第28話「倒せシャークドラゴン」
SIDE;マルク視点(27話の続き)
目の前には巨大なサメが泳いでいる。
いや、ここは水中ではない。
だから厳密には正しくはないのだがそうとしか思えないモンスター。
おそらくはこの浮遊は魔力によるものだろう。
その名はシャークドラゴン。
全長5メートル。
その顎の力は凄まじく鉄をも噛み砕くと言われている。
「ルーナ、トールに硬化の
「まかせてなのよさ!」
タンク役のトールに硬化の魔法が付与される。
僕もルーナに続き障壁魔法をトールの前面に展開する。
大盾持ちはこのパーティの生命線。
いくらバフを重ねても重ねすぎるということはないだろう。
「こいやぁ!このクソボケ鮫野郎ぉおおあああああああっ!!!」
挑発の効果が込められたウオークライ。
トールの声が部屋中に響き渡る。
『SHAAAA!!!!!!!!!!!RRRRRRKKKKK!!!!!!!!!!!!!!』
凄まじい雄叫びとともにシャークドラゴンが突っ込んでくる。
大盾を構えたトールが受けるも、後方の壁まで突き飛ばされる。
「……トール!」
僕は叫ぶ
「大丈夫だ。障壁魔法がなけりゃ、ちと危なかったけどなっ!それより、マルク」
そうだ。せっかく作ってくれたスキ。
僕は最小限の動きで距離を詰め、抜剣。
居合の要領で下方から上方へと斬り上げる。
『SHHHHHHHHHHHHHHAAAA!!!!!!!!!!!RR!!!!!K!!!!!!!!!』
一歩分踏み込みが足りなかった……。
シャークドラゴンの片目を斬り裂くことには成功した。
だが、堅牢な脳に阻まれ脳にまでは到達するに至らない。
トールは今は動けない。
ルーナはトールを治癒している。
今動けるのはステラだけ。
「ステラ。ダンジョンで拾ったスクロールを!」
「了解よ!
魔法の矢がシャークドラゴンの胴を貫き、壁に縫い留める。
シャークドラゴンは魔法の矢から逃れようとバタバタと暴れまわる。
だが、僕はこの機を逃すつもりはない!
剣の柄を両手で握りしめ渾身の力をこめ剣を振るう。
「これで終わりだ!」
戦技、兜割。致命の一撃を与える斬撃だ。
回避率の高い敵に当てるのは困難だが、今のこいつは壁に縫い付けられている。
最初に斬り裂いた傷跡を撫でるように剣の刃をを滑り込ませる。
スパァーン。今度こそシャークドラゴンの頭部を斬り落とすことに成功。
「ふぅ……ちょっちやばかったけど、やったね!マル」
「だね。本当に手強い敵だった」
「鮫野郎をパリィ出来てたら、そこで決着だった。力不足ですまん」
「ルーナはつかれたのよさ」
満身創痍だけどみんなやり切ったいい表情をしている。
初めてのダンジョン探索。
ちょっと怖かったけど、それよりも楽しかった。
これもダンジョンを作ってくれたアリョーシャさんのおかげだ。
「マル。今日は、これで帰るよ」
「そうだね」
部屋の中央には青い光柱と赤い光柱がそびえ立つ。
赤は次の階層へ転移するためのゲート、
青は外に帰還するためのゲートだ。
もちろん僕たちは青のゲートへ足を運ぶ。
冒険者は引き際を見極めることが大事だ。
「帰ろう。ぼくたちの孤児院へ」
そう言い、僕たちは青い光柱の上に立つのであった。
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