第10話
店を出て、夜明けの町をゆっくりと歩く。
背中を丸めて歩くミチコに若い時のような勢いがないことに気づき寂しくなるが、視線を落とすと下っ腹の出た自分の崩れたシルエットが目に飛び込んでくる。
十年は長い。すべてを変えてしまうほどの力を秘めているのだ。
「青い鳥は私たちの夢をかなえたけど、私たちを幸せにはしなかったよね」
「そうなのかもしれないな」
「でも、望んだことだから・・・」
「そうだな。あのとき、強く願ったことだよな」
「後悔してない?」
「してない。ミチコは?」
「ちっとも。もう一度見たいくらい」
「もう一度か・・・今度は何を願う?」
「うーん」
前を歩いていたミチコが立ち止まり考える。
空を見上げると、あの日の朝と同じようにぼんやりと白い光が広がりつつあった。
まさかいないよなと思いつつ、青い鳥が飛んでいないか、体をひねりながら、視線をどこまでも回した。
「何やってんの」
いつの間にか隣に立っていたミチコが笑ってこちらを見上げている。
「行こっか」
「うん」
俺たちは白々と明けていく二丁目の町を、ゆっくりと並んで歩いていった。
二丁目の青い鳥 梅春 @yokogaki
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