第15話

そう思った時だった――突然リングの拘束が解かれる。


「けほけほっ! けほけほっ! ……っはーっ! ……はーっ! ……はーっ!」


何が起こったのかわからないが生を求めてありったけの空気を身体に取り込む。背中の痛みは想像を絶するものだったが酸素を吸収することで不思議とその痛みもやわらいでいた。


「あなたにはこれから死ぬまで私の赤ちゃん産んでもらうんだから、たかが首絞めで殺すわけないじゃない」


生殺与奪の権利を握っているリングは乱暴にもてあそび、苦悶の表情を浮かべる、感情のある玩具を壊していくことにただならぬ愉悦を感じていた。

下半身の剛槍は高速で血液の循環が行われ、血管を浮かべながら反り返っている。


「でも、どう? イキそうだった? 死にそうだった?」


嗜虐しぎゃくの権化と化した顔を浮かべながら一切悪びれる様子もなく語りかけるリング。

憤る体力も恐怖する体力も残っていないメインはただ無気力に呼吸を貪っていた。


「どう、大分身体も解れてきたんじゃない? そろそろ仕上げと行きましょうかねぇ……うふふっ」


殺人者の笑みを浮かべ、うつ伏せになったメインの腿の外側から自身の足で巻き込むように挟み、その状態で自身の両手で相手の両手を持ち、そのまま後方へと倒れ込んだ。


「なっ……なに……をっ……」

「それじゃあいくわよ。ちょっと痛いかもしれないけどたくさん泣いて、たくさん我慢してね……うふふっ」


リングはメインの両手両足を拘束した体勢で寝るようにして相手の身体を吊り上げた。


「いぎゃああああああああああああ!!!」


痛みの極地に達したショックが全身を襲った。

その瞬間、至極の嗜虐悦を五感で溺れるように浴びたリングの極太竿から今まで堪えていた精液がピュッっとカウパーを追い越し被虐を受けるその背中に付着した。


「……ああっ……! おちんちんが疼く……! 今までずーっっと我慢してたんだけどもうダメ……こんなに可愛い声聞いちゃったら我慢できないわぁ」

「いだいっ! いだいっ!いだいいっっ……!」


天を向きながら白銀の長髪を振り乱し、絶叫という言葉が生ぬるいと思えるほどの金切り声の咆哮が坑内を反響した。


高く吊り上げられた足は膝を直角に曲げ、両足を膝裏とふくらはぎ脹脛ふくらはぎの間にリングの足が支えとなって、脱力することを許さない。

垂れた手首を掴み肩と腕を引きちぎる勢いで猟奇的にストレッチしていく。

天井に吊るされたリングの身体は完全に無防備な状態となり、天国へ連れていかれるのではないというほど身体がアーチ状に反り返る。

白色の乳房が天に大きく突き出され、胸の筋繊維が拡張された。 


筆舌にも尽くしがたい関節の歪みから生じる激痛。

屈辱的な技を前に、メインは妹の前で成す術なくその痴態を見せびらかす他なかった。


「もっと……もっと私を満足させて……! あなたが出せる死に最も近い最高の断末魔を聞かせて!」


バキッ! バキッ! バキバキっ!


「ぎゃあああああ! 腕! 腕がああああああ!」


耳を切り落としたくなる骨の折れる鈍い音がリングの豪槍を大きくした。


「ぎゃああああ! いたいっ! いたいっ! 死ぬうううう!」

「死ねっ! 生きることに絶望し、痛みの快楽に溺れて死になさい! あはははははっ!」


容赦のない締め上げがメインを構成する骨を次々と砕く。


「ああああああああああああ背骨が折れる! いた痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」


バキバキバキバキバキ! バッキ!


「股間が! 割れるっ! 割れるっ! ああああああああ」


ブチブチブチブチッ……バキッ!


馬乗り固めで散々痛みつけられながら何とか堪えていた背骨があっけなく雪崩式に折れていく。


異常なまでに広げられた股関節も膣口がはっきりと見えるまでに満開となっていた口からは痛みの愛液が潮となって吹き出していた。

体の支えとなる全身の骨を砕かれ、いつショック死してもおかしくない生き地獄がメインを襲う。


「おら! もっと泣き叫べよ! おらっ! おらっ! おらあっ! さっさと死ねっ!」


「ぎゃああ! あああああ! あああああ! ああああああああああああああ!」


吊り上がった軟体は骨を感じさせない脱力感で鞭のように手足をプラプラと遊泳させる。

身体が締め上げられると潮を吹きながら絶叫を繰り返す姿は人としての尊厳を喪失していた。


「反応が鈍くなってきたわね。そろそろ限界かしら、今までの子たちはここに来る前に一人残らずイキ死んじゃったのに……さすが宝石所持者だわ」


慈悲無き処刑の数々を驚異的な精神力で耐え続けていたメインにも死期という名の限界が訪れているのは首に掛けられている宝石を見れば一目瞭然だった。

サブと再会した時に煌めいていた白の宝石は今となっては灰色……いやそれよりも暗い黒に近づいていた。


「私のあそこももう一秒たりとも我慢できなくなってるの……ストレッチはもうお終い。メインディッシュの赤ちゃん精液フルコースのお時間よ。あなたなら一人くらいは産めると期待してるわ。私も全力で貴方の子宮を殺しに行くから……っうふっ……ふふふふっ」


地獄の拘束が解かれ、ありとあらゆる骨が砕かれたメインは意識が飛びながら地面に突っ伏した。

その後ろから交尾の体制をとった獣が自らの遺伝子を産み付けるために秘所へ直径五十センチを超えた超極太竿を当てがう。


メインは意識がない。死んだ魚の眼をしているがその膣口は艶めかしく蠕動ぜんどうし、図らずも剛直を受け入れる準備は万端だった。


「それじゃあ……交尾始めるわね。あかちゃん、産むまで死んじゃ駄目よ?」


ズニュ……メリ……メリメリメリメリッ……ブチッ! ブチブチブチッ!


「ぐっ……! ぎっ……! あああああああああああああ!」


パイプ棒を束にしたような剛直がメインの身体と魂を灰色に塗り潰す。

ヒトという理性を失った獣が原始の雄たけびを轟かせた。

意識と全神経が剛直を突き刺された膣口へ集中し、何とかその剛直を我が物にしようと咥えこもうとするが、あまりにも暴力的で破壊的な挿入は膣というゴム肉を内側から引き千切るようにして子宮目掛けて猛進していく。


「おおっ! おおうっ! おーっっ! 入っっったわよお! すごい締め付け。そんなに私の子種がほしいのね。嬉しいわあ……ほらっ……! 私のちんぽ! 受け取りなさい……!」


メインの白桃を両手で力任せに引き寄せ、すでに膣に入っている灼熱の鉄パイプが飛沫を上げながら最奥まで呑み込まれていく。

殺人的な抽迭で串刺しにするたびに呼吸が止まり、引き抜くと突き刺された膣口から血が流れ出ているのではないかと錯覚するほどのストロークだった。


ポールとの戦いに敗れ死辱を味わったメインだったがリングの抽迭は大きさこそポールに劣るものの、鋭く相手の弱点を的確について死に至らしめる処刑ピストンであった。

一突きされるごとに目をグルンッと裏返し、舌を天に突き出して「んぎゃい! んぎゃい!」と奇声を発しながら致死の情欲にしゃぶりつくメイン。

そこにミネ王国第七代王女の面影はなかった。


「きひひひっ! 赤ちゃん! 赤ちゃん! 繁殖! お父様の遺伝子! 繁殖! おっ……! おおぅっ……! 気持ちいいっ!」


真正面から零距離で密着しメインの膣口をエラの張った肉傘で抉り取り、亀頭で腹の肉を歪に引き延ばす。

余りにも長い剛直は一往復抽送をするだけでも常人の三倍の時間を要する。

太く長い五寸釘がこれから産み付けるリングの子種を一滴たりとも溢れ返させないように膣拡張をしていた。

次第に、股関節の筋の切れる音が弱くなり、メインの性器がリングの性器の形に模られていく。


「さすがは王女様のおまんこ! 普通の人間なら一突きしただけで泡吹いて意識飛んじゃうのに……受け止めるどころか私のおちんちんを飲み込もうとするなんて……なんて生殖本能! ああっっ……赤ちゃん! 精液登ってくる! おっ……おおぅっっふ!」


満身創痍の状態から死を誘う苛烈な責め苦を、メインの身体はあろうことか快感として受け入れてしまっていた。

前戯で背骨、肩、腕の骨を折られ、極太抽送で股関節が外れ、筋が切れ、美しいスリットが入る腹部の肉は亀頭の形がわかるほどに付きのばされていた。


「いやっ! やめろ! 離せ! 離せ! はなせ! はなせえええ!」


言葉なのかどうかも判別できない悲鳴と絶叫が音となり、大量の唾となり、リングに降りかかる。

必死に足をばたつかせて抵抗を試みるが汗と精臭で制御がきかなくなった豊満な乳が上からメインの身体をプレスして細やかな抵抗も許さない。

逆に必死の抵抗が仇となり、リングの嗜虐心に益々火がつく。


「いいわぁ……壊しても壊しても最後の一本、一粒が無くなるまで抵抗することを諦めないその心、最高の玩具だわ。でも……その可愛らしくない声はちょっと塞いじゃおうかしら」

「はなせ! はなせ! はなっ! んっ! んんんんんんっっ! んんんんんっ!」


リングのでっぷりと膨らんだ肉厚の唇がメインの唾で潤いを纏ったピンクの唇にかぶりついた。


「ぢゅううううっ! ぢゅっ! ぢゅっ! ごくっごくっごくん! んふっ……ぅ」

「あむ……あむ……んっんっんっんっんんんっ……」


リングの淫口はメインの唇に覆い被さり、そばを啜る勢いで唾と唾液を吸い尽くすと喉を鳴らしながら飲み込んだ。


お返しとばかりに口内で淫らな唾液を生成し、互いの舌を根元から絡ませて強引に吐息ごとメインに分け与えた。

一方的な口淫を拒むことはできず、メインはされるがままに舌を貪られるしかなかった。


「んんんっ……ぷはぁっっ! おつゆも美味しい……」


口での名刺交換が終わると、満足そうに口に垂れた涎を舌を巻いていやらしく舐め取った。


「はぁ……はぁ……ああ……やめ……ろ……やめて……くれ……」


力任せに打ちひしがれていたメインが精も体も力尽き、焦燥感漂う声を上げる。絶望の淵で曇りきった視界に映ったのは最愛の妹だった。


――サブ……いやだよ……サブ……助けて……お姉ちゃん………もう…………死んじゃう…………


嗚咽が混じりながら最後の力を振り絞って視界に移るサブに懇願こんがんした。

すると思いが通じたかこれまで表情変えなかったサブが二歩、三歩とメインに近づいてきた。

その雰囲気は長年どんな時もずっと一緒に暮らしてきたメインだからこそわかる、サブからメインだけに向けられるたった一つの愛情だった。

姉妹の瞳が互いの瞳を映し出す。メインは夢見心地に最期の時間を噛みしめていた。


――長かった……本当に辛かった……私は本当に死んでしまうかもしれない……でも……最後に愛すべき妹の本当の笑顔を見れて良かった……


「ごめんねサブ……お姉ちゃん……サブのこと守りきれなかった……ごめんね……」


力尽きた目からは一粒の涙が零れ、瞳に映る妹の姿を涙で濡らしながら静かに眼が閉じ――ようとした時だった。


「お姉ちゃん!」


サブの声が聞こえる! 一度閉じてしまえば二度と開くことのなかった瞳は寸前の所で持ちこたえた。

――サブはまだ諦めていない! それなのに姉として、たった一人の家族として……諦める訳いかない。

真っ暗な空に一筋の光が差し込んだと信じて止まなかった。


「リングのせーえきたーくさん受精して、たーくさん赤ちゃん、産んでね♪」

「嫌だ………嫌だ…………」


全身に蕁麻疹じんましんのような鳥肌が一瞬にして湧き上がる。

心臓から氷の血液が循環していき、恐ろしい寒波が体温を一気に下げる。

顔面は蒼白になり、死の直前で力が抜けきって痛みを感じなくなっていた全身から止まっていた激痛の信号が脳へ一斉に送り込まれていった。

一筋の光を映し出していた瞳から光がなくなり、阿鼻叫喚の断末魔を轟かせた。


「いやだああああああああああああああああああああああああああ」

「はははははっはははっ!!」


殺人剛直が断末魔をエネルギーに更に一段階、心臓のような脈動を上げながら太く、長く成長していく。

リミッターが完全に外れた性獣はその化け物じみた性器で子宮を突き破ろうと全身全霊の抽送を叩き込む。

あまりの激しさににあばらの骨がいとも簡単に折れ、口から血が吐き出され、激痛と快楽の電気ショックが脳内をスパークさせた。


「やだっ! サブっ! いやっ! たすけてっ! サブっ……!」


必死の願いも闇の中では届かない。


「あっ……あっ! きゃっ……きゃきゃっ……っ! 赤ちゃんお汁おちんちん伝って登ってきた……! 私とあなたの赤ちゃん登ってきた!」


最初にして最後の綱。決して切れる筈のない線は最悪の形で断ち切られた。


「もっと! もっとよ! ありったけの絶望を……あさましい声と骨と血と肉で私にぶつけなさい!」


死神の鎌が完全に首に掛かっているにも関わらず、メインの身体は生物の宿命なのか牝の本能なのか最後の時を前に愛液をまき散らしながら死悦を愉しんでいた。


「やだあああああ! なんでよおおおおお! サブううううう!!」


「あぁもうイク! イク! イクっ! イクううううううううううううううう!」


ドッ! ドバアアアアアアアドブッ! ドブッ! ドブッ!

射精――着床――受精


制御がきかなくなったスプリンクラーのような激甚量の精液が容赦なく子宮を襲う。

妊娠線が破裂しそうな程にリングの遺伝子で満たされた水風船が精子一つ一つを我が子として迎え入れるために子宮の中を彷徨っている。

拡張された子宮内は白で埋め尽くされているがそれでもリングの射精根から射精が終わる気配が見えない。


「イクっ……イクぅ! おっっ! おぅぅッっ! 止まらない……! 赤ちゃん止まらない! おおーっっぅ!」


終わらない吐精を一身に受け続ける母体からは逆流した白濁のオタマジャクシが大地を潤している。


「まだ……っ! まだっ……でるっ……! おおっ! 死ねっ! 死ね! 死ねよ」


折れた骨を鳴らしながら身体が雷を打たれたようにして弓なりに不規則に激しく痙攣する。

死辱を浴び続けた母体の口からは精液のメレンゲが咲き、目玉は上へ白く剥き、天国へ向かっていた。


そして生命の神秘を司る子宮ではメインとリング、二人の遺伝子が一つなった。


「あ……あっ……あか……ちゃん……私の……赤ちゃん」


大きく膨らませた我が子をさすりながらメインの意識は闇の中へと消えていった。


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