第2話 男の娘の入学



男の娘の五十嵐あやめは、母親の友人でありルピナス魔法女学院の学院長の勧めで、本来行く予定だった高校を蹴り、ルピナス魔法女学院に入学することとなった。彼女は小柄で、華奢な体つきに黒い真っ直ぐな髪をショートに切っており、蒼色の瞳をしている。


入学式当日の朝、彼女の部屋からは暖かな陽光が差し込み、優雅な家具や装飾品が部屋を彩る。鏡台の前に座るあやめの姿が映る鏡は、美しい彫刻が施されたもので、部屋全体が上品な雰囲気に包まれていた。

母親は鏡台の前に立ち、丁寧にあやめの髪を結んでいる。彼女は、黒い真っ直ぐなセミロングの髪に、緑色のドレスを着用し、優雅な笑みを浮かべていた。あやめは、鏡越しに母親を見つめながら、不思議そうに首を傾げた。


「別に髪は自分で結べるよ〜?」


あやめは母親にそう言ったが、母親は少しため息を漏らしながら、あやめのほっぺを横に引っ張った。


「いっ!?痛いよ〜」


あやめは少し涙目になりながら母親の方を向く。


「せっかく我が子が高校生になるんだから、こういう日くらいお母さんに髪を結ばせなさい。」

「普通の高校ならわかるけど、行くのは女子高だよ!?しかも魔法専攻の!私男だし!喜んで良いのかわからないよ〜」


あやめはそう言うと、顔を真っ赤にしながら両手で顔を覆った。


「だからこそ身だしなみはしっかりしとかないと、ルピナス魔法女学院にはお嬢様方だって沢山居るんだから。」


母親はそう言うと、学校の制服を持ってきた。デザインは上はピンクと白で、スカートは白で丈の辺りにピンクのラインが入っている。その制服を着たあやめは足を内股にして股のあたりを両手でおさえ、恥ずかしがった。


「スカートなんて履いたことないし、恥ずかしいよ〜」

「そんな事で恥ずかしがってどうするの!今日から"女の子"として通うんだから堂々としなさい。」

「はーい…」


あやめはそう返事を返すと、学校へと向かった。

周囲の景色は魔法学院らしく、立派なゴシック様式の建物があり、色とりどりの花々が美しく咲き誇っている。

無事に入学式が終了し、あやめは指定されたクラスへと向かう。教室は1-Bだ。その途中で、慌てた様子でキョロキョロと周りを見回している女子生徒を見つけた。彼女が心配になったあやめは、彼女の元へと向かった。


「どうしたんですか〜?」


あやめが話しかけると、その女子生徒はビクっとしながらこちらを振り向き、あやめは首を傾げながら、彼女をじっと見つめた。綺麗な金色の真っ直ぐな髪にショートヘアーで、鮮やかな緑の瞳…背はあやめと同じくらいだ。彼女はあやめに見られたのが恥ずかしかったのか、両手の人差し指をもじもじさせ、顔を真っ赤にしていた。


「えっ!?えっと…あの…その…きょ…教室の場所がわか…わからなくて…」


彼女は自分が向かうべき教室の場所がわからず困っているようだ。それを理解したあやめは彼女にクラスを聞いた。


「あなたのクラスはどこなの〜?」

「えっ…と…1-B…」


なんとその子は、あやめのクラスメイトだった。あやめは目をキラキラと輝かせ、彼女の両手を握った。


「ほんと!?私も同じクラスなんだ〜!一緒に行こ〜?あっ自己紹介まだしてなかったね〜!私は五十嵐あやめって言うの。あなたは?」


金髪の少女は少し恥ずかしがりながら言った。


「私!?えっと…二木セナ…」

「ん〜?じゃあセナちゃんだ〜よろしくね!」


あやめは、彼女に右手を差し伸べ、一緒に楽しく会話をしながら教室へと向かった。これからあやめの新しい学校生活が始まる。



 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る