第24話「孤児院にダンジョンを作ろう」
「へいらっしゃい!おー神官のにーちゃんじぇねぇか!この前は、べらんめぇなでっけぇ案件あんがとな。おかげでうちの建築ユニオンも大儲かりだ。で、今日もなにかおいしい仕事の相談かい。にーちゃんの言うことなら、なんでも聞くぜ!」
俺はいま王都の建築ユニオンの応接間の椅子に座っている。
目の前にいるのは建築ユニオンの棟梁、イヴァンさん。
べらんめぇ口調で気のいいドワーフのおっさんだ。
そして、先日の孤児院の大改修の時に尽力してくれた人だ。
「イヴァンさん、孤児院の隣にダンジョンとか作れる?」
前々から思っていたことではあるが、何事も経験が大事だ。
たとえば自転車に乗る時のことを想像してみよう。
図書館に通いつめて自転車の構造や動作原理を学び、
いかなる理屈で動いているかを理解したとする。
それで、実際に自転車が運転できるようになるか?
ノーだ。
きっと最初は真っ直ぐ走ることすら困難だろう。
習うよよりも慣れろだ。
もちろん座学を否定する気はない。
学習はサプリや漢方薬みたいな物だ、即効性はない。
知識は確実に何かの役に゙立つ。
とはいえ、それも余裕ができてきたらの話だ。
基礎があってこその応用だ。
「作れなくはねぇけどよ、こればっかしはお金をいくら積んでもらっても難しいと言わざるおえないかもしれねぇなあ。てゆーのも、ダンジョンを作るにはダンジョンコアって言う石が必要なんだが……」
「これで問題ないかな?」
俺はマジックバッグからダンジョンコアを取り出す。
イヴァンさんは「べらんめぇ」と歌舞伎の見栄みたいな反応をした。
迷宮竜のブレスに耐えて頑張った努力がいま報われた。
ゴミ屋敷からもぎ取ったダンジョンコアはいずれ別の機会に使おう。
「いやぁこれは一杯取られた。神官のにーちゃん、あんたはただ者ではないとは思っていけど、まさかダンジョンコアなんてとんでもねぇ代物まで持ってるたぁ、このイヴァンさんでも思いもしなかったぜ!」
そういってダンジョンコアをゴツい手で大切そうに撫でている。
厳つい体格からは想像しずらいほどに器用な指を持っている。
さすがは一流の職人といったところであろうか。
「で、にーちゃん。このダンジョンコアでどんなダンジョンをご所望だ?このクラスの立派なダンジョンコアなら、それこそ何でも思いのままだぜ。この規模のダンジョンコアならドラゴンが現れるようなダンジョンを作ることだって不可能じゃねぇ」
「そうですね。お願いしたいのは、小さい子どもたちだけでも協力すれば踏破できるような……そして、踏破することで一通りのダンジョン探索に必要な経験が積めるような。そんなダンジョンを作って欲しいのですが、できますか?」
「できる、できないの話で言うなら、できる。だけど良いのかい?簡単なダンジョンだと得られるアイテムもそれ相応の物だ。売っても二束三文にしかならないような物しか手に入らない。それでも構わんか?」
もともとの発端はマルクの言葉だ。
「将来は冒険者になりたいんです」、あいつはそう言っていた。
その夢を叶えるた第一歩になればと思ってのことだ。
「ええ、まったく問題ありません。それではお願いします」
かくして、孤児院にダンジョンが作られることになったのであった。
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