第38話 閲覧注意 イイダの心を殺す方法②
自分のされていることはレイプと言えるのだろうか。
男女2人とも、今行われている性行為には同意がない。じゃあ、これは誰の同意の基で行われているのだろうか。
終始、部屋からナベシマの大きくて下品な笑い声が響き渡っている。
俺は必死に目を瞑った。何も起きていない。何もされていない。と何度も何度も頭に言い聞かせた。それでもナベシマが耳元で今の状況を伝える。嫌でもその言葉から自分が何をされているのか認識してしまう。
涙とヨダレで俺の顔はグシャグシャになっていった。
「殺してください。殺してください。」と俺は何度も言った。
身体の上に温かい水滴が何粒も落ちてくる。これは汗なのか涙なのか、もうそんなのはどっちでもいい。早く終わって欲しい。
そして俺の生理現象によって、その行為が終わることを許された。しかし、その終わりは行為だけじゃなく全ての終わりを指すのは明確だった。
俺は自分の性を呪った。
「黒瀬さん、コレで君もお姉さんと同じだね」
とナベシマが囁いた瞬間、俺の中にある今まであった大事なものが全てグチャグチャにミンチにされて壊れた。
泣きすぎて叫びすぎて頭がガンガンと痛む。意識がぐわんぐわんと遠のく。インフルエンザの時に見る夢のようだ。
そこに1匹の黒猫が頭に浮かんだ。
『あ、猫だ!。猫はお好きなんですか?』
…冬梅さんの声。何故。こんな記憶存在しない。
…いや。本当にそうだろうか。俺が監禁されるのは今日が初めてだったろうか。前にも…。前にも…。
『ごめんなさい。黒瀬さん。少し痛いかもしれないんですけど』
そうだ冬梅さん。どうしてここで。こんな時に思い出したんだろう。君の暴力的な一面を。暴力?君の強さか。
俺は今まで何も包み隠さず自分を見せて生きてきた。だが、今日をもって他人には決して見せることが出来ない自分の一面が産まれた。でも、それは遅すぎたくらいなのかもしれない。
「…」
どうやら少し眠ってしまっていたようだ。
付けられていた首輪と手足の拘束バンドが外されたことで目を覚ました。
俺はここでようやく目を開けることが出来た。そこで最初に目に入ったのは鮎川の後ろ姿だった。ヒールの入ったブーツがコツコツと音を立て部屋から消えていった。
「は〜い。お疲れ様。黒瀬さん。どうだった??」
とナベシマは俺が横たえるベットの隣に座った。
「…」
「大丈夫。君の義理のお兄さん、あ、お姉さんは大丈夫だよ!。まだやることがあるから死なない!」
ナベシマは笑顔でタブレット端末をいじっていた。まるで自分の捕まえた昆虫を見返しているようだった。
そして端末を俺の顔に近づけた。そこには先程の俺たち行為が映っていた。
「さぁ君の残りの役割は一つ!。法廷で柊木アナウンサーを無罪にすること!そして冬梅桜を社会的に殺すこと!!」
「断ったら、その動画か…」
「そうだね。期待しているよ!黒瀬弁護士!」
と俺の肩をポンと叩き、ナベシマは部屋から出ていった。
さっきまで、あんな事があったのに俺は柊木の弁護のことしか考える事ができなかった。
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