第2話
春と夏って、ほんといいコンビだよね。
そう言う友達もいれば、なんかバカみたいと皮肉な微笑を浮かべる友達もいた。
どっちも本音だと思う。
「夏雄、今晩なにが食べたい?」
「うーん、和食?」
「なんで疑問形?」
「なんとなく」
「変なの」
「だって、特に食べたいものもないから」
「そっか。だったら、私の好きなもの作っていい?」
「いいよ。なに作るの?」
「夏雄の喜びそうなもの」
「なんだそれ」
「へへへ」
笑顔がないわけではない。
むしろ二人の日常には笑顔があふれている。しかし、なんというか、笑顔パワーの総量というか、そういうものがぜんぜん違っている。
ソーラーシステムに例えると、前は一日で一か月分の電力を作れたが、今は一週間あっても作り切れない、そんな感じだ。
加齢といえば、それもある。
十九で春子と出会って、もう二十年近くなる。
いつでも結婚できるからいっかと僕たちはだらだらと東京の片隅で同棲していた。
最初に就職した中小企業がブラックで、その後は派遣で働いていた春子と、新卒で入った中小企業はアットホームで長く勤めることはできたが薄給の僕は、都会で暮らす若者としては貧しかったが、毎日笑い合いながら生きていた。
お金なんてなくてもね。
本音でそう言い合える生活がそこはあった。
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