第10話

   第三章  純血族―リング


整地された坑道を一人、足音一つ立てずに歩んでいく。

坑道の薄暗いライトが銀色に染まった髪を白く照らし、無機質な呼吸を繰り返しながら機械のようにしてコアの方向へ進む頭の中では、ポールが断末魔に残した最後の言葉と飽和状態になっているサブへの想いが駆け巡っていた。


鉱山の核に近づいていくにつれ、首にかけているダイアモンドの宝石が薄黒く変色していっているように見えた。

宝石秘められた闇の力を開放したことで強大な力を得ることができたがそれと引き換えにメインの心は徐々にむしばまれていく。

妹の救出以外は自身の死であることと同義、むしろ死よりも重い結末と考えているメインに今更自身の身を案じるつもりなど毛頭なかった。

この身が朽ち果てようとも最愛の妹だけは助け出す――執念ともいえる不屈の心は困難を乗り越えより一層強い想いへと変わっていった。


視察の時に見た景色を頼りに進んでいくと宝石のプラネタリウム、採掘場のコアに到着した。


神秘の間は多種多様のきらびやかな宝石が互いの輝きを比べ合うようにしてぴかぴかと照り輝いている。自然に作り出された幻想的な空間の中に紛れ込む黒の気配を感じた。


――サブ……ここに…いるのか…サブ? どこにいるんだ…! 出てきてくれ!


焦る気持ちを抑え、心の中で叫びながらサブの気配、匂いがどこかに残っていないか、コアの至る所に意識を張り巡らせる。

するとメインの心の呼びかけに応えるようにして暗闇の中から一つの影を覗かせた。


「あぁん…これはこれは…メイン様じゃありませんかぁ」


からみつくような糖度の高い猫撫で声。

姿が見えずとも妖艶さが伝わってくる鼻腔をくすぐる甘い香り。

影のシルエットしか見えていなかった肉体が鉱石の光に照らされメインの前に映し出される。場違いともいえるハイヒール音が坑道に似つかわしくない音を奏でると、ウェーブのかかった金色のロングヘアーをたなびかせた女性が現れた。


黒色の光沢感際立つボンデージを身にまとい、左右のくびれた柳腰を交互に突き出しながら煽情的に緩歩してくる。

歩みを進める度にたぷたぷと揺れる豊満な乳房は肉欲を滾らせるには十分過ぎる大きさだ。

その巨果実の肌色を押しとどめようとボンデージも必死に布地を伸ばすが肉感溢れる乳肌の前では下乳を隠すのが精一杯だった。


煽情極まる発情牝を前にしてもそれが最愛の妹でないことを視認するとメインは無情の尋問を開始した。


「サブをどこだ。答えろ」


抑揚のない鋭く凍り付いた声が冷たく辺りに響き渡る。


「んー? 誰かなーサブサマって……ごめんね……うふふっ」


能天気な口調で女は白を切った。挑発的な話し言葉一つ一つにも甘美な吐息が混じる。


「私はねぇ……リングっていうの。可愛い女の子に目がなくってぇ……可愛い子を見ると身体が火照っちゃって……アナタも私のものにしてあげるから……うふふ」


大胆に開かれた胸元からは溢れ出んばかりの圧倒的な乳肉が互いに押し潰し合い、長く深い谷間を作っていた。

渓谷を触手が輪のようにして巻きつき、分泌される粘液と汗が混じり合って粘液の湖を造る。

谷間から滴り落ちる触粘液がへそを伝い、恥骨に流れ落ちると膣口が触手液に反応して体温を上昇させた。

スーツから漏れる蒸気が淫臭を放つ。


「だから……お姉さんの遊び相手になってね」


手には鞭のようにしなる薄紅色の触肉と乳白色の触手血管が浮き上がっている。

触手鞭を握っている右手首にはイエロージルコンの宝石が装飾されたブレスレットが禍々しい瘴気を黒く輝かせていた。


「サブはどこへやった。答えろ」


妖気なオーラに一切怯むことなくメインは再度問う。


「うふふ……しらない」


あくまで白を切るリングの頭の中は邪に支配されている。

美王女を前にして自制のきかなくなった淫蟲が粘音を轟かせ自身の身体に巻き付いた。

ゴムを絞るような拘束音がうねりをあげ、巨乳果を更に締め付ける。

圧力に耐えられなくなった乳肉が乳首を覆っていた触手を押し出し、桜色の美味しそうな乳首が勢いよく飛び出した。

縛り付ける触手の間から暴力的にはみ出る乳肉はその余りある大きさを誇張する。

隆起していた恥骨からも決壊寸前の秘粘膜から愛蜜が粘り気を含ませ、とろりとしたたり落ちていた。


「己の色欲を満たすために非道を行う猿が」


怒気を含んだ低い声がメインの宝石が灰色に光輝き、ポールを倒した時と同じツルハシが右手に握られる。


「物騒でいいわぁ……あの先端で胸を貫かれたらどれだけ血が飛び散ってしまうのかしら……」


感情を表に出さないメインとは対照的に性的な表情を崩さないリング。

その手には脈動する触手鞭がしなりを上げながら今か今かとメインを捕捉している。

両者はそれぞれ手に持つ武器に力を込め臨戦態勢に入る。


自然が作り出す、美しくも幻想的な核の中で二人の「光」もとい「闇」がぶつかり合った。


闇に浸蝕され、灰色の正義の光を放つメインと柔媚で色欲に染まった桃色の闇を放つリング。

最初は互いに様子見をしていたが、一秒でも早くリングを排除したいメインはこのままではらちがあかないと痺れをきらし先手を打った。


――振りで決めるっ……!


電光石火の早業で予備動作なく姿を消し、一瞬で射程圏内に飛び込むと手首のブレスレットめがけて裁きのツルハシを一直線に振りかぶった。

リングはその圧倒的なスピードについていけてないようで、メインが立っていた所にまだ視線を残している。


しかしリングのテリトリーに踏み入れた刹那、過去へ見ていたはずの幻惑的な眼と眼が合った。

それでもメインは一切速度を緩めることなくブレスレットの宝石に狙いを定め、空間ごと砕かん勢いでピッケルを真横から水平に振り抜いた。


砕破の感触。手にはポールの胸の宝石を砕いた感覚と同じ手応えが感じられていた。


ずっ……ちゃぁ……! ……ずぷぷうっ……


渾身の一撃が粘り気のある異形に衝撃音もろとも呑み込まれていく。ツルハシが捉えたのは宝石ではなく触粘液を滴り落とすローパー状触手の塊だった。


突如として眼の前に現れたローパーは一本一本の触手が縫い合わせるようにして互いに交じり合い、大人の大きさほどある巨大な触塊として蠢き始めた。ローパーはダイアモンドも砕く衝撃をスポンジのような弾力性で蟻地獄のように吸収し、ツルハシごと呑み込んでいく。


メインは咄嗟とっさに呑み込まれそうになっていたツルハシを引っこ抜き、着地と同時にバックステップ。慌てて距離をとる。


「すっっ……ごい力で……とても気持ちよかったぁ……」


プシャッ!


何故か攻撃を受けていないリングが激痛のオルガスムスに達すると、股を濡らし潮を吹いた。


ローパーが吸収した衝撃は根を伝ってリングにも届いていた。しかし、リングはその衝撃を淫核を始めとするで身体全体で受け止め愉悦に変えていた。


恍惚こうこつな笑みを浮かべて局所から大量に垂れ落ちる愛蜜液を今度はローパーが触媒として吸収する。

水分を吸い上げた肉触手は粘液を吹き出してより一層膨張した。

ローパーはメインが地面を蹴るときに生じる大地の変化を感じ取り、蹴るときの重心の角度からメインが飛び込んでくる場所を察知し神速の攻撃に対応していたのだ。


「さぁ……もっと私を傷つけて。壊して……気持ちよくさせて……うふふふ」


反撃とばかりに胸に巻き付けている触手鞭が鋭くしなやかに波状攻撃をしかける。


触鞭は変則的な動きで襲い掛かってくるため予測がし辛い。

直撃の直前まで引き付けてから間一髪でかわし続けていたが伸びきった後、僅かにしなる触手が白肌をはたいた。


「……っ」


かすり傷だったが鞭打を受けた肌には蟲粘液が付着し、滲むように赤く腫れていた。


神速攻撃は完璧に封じられ、触手はロングレンジでじわじわとダメージを与えてくる。

長期戦は分が悪い。

闇の力を開花させたメインの能力は普段と比べ物にならないほど上昇しているがその分肉体にも大きな負荷がかかる諸刃の剣だ。

このまま同じことを続けても奴の宝石を破壊することはできない。

同じ手を何度も使うのは戦術的にも肉体的にも愚策であった。


――落ち着け……こいつに力任せの攻撃は通用しない。まずはあの厄介な触手を機能不全にさせることが先決だ。


情的な感情を押し殺し、淡々とリングを倒す算段を立てていく。

そして一つの結論を導き出したメインは触鞭をかわすと大きく距離をとり、宝石に意識を集中させた。


するとツルハシのが長く伸び、中心から均等に弧を描く頭部の先端部分が刃物状の武器に変わる。それは一度でも刃が引っかかってしまえば万物を刈り取る尖鋭せんえいの鎌となっていた。


「あぁら。それで私の赤ちゃんをバラバラにしちゃうのかしら? 容赦ないのねぇ……うふふ」

 

触手女はその鋭利な刃先を見て怯えるどころか、新たな快感を得られるのを心待ちにしているようだった。

早まるうずきを押さえつけるようにして鞭触手が愛液の滴る淫核を筆でなぞるようにして慰めている。

官能のボルテージが高まったリングは待ちきれないのか、束になった淫触手達が群れとなって一斉にメインに襲いかかる。


「……根こそぎ……刈り尽くす……」


鎌を腰の位置に構え、襲い掛かってくる鞭触手をギリギリまで引き付ける。

そして触手の先端が肌に触れる寸前で横に回り込み、触手を真っ二つ刈り取った。 その姿は天使が死神の鎌を振るっているようだった。

切り裂いた触手は地面に落ち、断面からは愛液が混じった粘液がトロトロと力なく流れ落ちている。


「あぁぁん……これいいわぁ……切り落とされる瞬間の臨死体験……たまらない」


ローパーを遠くで操るリングが舌を出しながら断裁の感覚に酔いしれている。


「もっと……もっと私を愉しませて……」


淫靡いんびな嬌声をあげると切断されたはずのローパーの根がみみずのように蠢き、恐ろしい再生力で切断面から新たな触手が生えていた。

いとも簡単に通用しないことを見せつけられる。


打撃は全く通用せず、触手を切り落としてもすぐに再生してしまう八方塞がりの状況になった鎌少女はゾンビのように何度も襲い掛かってくる魔手を避け続けるながら打開策を考えるだけで精いっぱいだった。


――……ちっ!


宝石に支配されてから、感情の起伏がほとんどなくなっていたメインが初めて表情を歪め、舌を打つ。


その一音だけでメインの今置かれた状況が絶望的であることを物語っていた。今は猛攻にひたすら耐え続けるしかない。


「なによぉせっかく……武器も新しくしたのに全然使わないじゃないの……」


追い詰められたメインは何かにすがるように辺りを見回す。地面には切られて生命反応を失った触手が横たわっていた。


――この触手……切られてもしばらくは動いていた……なのに今はミイラのように変わり果てている。

それに比べてあの女の近くにある触手……あの周りは地面がまだ湿っていて触手も蠢いている……


たまたま視界に入った触手から無限触手地獄の突破口を見出した。


両手に持つ鎌を剣道でいう下段の位置まで下げる。

さらに下げた鎌を両手で激しく高速回転。

すると鎌の刃が地面とぶつかり合い、チェーンソーが石の壁を切り刻んでいるような鈍い摩擦音が響き渡る。

最初はけたたましい音をあげるに過ぎなかったが、回転数を増すに連れ、乾燥した地面が刃の形を型どるようにして削られていく。

回転速度が上昇していくと鎌から赤い熱を帯び始め、超高速の世界に到達した時、命を刈り取る鎌が赤い炎に包まれた。


「あぁら……驚いたわ摩擦熱だけでこれだけの炎を纏わせるなんて。でも私の子供たちは次々に生まれ変わってくるのは貴方が一番知っているはずよ。切ろうが焼こうが結果は同じ。その炎も粘液で飲み込んであげるわ!」


炎塊を纏った鎌を携えローパーに突っ込んでいくメイン。

ローパーから数本の触手が迎撃するが瞬く間に切り伏せられ、ひも触手は炎を纏いその粘液を噴出することなく地面へ乾いた音を鳴らした。

次々と襲い掛かるひも触手を刈り取り、炎塊鎌を両手で高速回転させながら触塊蟲へ一気に距離を詰めた。


「ブレイズ……テスタメント……ッ!」


炎塊鎌が重厚な触塊蟲切り刻む。ローパーは驚異的な再生能力で迎え撃つが光の炎がそれを許さない。


切断した面を更に炎で焼き尽くし、再生の余地を与えない。切り刻まれた触手は一瞬で水分を失い焦土の一部となった。

無数の触手は枯れたイソギンチャクになり、全ての源となっていた巨大な触手根は焼き払われ、ローパーは完全に機能を停止した。


「あらあらぁ……私自慢の子供たちになんてことをしてくれたのかしら……こんなかわいそうな姿になってしまって……」


土に還ったローパーを見て、リングは悲哀の言葉をあげる。

ローパーと繋がっていたリングの身体は間接的にではあるが確実に損傷を受けていた。これまでとは違う確信的な手応えが手の痺れと一緒に感じられたが、未だその艶めかしい肉肌に指一本触れることができていない。


そのことを理解しているメインは決して冷徹な表情を緩ませなかった。


「不思議な顔をしているわね? どうしてローパーが攻撃を受ける度にこのお姉さまはイキそうになっているのかって」


リングは最初から色欲のオーラを全開に放っていたが、そのオーラはローパーが攻撃を受ければ受けるほど増大していた。

最初は天井にたまった水蒸気が時間をかけ集まり、水滴となって落ちる程度の愛液だったのが、今では締めきらなかった蛇口のようにとめどなく流れ落ちている。


「さてと……そろそろ前戯はおしまいにしてメインディッシュといきましょうか……あはっ……!」


これからが本当の戦いと謂わんばかりに宝石から出る黒いオーラがより一層力を増した。


するとメインの手首から浮き上がるようにして紫色の触手が巻きいていた。


「……小癪な真似を……」


ローパーの触手群から攻撃された時、密かに紛れ込んでいたステルス状態の触手が動物が擬態を解くようにして元の卑猥な触手鞭の色に戻っていく。

巻き付いた触手を腕を強引に引きちぎろうとしたが触手鞭はゴムホースのように伸縮性と弾力性に富んでおり外れる気配がない。


「無駄よ。私と運命の糸で結ばれた身体はどちらかが死ぬか、子供を産むまでは離

れないようになっているの。デッドorアライブ。戦いに敗れて死ぬか。私の子を孕んで新たな生を産み落とすか。どちらかしか選べないのよ」


一度捕まえた獲物をみすみす逃す気は毛頭ないリングの身体はすでに興奮状態だった。


「最初見た時からずーっっっと私の子種でアナタに子供を産んでほしいと思っていたの……見てもうこんなに……」


本来リングの淫核が付いている場所が薄いタイツ越しにテントを張り、抑えきれなくなった亀頭の形が浮かび上がる。

宝石の力がもたらした一物の産物なのか脈を打つようにしてグロテスクにそそり立つ雄の欲棒を前にしても王女は決して怯まない。


「自ら逃げられないようにしてくれるとは重畳。一瞬で葬り去ってくれる」


メインの言う通りこれは好都合だった。

これまでの戦闘スタイルからしてもリングは対象を操作して戦っていたため、リング自身の戦闘力は低いと分析していた。

それに比べてメインはツルハシや炎の鎌といった接近戦での戦闘を得意としている。

手に持っていた鎌が大量の光の粒となって分解され、ペンダントに吸収されていく。

今まで武器を顕現するために開放されていた宝石の力が今度はメインの体内に巡り、光の力を吸収することで元々引き締まった腰と魅力的な双乳が重力に逆らいながらきゅっと引き締まった。

身体全体からは白い光の波長が可視化できるぐらいに湧き上がっている。


「んふふ……やる気満々の様ね。それじゃあ始めましょうか……子孫繁栄デスマッチを……!」


触手で結ばれた互いの生と死をかけた第二ラウンドが幕を開けた。


互いが予測可能回避不可能な間合いで向き合う。


先に仕掛けたのはリングだった。

触手鞭を巻き付いていない方の手で綱引きをするようにして思い切り引っ張る。

メインは反射的に足の指で地面を噛んだがその力は凄まじく、ブラックホールに吸い込まれるがごとくじりじりと引き寄せられる。


「安心して。私がアナタを殺すことはないわ。アナタが死ぬときは快楽の闇に完全に染まりきった時。それまでは一つ一つ元気な赤ちゃんを産みましょうね」


力比べに負けた王女は強引に引き寄せられ、リングの射程圏内に入ってしまう。

メインより身体が大きいリングのセーフティスペースから繰り出される回し蹴りが地面をさすり肩口に向かって振り回された。


「くっ……」


超反応で首をダッキングし、紙一重で攻撃をかわすメイン。

空振りに終わった攻撃だったが、空中には襲脚によって刈り取られた前髪がひらひらと舞っていた。

強烈な一撃だったがその攻撃を凌いだ後にチャンスが訪れた。

回し蹴りによって剥き出しになったリングの性的な背中が露わになっている。


その隙をメインは見逃さない。

左足で地面を蹴りあげると同時に右腕を軽く脇に抱えるようにして強く引く。

そして隙だらけになった背中めがけて渾身の肘打ちをお見舞いした。


「がっっ……あぁ……っ!」


柔肌に鋼の鉄肘が叩き込まれる。その威力は肌、肉を貫通し背骨、脊髄まで届く衝撃だった。

雷に打たれたようにリングの上半身がエビ反りに硬直し、圧迫された器官を吐き出すようにして大量の酸素と涎の混じったつばが吐き出される。


メインの攻勢は止まらない。

カウンターの余韻に浸ることなく、バランスを崩し無防備になった頭にお返しとばかりに回し蹴りをお見舞いする。


「……がっっ……」


側頭部へ剛脚をもろに受けたリングの脳が揺れ、身体がトランス状態に陥るとコンセントの抜かれた機械のようにして力なく地面にキスをした。


横たわる相手を前にし勝利を確信したメインはピッケル武器を顕現させ、敗者の腕にめられているブレスレットの宝石めがけ腕の骨ごと砕く勢いで大きく振りかぶった―その時だった。


横たわっていたリングの臍の緒から太股にかけて、電気ショックを当たられたように不規則に浮き上がりと浮き沈みを繰り返す。

生物が大きな衝撃を受けた時に起こる硬直現象とは違う、快美的な痙攣。リングはまだ意識を失っていなかった。


口からフェロモンを含んだ吐息と涎を垂らしながらゆっくりと立ち上がるリング。首から上が飛んで行ったと思うほどの殺人的な蹴りさえも極上のエクスタシー変えてしまう淫体は身体の火照りが留まることをしらない。

攻撃受けて萎えるどころか滾ってきた巨根は大きさを更に増し、今にも射精しそうなほど脈動していた。


「うふふ……良いお仕置きだったわよ」


だらしくなく口の中で溺れる涎を指で舐め取り、喉を鳴らしながら飲み込んだ。淫猥なオーラは攻撃を当てる前よりも大きく、濃くなっている。


「何で宝石所持者の一撃を耐えられているのか不思議でしょうがないといった感じかしら?」


メインは表情こそ崩さないが会心の一撃を当てて平気で立ち上がってくる相手に底知れない不気味さを感じているのは確かだった。


「耐えているんじゃなくて好きで好きでしかたないの。身体を壊される時に味わえる天にも昇る感覚が……気持ち良くて……たまらなくて……今にもイってしまいそう……」


普通の人間も多少の刺激は快楽に変わるかもしれない。だがそのラインはとても低く狭い。


しかし、リングの肉体は過去の経験と宝石の力によって唯一無二の力を手に入れていた。


「いつしか痛みをなくしてしまったわ。代わりに極上の快楽を感じられるようになったの。それに……このおちんちんも……そう……お姉さまから分け与えられた謂わば家族の証……」


家族との記憶を思い出すようにしてリングは屹立きつりつした剛槍の脈動を指先一つ一つで感じながらまさぐり始めた。


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