死人に口無し 〜軒原麻衣の被害状況と田中結梨の決意〜

軒原麻衣がいじめを受け始めたのは高校1年の4月。

同級生である黒樺清華に妬みから嫌味を言われる事が多くなった。

そこから次第にありもしない罪をかけられて、晒し上げられることが多くなった。

吹奏楽部に所属していたが、清華に楽器を壊され、退部した。


最初は遊びの範疇と割り切っていたが次第に耐えれなくなっていった。

最終的にいじめは殴る、蹴る、水をかける等にわたり、耐えきれなくなった結果、

高校2年の6月に校舎から飛び降りて自殺。


「そんでね〜、一番面白かったのは…やっぱり死んだ瞬間かな?あの捨て台詞、ちょっとかっこよくて面白かったわ。映画の主人公みたいで」

と笑いながら清華は話す。




外はざぁざぁ降りの雨。6月に入って一番と言われる雨の日だった。

3階にある図書室で、事件は起こった。


「さーて、今日もいっぱい構ってあげるからね〜、麻衣ちゃ〜ん」


そうやっていつも通りいじめ始めようとする清華だが、今日は様子が違った。


「あれぇ?無視ぃ?もぉーっとお仕置きがひどくなっちゃっても良い訳ぇ?」

そうやって麻衣のことを追い詰めていく清華。


「良いの。今日で全部終わりだから」


と言って麻衣は図書室へ駆け込んだ。

面白がって、クラスメイトたちは麻衣を取り囲んだ。


「全部終わりってなんだよ、腹痛ぇわ」と言って男子が笑った。

「馬鹿じゃねぇの?」と日常的に暴言を吐いていた男子も加わった。


その人混みをかき分けて、清華が現れる。


「さぁ麻衣ちゃん、説明をして…って…」


掴みかかろうとした清華の手をするっとすり抜けて、麻衣はそのまま地面に落ちていった。


死に際に放った一言は、


「ごめんね清華ちゃん。今は構ってられないの」


だった。


「や、やばいよ。飛び降りちゃったじゃん、麻衣…どうすんの?」


「どうするも何も…最後に麻衣に死ねって言ったのはお前じゃん」


「は、はぁ?私のせいにする気?アンタだって共犯だったじゃん」


口々にクラスメイト達は罪を擦り付け合う。

そんな中、清華はひとりでに笑い出した。


「はは、構ってられないだってぇ。ウケるぅ…じゃあ…次構ってくれる人

見つけなきゃ〜」


と言って笑い出したのだ。


「じゃあ、明日から皆敵同士だよ?キミの隣の人が、キミの罪を告発して、麻衣みたいに裁判にかけられちゃうからねぇ?」


そう宣言した清華は、都合よく悲しむふりをして、全校集会でスピーチをした。


「私わぁ、こんなことをした人を、許せません…」所々泣き真似をしながら。


クラスメイト達は異議を申しもせず、ともに悲しむふりをした。



被害者である軒原麻衣は、清華の捨て駒の玩具でしか無かったということだ。

報われない。

精神がおかしくなりそうになりながらも私は話に耐えた。でも、麻衣ちゃんはもっと辛かったはず…


「そうだったんだね…分かったよ」


「あ〜、この話傑作すぎて誰かに話したかったんだよね〜!」


まるで、数分の面白い出来事を語るように清華は話した。

17年の話を、たった1分に纏められた気分だ。


「ってことで誰もアンタのことは裁判にかけない。その代わり、私の味方、よろしくね!」


友人の代わりに復讐をするために、

吐き気がするほど嫌なジメジメした空間で友人を殺した奴と同じ空気を吸い、行動する。


これが私のスタート地点だ。

黒樺清華…ううん。

この悪魔を生かしておいてはならないと、強く私は思ったのだ。

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