第16話「迷宮竜を討伐せよ!」

迷宮ノ竜ダンジョンドラゴン。厄介な」


 迷宮ノ竜ダンジョンドラゴン

 特筆すべきはその巨体。


 その全長50メートルを超える。

 大きさで例えるならゴジラが空を飛んでいる。

 まあそんな感じだ。


 竜の逆鱗を捲るとそこに門がある。

 こいつの体内は迷宮になっている。

 ダンジョンコアを飲んだ、竜。


 この世界と似たゲームでは最終盤で戦う敵。

 勇者ルートでは飛空艇を最終進化させた後に、

 魔王ルートでは古城にバリスタを設置した後に戦える相手。


(さすがは竜の中の竜。魔剣と聖剣の匂いを嗅ぎつけてきたか)


 宝を求めるのは竜の本能。

 格の高い竜ほどその性質は顕著になる。

 迷宮竜はの最たるもの。


 体内には数えきれないほどの財を蓄えている。

 空飛ぶ宝物庫と言っても過言ではない。

 

 伝承に描かれる天空城。

 それはこの竜のことを指すそうだ。


「アリョーシャさん、マルクくん、エレくん、ニュクスちゃんを!」

「ありがとう、リズさん。あとは子どもたちの避難を。できるだけ遠くへ」


 討伐だけなら俺だけでも十分だ。

 だが、なにしろこの大きさ。


 へたに倒しでもすれば孤児院はペシャンコだ。

 それに年長組にとって良い練習相手でもあると考えた。

 仲間との共闘を知るにはこれほどよい相手はおるまい。


「マルクくん。上空に魔力障壁の展開を」

「はい!」


 上空に魔力障壁が展開される。

 さすがは聖騎士、みごとな魔力結界だ。


 もちろんこっそりマルクに複合バフをかけている。

 この障壁は竜の炎する完全に防ぎ切る。


「リュクスさん、エレにバフを。マシマシで」

「バフね。りょーかいよ!」


 リュクスの超多重バフがエレを数十倍に強化する。

 俺はこっそりリュクスに魔力向上のバフをかける。


「うおおおお!力が湧いてくる!!今ならあの竜にも!」

「意気込みやよし。でもエレ、君にはまだ無理です」


 いずれはできるだろうが、まだ早い。


「じゃ、じゃあなんで僕にバフを!?」

「必要だからだ。俺を掴んであの竜に向かって投げつけてくれ。やれるか?」

「アリョっさん、死んでも恨むなよ。おらああああ!!!」


 音速を超えるスピードで射出される。

 多重バフによる強化を考慮しても、さすが勇者といったとこか。

 迷宮竜は超高速で接近する物体に気づき、急旋回を試みるも……。


「うむ。なかなかスリリングな体験だった」


 トン。俺は岩のような竜の背に立つ。

 天空城とも例えられる迷宮竜の背を駆ける。


 迷宮竜は背中の異物を追い払うために身体を捻る。

 振り落とされないようしがみつき首元の逆鱗に近づき……。


「とりゃぁ!!!」


 バリバリバリと逆鱗を力任せに剥がし、放り投げる。

 まるでこの世の終わりかのような竜の咆哮がこだまする。

 そして、今俺の目の前にあるのは迷宮の扉。


「本来はこの扉を開けるのって結構大変なんだけどね」


 試練の塔。その最下層の宝箱にある『竜の鍵』

 が無いとここの扉をあけられない。

 もちろん、そんな鍵を俺はもっていない。


壁破壊デモリッション!」


 破壊の力を付与したメイスで扉を叩きつける。

 ドッゴーン!とてつもない音とともに扉が崩れ去る。

 扉は崩れ去り、異界化された迷宮が姿をあらわす


「よし。それじゃお邪魔しますよっと」

 

 ふっふっふ。


 倒してよかった邪神ジャヴァウォック。

 そう思いながら迷宮に侵入するのであった。

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