裁判長、黒樺清華の思惑

「あ゛…う゛…わ゛…だ、しが…や゛…りまし…た…」


ああ、今日も気分が良かった。

最後にぎゅっと首を絞めたときの青白い顔も、ゴミを投げつけられた時の顔も。

どれも傑作。最高。

全く。学級魔女裁判が嫌なら嫌って言えばいいのにね。

まぁ、この裁判をやめろって言われてやめるかって言われたら答えはNo。

こんなに楽しいものをやめれる訳がない。


これはいじめじゃない。娯楽だよ娯楽。

娯楽にされないためにはそれなりの人にならなきゃ。

そうなれてないのが悪いんだよ。ねぇ?


私がこの娯楽を始めたのはたった5歳のときのこと。

私の母は俗に言う教育ママという奴で、私は幼稚園生用の塾に通っていた。

でも私は私立幼稚園に落ちた。

だから地元の幼稚園に通った。

そこで、私の母は周りのお母さんたちをいじめ始めた。八つ当たりって奴だと思う。

チクチクした嫌味、物を盗む・壊す。

私は母になぜそのようなことをするのかを聞いた。

すると、

「あの人達はいじめられて良いだけのことをしたのよ。正当よ、正当な天罰なの」

と母は答えた。

だから、私は「気に入らなかったらいじめて消し去れば良い」と学習した。


私はお遊戯会の主人公をすることができなかった。多数決で負けた。

気に入らなかった。悔しくて。

だから、私は主役の子の衣装を絵の具で汚して、ハサミで切り裂いた。

そして、先生に多数決をしようと言った子の名前で告発した。


先生は、すごい剣幕でその子に怒ってた。

お遊戯会は保護者もたくさんいた。

だから、ほとんど保護者も公開処刑だった。

他の人達は何も疑わずにその子を責め立てた。

その子は次の日から幼稚園に来なくなった。


その時、私はとてつもない快楽と悦楽に溺れた。

何だか脳が蝕まれてくみたいに。


小学校では、絵画のコンクールがあった。

私の作品は佳作で、同じクラスの別の子は最優秀賞で発表会に行くことになった。

私は自分の作品にペンで「下手」「バカ」等と書きなぐって、先生の元に行った。

そして、最優秀賞の子の名前で告発した。

最優秀賞の子は取り消しになった。学校で居場所が無くなって不登校になった。

佳作だった私はそのまま最優秀賞に繰り上がって発表会に行けた。

当然だよね。私、頑張ったもん。


中学校の時、クラスで気に入らない子がいた。

わざとその子と仲良くして、1年半もかけて声のデータを録音した。

声を編集して、いじめられている風の音声データを作って告発した。

その子は、「なんで、信用してたのに」ってさ。

信用する方が馬鹿じゃんね?私が気に入らなかったんだもん。


そのうち、私を自己中って呼ぶ奴が増えてきた。

でも、そういう奴らは処理しやすい。だって、グループでいるから。

ターゲットの1人の机に、油性ペンで悪口を書く。

それを、グループのもう一人の名前で告発する。

そうすれば、何もしてないのにそのグループは崩壊する。

ああ、面白い。

まるでダルマ落としが崩れるみたいだ。

私は一個しか崩してないのに、周りも勝手に自分で崩れてくる。

その様子がとても面白くて、愉快だった。


高校受験をした。難関と、いま通ってる学校。

結果難関に落ちた。

そこの1位の突破者は、軒原麻衣だった。

なのに麻衣は私の通ってる学校へ入学してきた。

「こっちの方で学べることもあるから」って。

おまけに麻衣は私より可愛かった。

入学して早々、私の麻衣への恨みは高まるばかりだった。

だから、いつも通り裁判にかけた。

でも、中々麻衣は屈しなかった。

面白い遊び道具だ。


でも、ついに今年の6月、麻衣が自殺した。

自分の前で。

まるで、ボンっと炎が燃えるような音がした。

グシャって何かが飛び散る音がした。

周りの人たちは焦ってた。何でだろ。


いつしか私の裁判は、ありもしない罪をかけることから

「学級魔女裁判」と呼ばれる様になった。


でも、これは正義のためだ。

そう。私のための…


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