第20話 ホラー回 真白ちゃんが殺す⭐︎

柊木リョウゴが逮捕される6時間前


 柊木と共に少女を騙しレイプした男、Xテレビ人事部長の丸井はホテルにいた。


 全職種合同企業説明会のスタッフとして参加するためだ。


 丸井はこの説明会に胸を躍らせていた。何故なら丸井にとってこれは新たな獲物探しの時間だからだ。


 テレビの世界、アナウンサーに興味のあるウブな少女を探す。それを人気アナウンサーの柊木が食事に誘い込み眠らせる。そしてレイプ。いつもと同じ手法。だがこれで失敗したことはない。


 大半の女は柊木とヤッたと勘違いする。自分が柊木さんの前で眠ってしまったから自分が悪いと攻め込み警察に行かない。何か言ってきた女は、レイプ中の動画で脅す。こんなにも上手くいくとは思わなかった。日本の法律と男尊女卑に感謝が止まらない。


 さて今回はどんな女の子に出会えるかな…と丸井はエレベーターの▲のボタンを押した。


 そしてエレベーターに入り11階のボタンを押した。すると4階で制服を着た少女達が入ってきた。


 修学旅行の中学生か…ちょっと若すぎるがまぁ悪くないと思ったのも束の間、20人くらいの少女が一気にエレベーターの中に押し寄せた。


 あまりの人数の多さに丸井は指一本動かすことができなかった。息をするのもやっとだ。そしてようやく、この状況の不気味さを感じ取りはじめた。


「すみませんお嬢ちゃん達…おじさん苦しいから何人か降りて貰えるかな?東側と南側にもエレベーターあるから…」


と言ったが少女達はクスクス笑うだけでエレベーターから降りてくれなかった。


 改めて少女達の風貌を見て丸井はギョッとした。全員黒のセーラー服におかっぱ姿。自分の娘が中学生だった時を思い出しても重なる部分はない。とても不気味で生きている人間とは思えなかった。


「ひっ!…何だよお前ら…?」


「「白ちゃんだよー」」

「「私も白ちゃんだー」」

「「僕も白ちゃん!」」

「「私も〜」」

「「白ちゃん!白ちゃん!」」

「「白は私だよー」」

 エレベーター内にいる20人が一斉に喋りはじめた。丸井は自分が夢を見ているんじゃないかと思った。


「な…何が目的なんだ…」丸井は掠れるような声で言った。  


「「真白マシロちゃんが殺すよー」」

「「真白ちゃんがお前を殺すよー」」

「「真白ちゃんが首を切るよー」」

クスクスとまた少女達は一斉に笑った。


「ま、まし…ましろ?」と言った瞬間、人が密集し熱気こもるエレベーターの中で、自分の首に冷たい何かが当たった。だがそれが何か確かめるために首を動かすことはできなかった。


 そこから沈黙するエレベーターの中で「私が真白ちゃんだよー」という声が響き渡った。

「は、はへ?」


「真白ちゃんね、お前を殺すの」


「はっ…はっ…いや、やめて下さい…」


「ダメ。真白ちゃんはねお前を殺すの」


「どっ…….ど、し…て」


「それはお前が…」と言って真白ちゃんと名乗る女は黙り込んだ。丸井は反射的に自分の今までの犯行を思い出し、言い訳しようと試みた。


「あっ…そ、それは柊木というアナウンサーが、あいつが…」


「忘れちゃった!」と丸井の言い訳を遮り真白ちゃんは大きな声で言った。その瞬間少女達が大きな声でゲラゲラ笑い始めた。


「「「真白ちゃんが殺すよー!」」」


「ひっ」という言葉を最後に、丸井は2度と言葉を発することはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あら、この西エレベーターまだ修理中なの?昨日もバリケード置いてあったけど。」


「工事の人が入るって言ってたけな。ちょっと部長に確認…って何やってるんですか?!勝手にボタン押しちゃダメでしょ!」


エレベーターはポンと音が鳴った。


「きっと工事の人がバリケードを持って帰るの忘れちゃったのよ。ほら来たわ。」


チンと言ってエレベータの扉が開いた。


「「ぎゃあああああああああああ!!!!!」」


そこには中年の男が首から血を流し死んでいた。

それは頸動脈を切断するほど深く首が切られたようだった。

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