第73話『秘密の逃避行を快くスルーしてくれた餞別に、キスでもして見せてあげよっか?』
は? 俺??
俺は呆気に取られて自分を指さした。俺、何もしてないけど?
「俺はただの召使いだからな、あの鞄はお前のだろ」
「あ!」
臭い玉を持ち込んだあの鞄! じゃあ、『竜の爪』はあそこに入ってたのか!
そりゃ召使いだからキヨは持ってるだけだったけど、鞄は俺のだから盗み出したのは俺ってことになるの、か?
「サイズ的に難しかったらコウが背負って窓から逃げるとか考えてたけど、あのサイズなら鞄に入るからな。逆に俺が欲しいものはコウに頼んだと」
キヨはそう言ってコウを見た。コウはちょっとだけ眉を上げる。
「キヨくんの指示通り、ブツは坊ちゃまの鞄に。出る時荷物を見られたんで、あいつマジ感謝してたよ」
キヨの指示を無視して自分で盗み出そうとしたら、確実にあそこで見つかってたもんな。
「その上で、ツィエクの目の前で僕がキヨの体はあらためたから、まさかキヨが一枚噛んでるとは思わないもんね……」
ハヤはキヨの胸元に手を差し込んだ。キヨが半眼でハヤを見ると、ハヤは「いたっ」と言って額を押さえた。魔法のデコピンだな。
「じゃあ保険金が下りないから、ツィエクはフィーリョのところに来たんだ」
保険金が下りないなら、盗まれたものを取り返さないとならない。それで引き渡しの場に来る必要があったんだ。
でも結局それだと、フィーリョが最終的に美術品を売ることに問題はないことになっちゃうな。
フィーリョが売るものがツィエクの家から盗んだものだとしても、証明できなければフィーリョは普通に売ってしまえる。なのにツィエクに儲けさせるために動くのはなんでだろ。
「なんだ、そろそろ気付くかと思ったのに」
キヨに言われて俺はレツを見た。レツも難しい顔をして俺を見る。ここ試されてるぞ。
「最初の売買で金銭のやり取りが発生しない理由ぅ……」
レツは眉根を寄せたまま呟いた。
金銭のやり取り……普通に入荷した美術品なら、売らないとならない。
フィーリョが仕入れた美術品、そこの金銭のやり取りをしないで保険金をどうこうするって、何かおかしいよな。一体どこから仕入れたんだ?
俺とレツが揃ってキヨを見ると、キヨは面白そうに笑った。
「金も払わず唐突に現れる美術品。それはツィエクが密輸した盗品だよ」
「ええっ!」
キヨが見つけた本は盗まれたものだったかもだけど、俺たちが盗んだものも、盗品だったってこと?!
「二人が中身を言えなかった理由にはそれもある。もともと証書に明確な描写はないんだ。きちんと書きすぎたら盗品とバレるからな」
じゃあ、あの時二人が箱の中身を言えなかったのは、キヨがすり替えた中身を知らないのもあるけど、ちゃんと言えたらそれが盗品であることを証明してしまうからなのか。
「ツィエクが交易事業を隠れ蓑に盗品の密輸を行う。ここまで運んで、その後はフィーリョが売ってたのかもな。輸送だけでも儲けられてたかもしれないが、ここで保険金詐欺を思い付く。運び込まれた盗品のうち、めぼしいのをフィーリョが証書を作って保険に入り、盗ませる。盗品はフィーリョの手元に戻るから、そのまま売買に戻る」
保険金の配分がどうなってたかわからんけどと、キヨは付け加えた。
「それ、そろそろ手広くなってた感あるね、シマがキープされてたことを考えても」
ハヤはそう言って苺を摘む。俺も真似して手に取った。こんなみずみずしい苺初めて見た。
そしたら、素人泥棒が盗みに入る先は都度違ってたってことなのか。
何度も繰り返されている保険金詐欺。だからシマにも声がかかった。いくらツィエクがコレクションで知られているから泥棒が狙うんだとしても、毎度盗まれてたら保険屋だって不審に思うもんな。
「昨日の取引も、あの場で中身を確認されないように急かしたところはあるけど、フィーリョは盗品の買い手が決まってるから『竜の爪』を買い戻す以外に選択肢はなかったんだ。保険金が入らなくても、売ればあいつらに支払う借金分よりは大きい金額が入るんだろ」
「保険金はもともと余計な儲けだしな。同じ街で盗まれたもんが手元に長くあるのは危険だから、取引後即発送と」
シマはソーセージをタレンで流し込んだ。
「物の名前を出さなかったのは、盗品だとバレるのも防いでたんだね」
『竜の爪』を本当の名前で出したら、素人泥棒が偶然知ってる場合もあるかもしれないから。
「えっ、じゃあキヨがコウに盗んでほしかったものって何?」
「それはあの本だよ。あれが盗まれたことは有名だから、公的機関を動かすには十分だ」
それであの時衛兵が来たのか。昨日の昼間にいろいろ準備してたのって、それだったのかな。
「最初は、盗まれたあの本だけでも何とか取り返したかったんだよな。それでツィエク周辺を探って盗品密輸の影がないか調べてたんだ。単なる蒐集家で買っただけなら取り返すのは難しいし、お告げに関わるかわかんねぇから確実になるまではみんなに協力を仰げないっつーか」
「いやもう、キヨリンの疑念には十分信用あるから、そうなった時点で動かして」
私怨でもいいからとハヤが言ってぐったりすると、キヨは面白そうに笑っていた。いや、あんたの所為って言われてんのに。それじゃツィエクの周辺をやたら探りたがってたのは、むしろそっちがメインだったのか。
「昨日あの後、何してたの?」
キヨが何か囁いてた指示。シマがとんでもない獣使いだから何とかなったって、どういうことなんだろ。
「シマと団長が調べてたのは、ツィエクの交易先と荷運びのスケジュールだよ。実はあの本見つけた日に、ここ数ヶ月で近隣の街から何らかの美術品の盗難が無いか、ハルチカさんに調べて貰ってたんだ」
その時点ですでにそっち方向めっちゃ調べてたんだな。全然そんな素振りも見せなかったのに。
っていうかそういう風にもハルさん使ってたのか。そりゃ情報屋のハルさんなら適任だけど、キヨ、ホント人使い荒い。
「やっぱそういうの、コンスタントにあったみたいで。その時にはツィエクの事業が薬関係の交易なのがわかってたから、その取引先とスケジュールが合えば密輸もあり得るなと」
「でもそれ普通、最終日に持ってこねぇよ」
シマが苦笑混じりに言うと、キヨは小さく肩をすくめた。
「あの時点ではまだメインのクエストだと思ってなかったからな、まだ二日あったし。潰すのは素人泥棒システムの保険金詐欺の方だと思ってたから」
うーんと、そしたらキヨ的には一昨日下準備するつもりが、泥棒決行になっちゃったから、引き渡し当日に準備することになったってことなのか。
「ただ結局、保険金詐欺だけバラしても、盗品密輸が生きてればいくらでもやり直せるじゃんな。元を断たないとダメだとしたら、そっちも何とかしないとだなって」
「まぁでも結果的に泥棒が前日でよかったかも。あれ、やっぱ現物ないと動きにくかったから」
現物って、キヨが最初に見つけて『竜の爪』と一緒に盗んできたあの本のことか。レツが「どうやったの?」とコウに聞くと「背中に入れてた」と答えていた。
この人たち詐欺師の才能だけかと思ったけど、泥棒の才能もあるな。
「一応前日も、買い物以外フリーのシマには証拠固めるのに動いてもらってたけど、そっちは現物動かせないもんな」
シマは苺を口に放り込んでいたずらっぽく笑った。
「キヨの読み通り、あの闇の質屋にあったのは盗品の一部だった。ハルさんの一覧とマッチしてた」
え、じゃあシマが覗き見たのって、ただの質草でもただの商品でもなく、密輸された盗品だったの!
「俺は路地で見張りをやったんだよ」
レツは何だか嬉しそうに言った。いや、でも一応やってるのは不法侵入だからね……
コウを見てみたら、ちょっとだけ呆れた顔をしていた。輸送の荷物が盗品だと知らなかったのを考えると、シマはレツに盗品を探ってるとは言わなかったんだろうけど。
「そしたら昨日って、」
「あの本がツィエク宅にあった事実ちらつかせつつ、交易スケジュールと盗難密輸の符号を明確にした上で、盗品の隠し場所をタレ込んだんだ」
「僕がツィエク宅に居たのはあの家のメイドだって証明できるから、あの本をそこで見つけた証拠になる。盗んだことに関しては、一冊しかない貴重な国の財産だから切羽詰まってやったって体で押してね」
ハヤはとぼけたように言って、フォークに刺した苺を振った。盗みの証拠なのに盗んで来てたら説得力ないもんな。それをごり押ししてたのか。
「と同時に、シマに頼んでエインスレイに繋ぎを取り、交易事業を買い取る準備をしてもらう」
「シマに?」
なんでそこでシマ? エインスレイがシマのお兄さんだから?
「まさか。必要なのはシマのモンスターだよ。通常の手紙じゃ買い取るための証書が来るまで何日もかかる。手付け金だけなら団長が払えたとしても」
あ! そっか! シマの鳥モンスターなら、通常旅で数日かかる距離をすぐに行ってこれる。しかもシマならおつかいを頼むことだってできるんだ。シマは「にしし」と笑って珈琲を飲んだ。
「連絡自体は通信魔術師に頼めばいいんだけど、サインの入った証書の用意は無理だからなぁ」
通信魔術師はメッセージだけしか伝えられないもんな。しかも人に託すからヤバい話には使えない。
そしたら、交易事業の権利を取り上げるために密輸していることをタレ込んでおいて、同時に権利をエインスレイが買い取る準備をし、事業を丸ごと奪っちゃったと。
事業が無いからもう密輸はできないし、財源を押さえてしまえば保険金詐欺も無理だ。
「でもそしたらフィーリョは?」
そう言えば闇の質屋として使われていた隠し場所だって、キヨは最初から調べてもフィーリョに行き着かないって言ってた。だからフィーリョなんだって言ってたけど、それってどういう意味なんだ。
「その辺もキヨの読み通り、フィーリョの名前が出ないよう二重三重に借り主を隠してたけど、結局はツィエクの持ち物だったんだ。だからどっちかっつーとツィエクの方に載っちゃったんだよな。罪状が更にのっかったんで権利剥奪は割りと簡単になったんだけど」
シマはりんごを取ってナイフを入れた。レツは俺に向かって「役所とか業者とか調べるの大変だったんだよー」と言った。
その割りに昨日話してくれなかったな、その辺やってたこと。
「フィーリョ自身は交易の手段を持っていない。ここでツィエクから仕入れ、盗品であることを隠した証書を作って売るだけの人間だ。だからフィーリョの手による偽造証書と盗品の両方を確保しないとならないんだけど、商品と同時に用意して置いとく危険は冒さないから、結局どっちかしか手に入れられない」
じゃあツィエクが密輸した盗品が隠し場所にあって、フィーリョが仕入れて隠してたとしても、ツィエクの密輸の証拠にしかならないんだ。
ツィエクの密輸が無くなったら盗品売買はできなくなるけど、ギャラリーの仕事を奪われるわけじゃない。
そしたらフィーリョはただのギャラリーオーナーで、罪に問われないのか? 素人泥棒を仕込んで保険金詐欺してたのに?
「保険金詐欺もさかのぼって調査したところで、盗品はもうフィーリョの手元にさえないし、もともと盗品だからそれとわかる証書もないしね。素人泥棒はみんな一回だけの協力者で誰かっていう情報は残さないだろうから、そこからの検挙も不可能」
ハヤは苺にパンケーキのホイップクリームをつけて頬張った。レツがすかさず真似する。
えっ、そしたらフィーリョはいくらでもまた悪いことできちゃうじゃん!
「だな。だから、ちょっと解決不可能なレベルの借金を背負わす必要があったんだ」
キヨは手酌でタレンを注いだ。借金?
「昨日壊れた船。あれの賠償責任者になってもらったんだよね」
「えええっ!?」
どうやって?! っていうかいつの間に??
「いや、お前らも見てたんじゃねーの? サインしてただろ」
キヨはタレンのグラスに口を付ける。
ん? 昨日サインしてたのってキヨだよな、あの泥棒との引き渡しの書類に。それでキヨが、そんなに欲しいならなんでサインしなかったんだって言って……
「……サイン、してたね」
ああ。俺とレツは顔を見合わせた。サイン、してたね。
「でもあれって、盗品引き渡しの書類だろ?」
だから金もキヨに渡したんじゃん。サインを確認させるつもりだったのか、書類もキヨに押しつけてたけど。
「俺は別に、あの書類が盗品引き渡しの書類だなんて言ってねぇよ?」
え……それってもしかして、そう思わせてサインさせたけど、ホントは違う書類とかいう……俺の隣で、コウががっくりとうなだれたのが見えた。
うん、気持ちはものすごくわかる。それって、いけない事だよね。
「サインする内容を確認しないのが悪いんだろ」
サインしろとも言ってねぇしと、キヨは涼しい顔で言った。
そりゃ言ってなかったけどさ、でも船は壊れたっていうか、キヨが壊したんじゃん! キヨはやっぱりどこ吹く風って感じでタレンを飲んでとぼけていた。
それじゃあの時運び出したのって、密輸する盗品だったんだ。あとの積み荷は芋とかって言ってたけど、文化的に価値のある盗品を船と一緒にぶっ壊して海の藻屑にすることないもんな。芋も大事だけど。
「そう言えばキヨくん、あれ、一体なんだったの?」
「お告げの海の竜だったんだよ!」
レツが嬉しそうに言うと、キヨは少しだけ考えるみたいに視線を落とした。
「あれは、召喚魔法だよ」
召喚魔法! って何だ?
「その土地の強い精霊を呼び出す魔法。まぁ、どこにそういう存在がいるかわからないし、それなりの魔法の力が必要だから、それはもう調査と実地検分が必要なんだけど。でもここに伝わる伝説はそういう感じがあるから、もしかしてって思ったんだ」
そしたら、この地方に伝わる海の竜の伝説が精霊なんじゃないかと思って、キヨが呼び出したと。
この前自然の魔法を掴む練習してた時に、確かめたかったのってそれなのかな。キヨはあの後疲れてぶっ倒れたから、それなりの魔力が必要ってのは体現してたけど。
「船ぶっ壊すにしても、一足飛びに召喚魔法にいくー?」
ハヤはそう言ってキヨにもたれ掛かって伺い見た。そう言えば昨日あの竜を見た時、ハヤは何も言わなかったっけ。キヨはチラッともたれ掛かるハヤを見たけど、いつもみたいにすぐに邪険にしなかった。
「いくら俺でも一撃で船を壊せねぇよ。だいたい俺が壊したら賠償責任は俺にかぶせられるだろ。それに街の護りの竜があの船壊したんだったら、その逆鱗に触れたフィーリョは今後動きづらくなる」
借金だけじゃなくて、あの海の竜の怒りに触れたフィーリョとして噂が広まったら、この街に居づらくなるかもしれない。そしたらもうこの街で悪事を続けることも不可能になる。
キヨはそう説明したんだけど、なんとなくハヤが欲しい答えじゃない気がした。納得して話を続けるみんなをよそに、ハヤはちょっとだけつまらなそうに体を起こすと、ものすごく小さな声で「……チカちゃんも大変だ」と呟いた。
「そしたら、街の護りがこの密輸と詐欺を何とかして欲しかったんだねー」
レツはそう言って、ホイップクリームをたっぷりつけた苺を頬張った。
お告げは、あの海の竜が姿を消した時にクリアになったらしい。あの段階ではまだ船の賠償責任も何も知らなかったけど、あれで事件には片が付いていたってことなのかな。俺はなんとなく空を仰いだ。
昨夜海の竜が暴れたとは思えないほど、今日はいい天気。
冬の澄んだ空気と突き抜けるような青空が、俺たちのブランチの上に広がっていた。
「そしたら、やっとのびのび満喫できるー」
ハヤは両手を挙げて伸びをした。テラスでご飯も、隠れる必要ないしね。
「そこに居るのハヤじゃない?」
唐突に声を掛けられて、俺たちはびっくりしてきょろきょろした。
「いやね、こっちよ」
笑いを含んだ声は運河から聞こえてきた。そっと覗くと、あのお金持ちのおばさんが小舟に乗ってそこにいた。
そうじゃん、この街じゃ運河って道路と同じだから、歩かないお金持ちは小舟で移動するんだった。ヤベえ、宿がバレた!
「あら? ……見違えたわ、髪を下ろすと雰囲気変わるのね、あなたの従者」
うわあ、キヨもバレた。
そりゃそうだよな、ハヤは金持ち役の時だってこれといって変装してないんだから、変装してないキヨがあの従者に似てる人だなんて勘違いはしてくれない。
俺は慌てて彼女の視界から逃れた。全部バラすにしても、俺まで顔出して面倒を増やさなくていいよな。
つっても、もう俺たちお金持ちの振りする必要ないんだよね? でもエインスレイの事業引継に関してハヤはお金持ちキャラで進めてたみたいだし、どうすんだろ……
「残念ながら、それは違います」
ハヤは優雅に立ち上がると、キヨも立たせて手すりに凭れた。キヨはなんだか落ち着かない顔で背後のハヤを伺う。ハヤは肩を抱くように回した手をキヨの額に置くと、そのまま髪をかき上げるように動かした。
「あっ……」
すると魔法のようにキヨの髪が金髪になった。いや魔法なんだけど。
キヨは少しだけ隠れるように身を縮めて髪に触れる。ハヤは守るようにキヨを抱き寄せ、いたずらっぽく笑った。
「……従者じゃないんです、いろいろあって隠さないとならなくて」
この事は内密に、とハヤが口に指を立ててウィンクする。女性は驚いて開けっ放しの口元を扇子で隠して、それからやけに嬉しそうな顔で何度か頷いた。
それから船頭を促してゆっくりと小舟を進め、やっぱりやけに嬉しそうに手を振っていた。
……なんだろう、秘密の恋みたいのってああいう女性には大好物だったりするんだろうか。
「秘密の逃避行を快くスルーしてくれた餞別に、キスでもして見せてあげよっか?」
ハヤは小声で言って小舟を見送りながらキヨに向き直ると、キヨはハヤの首もとに腕を回してゆっくりと近づいた。えええっ……!!
「……もう見えねぇだろ」
唇が触れる直前に、キヨはそう言ってさっきまでとは別人のめんどくさそうな表情でテーブルに戻った。小舟はすっかり遠くなって運河を曲がっていた。
この切り替えの速さよ……みんなを見てみたら、生温かい目で見守っていた。
「キヨリン、これであのおばさんから狙われることもなくなったってのに、感謝の気持ちくらい表してくれても!」
「俺はもともと狙われてねーし。そんなことよりこれ早く戻せ」
キヨはそう言って髪を払った。金髪、そんなに気に入らないのかな。見慣れないだけで、そこまで悪くないと思うけど。
「まぁキヨくん普段から服も真っ黒だし」
「黒魔術師だもんね」
「団長切る時の黒さな」
「腹黒いから、黒くないと落ち着かないのかな」
俺が言った途端、額に刺激を感じた。いてえっ! 俺は魔法のデコピンされた額を両手で押さえる。くそー……
「もうキヨなんか、一生金髪になっちゃえばいいんだ!」
他力本願の恨み言を言ったら、キヨ以外が爆笑していた。
やけに愕然としたキヨの顔を見て、俺も笑った。
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