第10話 初めてましてレイプ野郎
「復讐はなにも生まない」って言葉誰が考えたのかしら。
確かに私もそう思うわ。
だって…
貴方はもう地位も名誉も…何も生み出すことが出来ないじゃない。
東京にあるXテレビのインターン初日は、説明会と自己紹介、後は軽い発声練習をする予定だ。このインターンシップの日程は全部で2週間。
私はこの2週間でするべきことは2つ。1つ目は柊木リョウゴの髪の毛を採取。藤田の赤ん坊、藤田とDNA鑑定にかける。2つ目は、柊木リョウゴを誘惑して私をレイプさせる。そしてその時の証拠を残して警察に行く。
うん大丈夫。こなせる。
私が希望したのはアナウンス職。
藤田と高瀬さんをレイプした柊木アナに接触をするためだ。
入館書をもらい会社に入った。そして最初に案内されたのは会議室だった。
机の上に自分の名前が書かれたネームプレートがあった。社員の方からこのネームプレートを胸に付けてくださいと言われた。
私はネームプレートを付けながら周囲を見渡す。10人くらいの学生。男が3人女が7人だった。女の子はどの子も容姿が淡麗で姿勢がいい。それに加えて何か特技もあるのがアナウンス志望の学生だ。女性でアナウンサーになる子は才色兼備だ。男の子の容姿はそこまで求められていないのか、それでもアナウンサーらしいスペックは高そうだった。
15分くらいに経ってから人事の男2人と、そして柊木リョウゴが部屋に入ってきた。
やっとご対面だ。藤田と再会してから、高瀬さんの家で話してから3週間。やっと会えた。柊木リョウゴ。
180センチは越える身長に、髪はワックスであげている。肌も綺麗。縁の細い眼鏡は知的な印象を与える。優しい物腰で、低くゆっくりハッキリとした声。と見せかけて、時たま入る毒舌はお茶の間を沸かす。
「アナウンサーはただ原稿を読むだけではありません。人々の心や想いをテレビという画面を通して伝える仕事です。テレビは世界を知る窓なんです。」
柊木リョウゴは爽やかな笑顔で言った。コイツは裏で何人もの女の子を陥れたクズなのに。いざ会うと、その意思のある強い瞳に騙されそうになる。
私は復讐のためにここに来たのだ。周りの女の子は柊木はのことを尊敬の眼差しで見ている。
この後、人事部長による説明会が終わり、各々自己紹介を済ませて発声練習をした。
柊木リョウゴが主導で。
「あーーーーあ!え!い!う!え!お!あ!お!」
「かーーーーか!け!き!く!け!こ!か!こ!」
インターンシップに参加した女の子達は私以外、アナウンススクール、通称アスクに通っていた、もしくは現在進行形で通っている。そのため発声が良く出来ている。
そのため私だけ上手く発声が出来なかった。よく皆腹から声を出せるなと関心するしかなかった。
「冬梅さんでしたっけ?発声練習は初めて?」と柊木に声をかけられた。もう来た。チャンス。
「はい。独学ではやっていたんですが。」
「凄い!独学でここまで出来たら立派だよ」と爽やかな笑顔で柊木は答えた。
私は頬を赤くした。わざと。
高瀬さんも藤田も(恐らく)処女だった。2人しかデータは無いけど柊木の好みは恐らく処女。
同じインターンシップに選ばれた女の子達も、美人は美人だが、どこかあどけなさが残る。
でもアナウンサーはインターンシップの選考には介入しないよな。じゃあ柊木が事前に人事に伝えたのかな。まぁ柊木ほどの力がある人ならば可能かもしれないが。
とりあえず頬を赤く恥じらったからか、柊木は頻繁に私のところに来て発声や滑舌のコツを教えてくれた。柊木は教えるのが上手かった。おかげで最初よりは幾分か上手くなった。
こうして1日目は大きなトラブル無く終わった。
私は藤田の家(今はイイダさんが住んでいる)に行った。部屋に入ると赤ん坊にゲップを出させようと格闘するイイダさんがいた。
この人が子供を育ててるのがどうも面白くて、ついクスリと笑ってから「ただいま」と言った。
イイダさんは赤ん坊のゲップがようやく出て「おかえり」と言った。
「冬梅どうだった?」
「発声練習しすぎて喉痛いし、この竹垣に〜の早口言葉言えないし、私があのメンバーの中でドベだよ」
「お前なに、ただインターンしに行ってんだよ」
とイイダさんは赤ん坊をあやしながら言った。普通の人はインターンをしにあそこに行っているだけどな。
「このお姉ちゃんバカでちゅね〜」とイイダさんは赤ん坊に向かって言った。この赤ん坊、仮に私が仕事に失敗したら本当に中国に売るのかな。こんなに溺愛してるのに。
私はソファに座ってから「名前なんだっけ?」て聞いた。
「ヒソカだっつーの」
「あぁそうだ。ヒソカだヒソカ。前島密の密。え、イイダさんがずっとヒソカの世話してるの?」
「まさか、日中はシッターに任せているよ。」
ふーんそうなんだと適当に返事をして私は鞄からジップロックを取り出しテーブルの上に置いた。
イイダさんはチラッとテーブルを見て
「無事髪の毛は採取できたんだな」と言った。
「うん。スーツに付いていた髪の毛だから間違いない。」
「結果が出るのは2週間だ」
「ちょうど私のインターンが終わる日だね。」
「ねぇイイダさん、柊木めちゃめちゃいい奴なんだけど」
「当たり前だ。日本で1番のアナウンサーだぞ。」
「そんな人がレイプをねー。」
「芸能界、テレビは多いぞ。」
「ふーん」
私はイイダさんとヒソカの所に行き、ヒソカのほっぺをツンとした。
「ねぇヒソカ。今から君のパパ地獄に落とすんだけど宜しくねー」と言った。
「どんな挨拶だよ」とイイダさんは笑った。
「冬梅、お前には人を惹きつける不思議な魅力がある。出会った時からそう感じていた。今回の柊木も大丈夫だろう」と言った。
私自身もそう感じたことは何度もある。多分大丈夫。柊木は私を向く。
原稿作成、取材現場の動向、カメラテスト、企画書作成、TikTokでXテレビの宣伝などをし、2週間のインターンシップは無事に終わった。
人気アナの柊木リョウゴは初日しか顔を出さなかった。そりゃ当然だ。ご多忙を極めるアナウンサーだ。初日で髪の毛を回収して良かったと何度も思った。
私は可もなく不可もなくこなすことが出来た気がする。下手に知識をひけらかさず、分からないところは「教えてください!」と可愛い女子大学生ができたはずだ。
そして、インターンシップ最終日、Xテレビを後にしようと会員証を受付で返していたら、後ろから「お疲れ様」と声をかけられた。
振り返ると「柊木リョウゴ」がいた。来た。かかった。初日の品定めが上手くいったのか。ちょろい。私は内心喜んだのと同時に疑問に思った。
あんな、たかだか1時間の発声練習でどうして私を選んだんだろう。特に私は大きなアクションは起こせていない。いや釣れたことには変わらないけど。まぁ私の魅力と天が味方をしたのだと思おう。
「あ!!ひ、柊木さんどうかしましたか?」
「インターンシップどうだった?」
柊木はトレンチコートを着て、カバンを持っていた。どうやら仕事終わりのようだ。
「あ、えとはい。本当に夢のような時間でした。それと同時にアナウンサーへの夢への思いが一層強くなりました!」
「あぁ良かった。そう言ってもらえて嬉しいよ。」
「冬梅さん」
おぉ名前を覚えているのか。
「はい!」
「このあと一緒に飲みに行かない?」
「え?飲み…?良いんですか?」
「もちろん。君のことをもっと知りたいしね」
「え…!?」
私は頬を赤く染めて目を泳がせてから
「ご一緒させていただきます…」と言った。第2関門突破。
柊木はニコッと笑って、私達はXテレビを後にした。
1件目が飲み終わる頃にはDNA鑑定の結果が出る。
始まるよ。藤田。高瀬さん。
復讐がー
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