが、いわゆるボットン便所。


勿論ウオシュレットも無い。


「あのな……ここから先を俺がしていいのか? 丸見えになるぞ」


「ううっううっ、だけど……」


「仕方ないな、ほら」


僕は塔子の手をとり便器に座らせた。


「あっ、あの……」


「見ないよ! これ、紙な! ようが済んだら使うんだぞ、僕はすぐにここから離れるから、スカートやパンツをずらして終わったら、戻してから、呼んでくれ」


「わかったわ……よ」


外に出てみたけど、スカートやパンツが擦れる音や、他の音も聞こえてくる。


変態なら喜ぶかも知れないが僕に変な趣味は無い。


「終わったわよーー!」


仕方なく、塔子の所に向かう。


「ハァ~お前、パンツにスカート挟み込んでパンツが見えているよ」


「えっ、嘘……いや、戻してよ」


仕方なく、僕は塔子のパンツに挟まっていたスカートを引っ張りだしてやった。


「ほらよ……」


「ありがとう……」


「お前でもお礼が言えるんだな」


「煩い!」


僕が我慢して塔子の面倒を見ているのは善意からじゃない。


あるチャンスを狙っているからだ。


多分、そのチャンスは……近いうちにくる。




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