親戚のりょう兄ちゃん

見鳥望/greed green

 幼い頃、公園で1人でいるとふらっと現れて遊んでくれた「りょう兄ちゃん」という親戚がいた。当時歳は二十過ぎだろうか。ひょろっとした髪を明るく染めた、不思議な雰囲気の人だった。




「はいこれお年玉500円」




 ある時、りょう兄ちゃんはいつもはくれないお年玉をくれた。が、開いて見せた彼の掌には石ころしかなかった。


 お金じゃなく石だよと言うと、「お前もゲンキンなやつだな」とよく分からない事を言われた。




「はい、じゃあ1000円」




 とまた掌を出したが、そこにあるのはただの千切ったメモ紙だった。


 お金じゃなくて紙だよと言うと、「仕方ないなあ」とよく分からない事を言って、




「はい、お年玉」




 とポチ袋をくれた。




「それは俺からの秘密のプレゼントだから人には絶対あげるなよ。何もかもがうまくいかなくなった時、そいつを開けてみな」




 とやっぱりよくわからない事を言って、兄ちゃんは行ってしまった。


 それが兄ちゃんを間近で見た最後の姿だった。






 数か月後、思わぬ形で兄ちゃんと再会した。


 兄ちゃんはテレビに映っていた。悪い事をして逮捕されたという事が分かった。




「りょう兄ちゃんだ」と言うと、母が「誰?」と聞く。


「親戚のりょう兄ちゃんだよ」と言うと、そんな人いないわよと言われた。




 数年後になってようやく全てが分かった。


 母の言う通り、そんな親戚はいなかった。


 思い返せば、「親戚の」と言うのもりょう兄ちゃんが自分で言っただけの事だったし、家族や本当の親戚がいる前には現れず、僕が1人の時にしか見たことがなかった。


 それを知った時、僕は慌ててあの日もらったポチ袋を開けた。






 ポチ袋の中身は小さいジップロックに封された、白い粉末だった。

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