第17話「迷宮ノ竜を踏破せよ!」
「ふう。無事に竜の内部に成功」
ここは迷宮竜の内部。
目の前には古代遺跡のような空間が広がっている。
思わずここが竜の体内だということを忘れそうになる。
つくづく迷宮は不思議なところだ。
「さて、それにしても随分と揺れる。……おおっと!」
地面がグラグラと揺れる。
気をつけて歩かないとつまずきそうだ。
俺は足元に気をつけながら迷宮を進む。
それにしても宝箱の数がハンパない。
空飛ぶ宝物庫の名は伊達じゃない。
さらにそのどれもが優秀な性能をしている。
時間さえあれば全部回収したいところだが、
そうノンビリしているわけにもいかなそうだ。
(俺のバフの有効時間は30分。その間に踏破しないとな)
下で竜を足止めしているのは3人。
聖騎士マルク、魔王ニュクス、勇者エレ。
マルクが空中に防御結界を展開し、
魔王が超長距離攻撃魔法で牽制、
そして勇者はみんなを応援。
なに一つ無駄のない完璧なコンビネーションだ。
「さっきから迷宮がグラグラと揺れてるのは魔王の攻撃魔法の影響か」
さすがは魔王ということだろう。
これだけの威力の魔法をくらっては地面に近づくなど不可能。
どうやら地上の待機組は心配なさそうだな。
少なくともバフが効いている間は
「えーっと。たしか、こっちの方角を真っ直ぐ」
記憶を頼りに頭の中で最短ルートを構築する。
もちろん壁壊し前提のルートだ。
この迷宮はかなり悪質だ。
あちこちにワープゾーンがあるし、
時間経過で天地が引っくり返るし、
さらにはオートマッピングが無効化される。
実際の広さはそれほどではないのだが、
方向感覚がバグるのが厄介なのだ。
ヘタすれば同じ場所をぐるぐるなってことになりかねない。
「ここで迷っている時間はない。最短ルートで進む」
ドゴーン!ドゴーン!ドゴーン!
迷宮の壁を破壊しながら突き進む。
道中のグリーンドラゴンが毒のブレスを吐く。
いちいち避けずにそのまま叩き潰す。
「くっそ。毒が目に入った。いてぇ」
その後もエンカウントしたガスドラゴンのブレスに燃やされたり、
スカルドラゴンに瘴気を浴びせられしたが、耐えた。
我慢して耐えた。そしてメイスで叩き潰した。
「ブレス攻撃。狭所だと避けられないから面倒だ」
最短ルートと言いつつも道中最低限欲しいアイテムは拾っている。
孤児院の子たちにプレゼントするためのものだ。
自分の身を守る最低限の装備くらいは与えてやりたい。
あとリズさんにあげるための装飾品も拾った。
銀色のシンプルな指輪だ。
デザインこそ地味だが『幸運+10』の補正がつく。
あと、ちょっとした特殊効果もある。
「とりあえず目ぼしいのは拾ったか」
それにしても壁破壊は便利だ。
特殊能力扱いなので負担が少ないというのも極めて良い。
俺は行く手を塞ぐドラゴンの顔を叩き潰しながらズンズン進む。
そして、ついにその場所にたどり着く。
「っと、ここが迷宮最深部」
目の前には鋼鉄の門。
つまりはボス部屋だ。
「よし!ちゃっちゃと片付けるか。
ズドーン!
メイスを扉を叩きつけると扉は崩れさった。
本当は迷宮のスイッチを全て押さないと開かない扉だ。
俺はボス部屋へと足を進めるのであった。
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